叶い琴

幸甚

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二階にある第二理科室から、大きなクレーン車が見えた。
ずっと眺めていないと、動いているのかが分からない。幸いな事に、一番後ろの席で、熱心に教えている先生視界に入らない。隣の水原はいつもどうりグッスリ爆睡しているで心置きなくクレーン車を見る。
雲一つ無い空に、伸び、静かに動いていく。
梅雨が明け、七月が始まってすぐだと言うのに、冷房を付けているので理科室は凍えるように寒い。
先生に今、話しかけられる人はいないだろう。
「良いですか、慣性の法則とは物体に力が働いていないか、いくつかの力が働いていても釣り合っているとき、制止している物体は制止し続け、運動している物体はそのままの速さで等速直線運動を続けるという法則ーーーー」
将来、絶対に使わないであろうワードを連発する。
どうしようも無い寒さに鳥肌をたてながら、クレーン車を見る。空と同化してしまいそうな、細い筋。




「おい、先生の指名は言ったぞ」
「教科書三十二ページ。合力とは何かって言う問題だよ」
「ありがとう、水原」
いつも寝ている水原に肩を叩かれ起こされた。これは、相当珍しいことだ。
「はい、じゃー暁星。答えろ」
「合力とは力の合成によって得られた力です」
「正解」
そう言って、黒板に図を書き、説明していく。
隣の水原を伺うともう寝始めている。ダルそうな寝顔に少し癒されながら、外を見る。
今日の天気は、一言雨。夜のように暗くなった景色に第二理科室の電灯が不規則に点滅する。こんな日に限って、一限目から理科の授業。
でも、良い時間だな。としみじみ思う。
雨の降りしきる理科室に消えそうな電灯。光のない雷鳴が山に反射し、不安そうに皆が窓を見る。
今日は、流石に冷房はつけていないので寝るのにも気温が丁度良く、水原と眠ってしまった。雨の音が睡魔を誘う。
小学生の頃、畳の上で旋扇風機をつけ、星を見ながら虫の音を聞き、幼なじみと過ごした夜よりは、と聞かれると分からないが、受験生である現実も忘れさせてくれそうだった。

勉強よりも大事なコトに頭を撫でられる。
理科の後の授業が国語で、また眠ってしまった。



僕、暁星夕也は、今施設で世話になっている。昔はある男性が引き取ってくださったが、年齢の関係もあり病気で亡くなった。
そして、大事な大事な幼なじみの春永夏美は、死んだ。交通事故で。
星が近づいて我々に降ってきた夜の翌日のことだった。






「星は明るいなぁ」
最期の言葉を残し、消えた。星になった。凛然と夜に散り、星になった。許せなかった。自分が見つかるように光を発さないといけないことに。彼女を知っている人なら誰よりも星よりも輝きを分かっているはずなのに。隣にいない彼女は明るくも温かくもない。これは確実な事実だ。








とある星では、人々が笑いあい、励まし合い、泣いているという。そんな綺麗な星がどこにあるか知りたいですか?。
そこは、蝉の音が重なるところ。夜に温かくなれる場所。











流れ星にお願いした。
『あの一等星がずっと輝いていられますように』
と。
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