地球最後の神に祈りを

那玖

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1日目

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 アンドロイド歴2601年、かつて緑の星とも呼ばれたこの地球には、草木も絶えて久しい。

 地球上に生きるのはアンドロイドと呼ばれる二足歩行型ロボットのみとなっていた。

 彼らのモデルの元となり、その始祖を造った生物とも言われる人類は遥か昔に滅んでしまったという。





 ロボット技師であるアダムは、427日ぶりになる休暇を過ごしていた。

 彼の仕事は、具体的には政府所有マザーコンピューターの調整及びその相手をすることだ。

 ルシフェルと呼ばれる彼女によって、この世界におけるあらゆる事象の "確率" は定められていた。

 例えば、明日の天気。
 例えば、アンドロイドである彼らの死期。

 この世界で計算できない事象は無い。





 灰色の空の下をアダムは歩いていた。

 政府都合により急な休暇を出されたのは良いが、特にやるべき事も浮かばず、とりあえず散歩することにしたのだった。

 今日もいつもと変わらず、乾いてひび割れた地には砂埃が舞っている。


「なんだろう?」


 ふとアダムの視界に入ったのは、土埃まみれになった機械の塊だった。

 近寄ってみると、細長い球体の様な形のパーツに、他の部品が接続されている様にみえる。


「不法投棄か、何か仕事に使えるだろうか」


 アダムはその塊を自宅へ持ち帰ることにした。





「それで、これは一体何なんだ」


 居住地としているガレキの廃墟で、アダムは改めてその機械を調べていた。

 やはり中央の球体部がメインパーツのようだが、その用途が分からない。

 周りにはいくつか変わったスイッチがあったが、どれを押しても全く反応しない。


「ただのゴミだったのか?」


 そう思いながらも、折角なのであちこち開けて調べてみる。

 どうにも土や汚れが酷く、明らかに壊れている部品も多々見られた。


「これがメイン電源か」


 機械の心臓部までバラして開けて、ようやくそれらしいボタンを見つけた。

 押してみたが反応がない。

 やはり壊れているのだろうか。

 そうアダムが思った時である。


――――カチッ……プシューー……


 小さな音がしたかと思うと、おもむろに球体部の側面が開いた。

 どうやら球体はカプセルだったようだ。

 そのまま上部が開放されると、土煙と混ざって中から白い霧が溢れ出した。

 霧の放出が収まったところで、アダムがカプセルの中身を確認する。

 その中に横たわっていたのは。


「……なんだこれは」


 すうすうと寝息をたてる、1人の少女だった。
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