烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

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謎の依頼編

14 依頼主の正体

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 「今日からここがエデンの家な」

 「ここが私のお家……」

 案内された家は想像以上に大きくて一人で住むには勿体無いぐらいのものだった。
 
 「あの、こんなに大きな家を私が使ってもいいんですか?」

 「そりゃあメルさんが決めたんだからいいんじゃないか? 大事にしろよ。あと、今晩は村長の家で歓迎会するから夕方になったら迎えに来るから。それと何かあったすぐ助けを呼べよ? 俺の家は牧場があるからすぐ分かると思う。って言ってもエデンは強いしな……助けなんていらないかもな」

 「いやいや……。私はまだまだ見習いの魔導師ですよ? それに魔法だってまだ上手く使えないですし何かあったら直ぐに行くのでその時は助けて貰っていいでしょうか?」

 私がそう言えばロキさんは笑いながら、おう、と返事をしてくれた。
 やはりロキさんは頼りになるお兄さんタイプだなと改めて思った。
 今まで頼れる人なんて居なかった私にとっては何だか新鮮で少しドキドキした。


 ロキさんと別れ、 私は早速家の中に入ってみる。


 やっぱり私一人住むのには勿体無いくらい広い。

 大きなダイニングテーブルも一人だと少し寂しいなと思った。
 しかもこの家二階もあるみたい。
 取り敢えずいろいろな部屋を回ってみる事にした。

 まず私が来たのはキッチン。
 ここも料理を一切した事が無い私が立って料理するには勿体無いキッチンだった。
 大きいし、何より新品みたいに綺麗だった。

 次はお風呂。
 ここもビックリするぐらい広かった。
 石でできたお風呂は何だかいい味を出しているような気がした。


 そして寝室。
 これまた広かった。
 キングベットが部屋の真ん中に置いてあり、その他にも机や椅子、クローゼットがあった。

 私はそっとベッドに触れていみる。

 ふわふわだ……。

 私は思いっきりベットにダイブした。
 まさかこんなにふわふわしたベットとは……眠るのが凄く楽しみになってきた。

 さて、そろそろ次の部屋に行こうかな。




 ************




 「一通りは回ったかな?」

 広いとは言えどもあっという間に家の中を見終わってしまった。
 これから何をしよう、そう思った時だった。


 ドォォォォン!!

 物凄い音がし、私は思わず肩をビクリと上げた。
 何かが倒れた……なんて音じゃなかった。
 多分外からだ。
 私は急いで家を飛び出す。
 すると

 「だ、大丈夫ですか!?」

 そこにはさっきギルドに来ていた冒険者パーティの人達が倒れ込んでいた。しかも酷い怪我である。

 「取り敢えず、まずは助けを呼ばないと……」

 私は慌てて助けを呼びに行こうと試みた。
 だけどそれは足元に飛んできたナイフによって阻止されてしまった。

 私はナイフが飛んできた方へと視線を投げた。
 そしたら

 「ばーか! 人間如きに見える訳がないだろう!」

 と、そんな声が聞こえてきた。
 耳を塞ぎたくなるような大きな声。
 ガラガラな声と大きな声のせいで不協和音にしか感じられなかった。
 そして次の瞬間勢いよく誰かが木々の間を飛び出し、私へとキラリと光る鋭い刃先を向けた。

 「ひっ!」

 反射的にそれを避ける私。
 危ない、危ない。
 そう思っていた矢先、今度は何かが飛んできた。

 「きゃっ!」

 また反射的に避ける。
 飛んできたものは先程と同じナイフだった。

 「な、何故避ける事が出来る!?」

 「そ、そりゃあ反射的に体が動きますよ! それにしても……ナイフといい剣といい物騒だな……」

 黒いローブを羽織り、深々とフードを被っているせいで顔は見えないけど相当な使い手だと言うことが分かる。
 右手には剣。そして左手には恐らくナイフが握られている。
 一刻も早く皆を運びたいけど戦闘態勢のこの人をどう振り切ろうかな。

 私はチラリと冒険者さん達を見つめる。
 幸いまだ息はしている。
 でも辛そうだ。
 赤く染った甲冑に、折れた剣。
 何となくだけど彼らに起こった出来事が想像出来た。

 「あの、どなたかは存じませんが今回はお引き取り頂けますか?」

 「はぁ? なんで?」

 「重傷者が居るんです。このままじゃ死んじゃいます。なのでお引き取り頂けませんか?」

 「やだね! 人間如きが命令するじゃない! こいつらは俺の依頼を承認したんだぞ!」

 依頼を……承認?

 首を傾げる私に、ローブの人が話しを続ける。

 「だからこいつらは俺の依頼を引き受けたんだ! だからこうして相手してもらってたのにヘボ過ぎて相手にならなかったんだよ」

 「もしかして……あの謎の依頼の依頼主さんすか?」

 驚きのあまりに声を上げる私。
 いや、だとしたらドラゴンは何処だろう。
 
 今私の前にはこのローブに身を包む人しかいないし、ドラゴンの姿は見当たらない。まずドラゴンなんかが居たら直ぐにでも分かると思う。ドラゴンの種類とかはあまり詳しくないけど、どのドラゴンもとても大きいという事ぐらい私でも知っている。

 「お前が何を言っているのかよく分からないが、ついでにお前も倒してやる!」

 剣を向けられる私。
 これは一体どんな状況なのだろうか。危ない状況だというのは分かる。これは戦えばいいのだろうか? いや無理だ。怖すぎる。

 そう思った時だった。
 
 剣を振り上げ、その人は私の方へと走ってくるローブの人。
 しかもかなりの足の速さだった。
 だけど今の私のステータスは異常なのものでどんなに相手が速くても相手の動きをしっかりと見極める事が出来た。

 「くらえ!!」

 剣が振り下ろされた瞬間、フード下からまん丸な瞳と目が合った気がした。

 あまり暴力的な事は好きじゃない。
 戦うのも怖いから嫌い。
 だけど今私は命を狙われているんだから自分の命は何としてでも守らないといけない。
 その為に魔法を使えるようにしようと思った。
 それと……そこに倒れている人達を一刻でも早く病院に連れていきたかった。
 自分と、この人達を守る為に戦おう。
 だけど魔法はまだ不安なので使わない。


 あれ? …………そう言えばここ病院あるよね?


 そんな事を考えながら、私は思いっ切り拳を振り上げる。
 防御力1000と攻撃力1000のステータスに頼る事にしたのだ。
 生憎魔法はまだ使えないからね。
 なら避けるか物理的攻撃の二択しか無い。
 でも避けてばかりいたらこの戦いはいつまで経っても終わらないだろう。



 バキッン!!

 相手の剣が見事に二つに折れた。
 もちろん、私の拳によってだ。

 私の拳によって折れてしまった剣を見て、唖然とするその人。
 そりゃあそうなるよね。人の拳で折れたんだから。

 私は折れた剣の先を拾い上げる。

 「降参でいいよね? あまり手荒な真似は好きじゃないの」

 「っ!」

 「ナイフ攻撃は辞めてね? 多分ナイフを投げても私なら簡単に避けれちゃうから意味ないよ? じゃあ早速だけど皆を運ぶのを手伝ってほしいな。私一人でも運べるだろうけどそれはちょっといろいろ不味いからさ。分かってるかもだけど貴方に拒否権ないからね。分かった?」

 少々脅し気味だけど、仕方ないよね。
 だってこの人嘘の依頼をだして冒険者を襲ってた訳だし。

 「……分かったよ。手伝う……手伝うから!い、命だけは……!!」

 「いやいや、さすがに命までは取らないよ!? 取り敢えずは運ぶの手伝って欲しいかな。その後にいろいろ聞いていい?」

 「…………うん」

 無意識に何故か子供と接する時のような優しい話し方になっていた。

 私は取り敢えず女性二人を持ち上げる。
 そんな私にその人が呟く。

 「あんた、本当に人間なのか?」

 「失礼だなー ちゃんとした人間です」

 「人間如きに俺が負けるわけないんだ! なのに……なのに!」

 「…………貴方の事情はよく分からないけど、今はこの人達を一刻でも早く運びたいから話は後にしよう。取り敢えず、ギルドに向かうから着いてきて」

 コクリと静かに頷く依頼主。
 うん。少しは反省してるみたい。

 私は早速ギルドへと足を急がせた。


 「あ、あんた、速すぎだろ!! やっぱ人間じゃねぇぇぇ!」

 
 そんな声が聞こえてきたけど、今は無視しよーっと。

 
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