烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

文字の大きさ
15 / 78
謎の依頼編

15 治癒魔法

しおりを挟む

 ギルドに着くなりメルさんが大慌てでギルドにある医務室を開けてくれた。因みにお医者さんは週一で来てくれる程度らしく、不在だった。


 「聞こえますか? 聞こえるなら手を握ってください」

 そう私が声を掛ければ、弱い力だったけど指がギュッと握られた。

 この人はギルドへ訪れた際に私達に謝罪してくれた人。
 少しだけあのパーティで浮いていた印象があった。

 「この人の怪我は他の方達よりも重傷です。まるで皆を攻撃から庇ったみたい」

 「エデンさん。お医者さんがこちらに到着するまでかなり掛かると思います。あの、エデンさんは治癒魔法は使えないんでしょうか? 治癒魔法ならこの人を助けれるかもしれません!」

 治癒魔法か……。
 そう言えばフェリーヌが苦戦していた気がする。

 本来魔法は呪文を唱える事が必要でその際に想像力も重要視されているのが治癒魔法。想像力があるほど効果が上がるとも言われいる。
 魔法の中でも特に治癒魔法はかなり難しいらしく、そんな難易度が高い魔法を初めて使う身としてはかなり緊張する。なにせ失敗したらこの人の命は助からないと思っていいという事だから。

 息を飲み、私は恐る恐る手を翳す。
 炎魔法の時は呪文無しで成功した。
 もしかしたら、と思い私は挑戦してみることにした。

 「こ、この人の怪我を治して」

 心の底から気持ちを込めて言えば、声が少し震えているのが分かった。

 するとその人の体全体が眩い緑色の光に包まれた。
 キラキラと光る暖かな光。
 それが直ぐに治癒魔法だと気づき、私は嬉しさのあまりに飛び上がり隣に居たメルさんに飛び付いた。
 治癒魔法を使うことが出来たことと、人を救う事ができたことがとても嬉しかったからだ。

 「や、やっぱり凄いです! 治癒魔法成功してますよ!」

 「私、他の人の治療もしてきますね!」

 「はい。お願いします!」

 私は他の冒険者さん達の治療を始めた。



 *********



 最後の一人の治療を終え、再び重傷を負った冒険者さんの所へ向かっていた。
 パーティを襲ったあの謎の依頼主は大人しく部屋の隅っこに座り込んでいる。
 ふと思ったけどこの依頼主主、私よりかなり背丈が低いんだよね。
 それとあの話し方。
 子供っぽく、大人のようには思えなかった。

 「もう治療は終わった。貴方はもう少し此処で待ってて」

 「…………うん」

 小さな返事が返ってきた。
 うん、逃げる気はなさそうね。

 私は再び足を動かせた。

 治療魔法は魔力の消耗が激しいとよく聞くけど、ビックリなことに全く体は疲れていない。
 魔力のステータスはマックスの1000だからそりゃあ消耗しても底を尽きることは無さそうだから疲れないのは当たり前なのかもしれない。

 「エデンさん!」

 「メルさん、患者さんの具合は?」

 「もう起きていらっしゃいますよ。エデンさんが他の方の所へ行って直ぐにお目覚めになりました」

 治癒魔法の効果は抜群だったみたい。

 「貴方が僕を助けてくれたんですか?」

 「はい、エデンと言います。もう体は大丈夫ですか?」

 「僕はゼアと言います。体はお陰様で大丈夫です。あの……他のメンバーは……」

 「皆さんは貴方と比べて軽いものだったので今は村長さん……じゃなくてギルドマスターとお話中です」

 私がそう言えばその人は安心したのか胸を撫で下ろした。
 でも、私はまだ安心出来ていない。
 それはこの人についてだ。

 「私には貴方の怪我がまるで皆を庇っているように見えました。他の人は酷い人で骨折なのに、貴方だけは重傷。治療が遅ければ亡くなっていたと思います」

 私の言葉に明らかに動揺をみせるゼアさん。
 このパーティには何かしらあるなと私は思った。
 あまり踏み込み過ぎるのは良くないとは思う。でも、この件に関しては別。もしかしたらパーティ内でいじめ、暴力的行為が及んでいるのかもしれないと思ったら放ってはおけなくなった。

 「僕、あのパーティで足を引っ張ってて……それで何かに襲われた時に皆の役に経たないとって盾になってたんです。まぁ、結果盾になっても約立たずだったんですけどね」

 「…………そうだったんですか」

 聞いてよかった話なのか今更後悔した。
 この人の言っていることが真実だとすればパーティ内でのいじめの可能性は無いだろうけど、本人が気づいていない事だって有り得る。

 「取り敢えず……メンバーの方達の所へ案内しますね」

 医務室を出ようとドアノブに手を掛ける。

 「あの、エデンさん」

 「はい?」

 声を掛けられ、私は振り向く。

 「……助けてくれて本当にありがとうございました。エデンさんは僕の命の恩人です」

 深々と頭を下げられ私は目を見開く。
 やっぱ御礼を言われるのは慣れないな……
 少しばかり照れ笑いを浮かべる私。
 うん、やっぱり御礼を言われるのは何だか恥ずかしいな。

 ゼアさんの柔らかそうな桃色の髪がふわりと揺れる。


 何処かで見覚えのある髪色だったけど、まさかね……。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

処理中です...