28 / 78
魔導師の集い編
27 魔導師の集いへの招待状
しおりを挟む十二時を短い針が回った頃、辺りは静まり返っていた。
外は真っ暗で見えるのは夜空に輝く星と月ぐらい。
昼間はあれだけ騒がしかったレッドドラゴン……現在は人間として生活しているのだけれど、ルカと呼ぶ事にした。ルカは遊び疲れたのか私のベッドの上でぐっすり眠ってしまっている。
本当は部屋を用意するつもりだったんだけどはかなりの寂しがり屋らしく、一緒がいいと上目遣いで頼まれてしまったので断る事が出来なかったのだ。
すやすやと寝息をたてながら熟睡するルカ。
可愛いなーと思いながら私はルカの寝顔を覗き込む。
そして改めて変身魔法は凄いなと思った。
何処からどう見ても人間の女の子にしか見えないその姿。
だけど変身魔法だってずっと続く訳では無い。
人によって魔法の効果は変わるので、そこだけが不安だ。
「……そうよ。 魔法のアイテムを作ればいいのよ!」
魔法のアイテム。
名前の通り魔法で作った道具のこと。
傷を癒したりするポーションもこの魔法道具にあたる。
そして今回私が作りたいのは変身魔法を解けなくさせる魔法道具である。
「よし……! 朝から早速試行錯誤してみなくちゃね」
私はベッドにそっと入り、朝に備えて眠りに着くことにした。
***********
「じゃあルカ。今から試験を行います!」
「試験……?」
朝の六時。ロキさん家の鶏の声で起きた私とアンくん、そしてルカと家の近くにある森へと来ていた。
試験という言葉にコテンと首を傾げるルカに、私が試験の説明を始める。
「ルカに変身魔法が解けないようにする魔法道具を作りたいと思ってるの。だけどね、万が一ルカが人間の姿では本領を発揮できない可能性がある。もしルカが一人の時に何かあったら私は助けてあげられないから」
「エデンさん。私、お二人の足になりたいんです!」
「あ、足?」
思わず聞き返す私。
足ってどういう事かしら?
さっぱり意味がわからなかった。
「二人がお出かけする際など私が足となり二人を運びたいんです!」
「あ、なるほど。そういう事ね。 うん、それは凄く有難いかも」
実際この村だけでは食料の調達も少し大変だし、もしこれからお金稼ぎの為に冒険者の仕事をこなしていくとすれば移動手段は大切である。
ドラゴンの姿にもなれて人間の姿にもなれる。つまり両方の姿をルカの意思で自由自在に変えることが出来るようになる魔法道具を作ろう。
私はよし! っと拳を握り締める。
初めての魔法道具作り。
これもフェリーヌは苦戦してたっけ。
イメージ通りのものが再現できないとか何とかで。
取り敢えず、身につけやすいようにネックレスとかにしようかな? その方が身につけるのも簡単だし、ルカにだって出来ると思う。
イメージ力はある方だと思うし、頑張ってみよう。
「ねぇ、お師匠」
「……どうかした? アンくん?」
「何か居る……よね」
「…………うん。一人……うんうん。二人だね」
私の言葉に目を丸くするアンくん。
まぁ、気づいていなかった訳じゃないけどここまで私達を監視するかのような視線気づかないわけがない。
私は息を吐き、ぐるりと周りを見渡す。
「隠れてる人、出てきてくれませんか?」
私がそう呼び掛ける。
アンくんが何処からか鞘を取り出し、剣を抜く。
一方ルカは状況が分からないようで戸惑っている。
私はルカを引き寄せる。
この子に何かあったら大変だからね。
風がやみ、無音の世界となった時だった。
「ふっふふふふ。さすがSランクの魔導師様! いや……さすがディグラード家のご令嬢……というべきですかね?」
不気味な笑みを浮かべながら現れたのは紫色の髪に、特徴的な大きなシルクハットに黒目の黒い服に身を包む長身の男性とその真逆で真っ白な服に身を包む白髪に赤目の女の子。
私の表情が強ばるのが分かった。
何処で知ったのよ……その情報。
騎士団の人達には口止めをしたはず。
なら何処から情報が漏れた??
いや、まずはこの状況を理解しないと。
「あの、ご要件は? 要件が無ければお引き取りお願いしたいですが」
「おやおや、そんな怒らないでくださいな。私は貴方に招待状を渡しに来ただけですので」
招待状……?
男性は不気味な笑みを再び浮かべるなり、両腕を大きく広げ
「貴方は選ばれたのです! 我が魔導師の集いに参加出来る特別な存在として!」
「……よく分からないんですけど」
「まぁ、来たら分かります。なので、アヤメ。エデン様に招待状を」
「…………はい、主様」
アヤメと呼ばれた女の子は、私へと真っ黒な封筒を差し出した。
受けとないと……ダメなのかな?
正直、面倒事には関わりたくないんだけど……。
私はチラリと男性の方を見る。
目が合い、目を逸らそうとした時だった。
「参加しなければ貴方の秘密…………バラしちゃいますよ?」
「脅しですか?」
「はい。もちろんです」
男性はニコリと微笑んだ。
この人は私がディグラード家から抜け出しここにひっそりと暮らしている事も、私がSランクの魔導師だと言うことも知っているみたいだし、これで逆らったらどうなるか分からない。
私はしぶしぶとその招待状を受け取ると、アヤメと呼ばれた女の子がゆっくりと口を動かした。
「…………エデン様」
「な、なに?」
警戒心丸出しの私である。
「兄様は……兄様は悪くないの。お願い、信じて」
綺麗なルビーのような瞳。
サラサラで綺麗なシルクみたいな白い髪。
綺麗に整った顔立ち。
私は目を見開く。
「セリア……様」
女の子は小さく頷くと、男性の方へと駆け足で戻っていってしまった。
「と、言うことで……エデン様。それと竜人の少年とレッドドラゴンの御二人も集いへのご参加心よりお待ちしております!」
男性はそう言うと大きなシルクハットを取り、深々と頭を下げる。
そして風に吹かれた煙のように忽然と姿を消した。
20
あなたにおすすめの小説
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。
薄幸ヒロインが倍返しの指輪を手に入れました
佐崎咲
ファンタジー
義母と義妹に虐げられてきた伯爵家の長女スフィーナ。
ある日、亡くなった実母の遺品である指輪を見つけた。
それからというもの、義母にお茶をぶちまけられたら、今度は倍量のスープが義母に浴びせられる。
義妹に食事をとられると、義妹は強い空腹を感じ食べても満足できなくなる、というような倍返しが起きた。
指輪が入れられていた木箱には、実母が書いた紙きれが共に入っていた。
どうやら母は異世界から転移してきたものらしい。
異世界でも強く生きていけるようにと、女神の加護が宿った指輪を賜ったというのだ。
かくしてスフィーナは義母と義妹に意図せず倍返ししつつ、やがて母の死の真相と、父の長い間をかけた企みを知っていく。
(※黒幕については推理的な要素はありませんと小声で言っておきます)
学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
偽りの婚姻
迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。
終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。
夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。
パーシヴァルは妻を探す。
妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。
だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。
婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……
華都のローズマリー
みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。
新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる