烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

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魔導師の集い編

27 魔導師の集いへの招待状

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 十二時を短い針が回った頃、辺りは静まり返っていた。
 外は真っ暗で見えるのは夜空に輝く星と月ぐらい。

 昼間はあれだけ騒がしかったレッドドラゴン……現在は人間として生活しているのだけれど、ルカと呼ぶ事にした。ルカは遊び疲れたのか私のベッドの上でぐっすり眠ってしまっている。
 本当は部屋を用意するつもりだったんだけどはかなりの寂しがり屋らしく、一緒がいいと上目遣いで頼まれてしまったので断る事が出来なかったのだ。

 すやすやと寝息をたてながら熟睡するルカ。
 可愛いなーと思いながら私はルカの寝顔を覗き込む。
 そして改めて変身魔法は凄いなと思った。
 何処からどう見ても人間の女の子にしか見えないその姿。
 だけど変身魔法だってずっと続く訳では無い。
 人によって魔法の効果は変わるので、そこだけが不安だ。
 

 「……そうよ。 魔法のアイテムを作ればいいのよ!」

 魔法のアイテム。
 名前の通り魔法で作った道具のこと。
 傷を癒したりするポーションもこの魔法道具にあたる。
 そして今回私が作りたいのは変身魔法を解けなくさせる魔法道具である。

 「よし……! 朝から早速試行錯誤してみなくちゃね」

 私はベッドにそっと入り、朝に備えて眠りに着くことにした。



 ***********
 



 「じゃあルカ。今から試験を行います!」

 「試験……?」

 朝の六時。ロキさん家の鶏の声で起きた私とアンくん、そしてルカと家の近くにある森へと来ていた。
 試験という言葉にコテンと首を傾げるルカに、私が試験の説明を始める。

 「ルカに変身魔法が解けないようにする魔法道具を作りたいと思ってるの。だけどね、万が一ルカが人間の姿では本領を発揮できない可能性がある。もしルカが一人の時に何かあったら私は助けてあげられないから」

 「エデンさん。私、お二人の足になりたいんです!」

 「あ、足?」

 思わず聞き返す私。
 足ってどういう事かしら?
 さっぱり意味がわからなかった。

 「二人がお出かけする際など私が足となり二人を運びたいんです!」

 「あ、なるほど。そういう事ね。 うん、それは凄く有難いかも」

 実際この村だけでは食料の調達も少し大変だし、もしこれからお金稼ぎの為に冒険者の仕事をこなしていくとすれば移動手段は大切である。
 ドラゴンの姿にもなれて人間の姿にもなれる。つまり両方の姿をルカの意思で自由自在に変えることが出来るようになる魔法道具を作ろう。

 私はよし! っと拳を握り締める。
 初めての魔法道具作り。
 これもフェリーヌは苦戦してたっけ。
 イメージ通りのものが再現できないとか何とかで。

 取り敢えず、身につけやすいようにネックレスとかにしようかな? その方が身につけるのも簡単だし、ルカにだって出来ると思う。
 イメージ力はある方だと思うし、頑張ってみよう。


 「ねぇ、お師匠」

 「……どうかした? アンくん?」
 
 「何か居る……よね」

 「…………うん。一人……うんうん。二人だね」

 私の言葉に目を丸くするアンくん。
 まぁ、気づいていなかった訳じゃないけどここまで私達を監視するかのような視線気づかないわけがない。

 私は息を吐き、ぐるりと周りを見渡す。

 「隠れてる人、出てきてくれませんか?」

 私がそう呼び掛ける。
 アンくんが何処からか鞘を取り出し、剣を抜く。
 一方ルカは状況が分からないようで戸惑っている。
 私はルカを引き寄せる。
 この子に何かあったら大変だからね。

 風がやみ、無音の世界となった時だった。

 「ふっふふふふ。さすがSランクの魔導師様! いや……さすがディグラード家のご令嬢……というべきですかね?」

  不気味な笑みを浮かべながら現れたのは紫色の髪に、特徴的な大きなシルクハットに黒目の黒い服に身を包む長身の男性とその真逆で真っ白な服に身を包む白髪に赤目の女の子。
 私の表情が強ばるのが分かった。

 何処で知ったのよ……その情報。
 騎士団の人達には口止めをしたはず。
 なら何処から情報が漏れた??

 いや、まずはこの状況を理解しないと。


 「あの、ご要件は? 要件が無ければお引き取りお願いしたいですが」

 「おやおや、そんな怒らないでくださいな。私は貴方に招待状を渡しに来ただけですので」

 招待状……?

 男性は不気味な笑みを再び浮かべるなり、両腕を大きく広げ

 「貴方は選ばれたのです! 我が魔導師の集いに参加出来る特別な存在として!」

 「……よく分からないんですけど」

 「まぁ、来たら分かります。なので、アヤメ。エデン様に招待状を」

 「…………はい、主様」

 アヤメと呼ばれた女の子は、私へと真っ黒な封筒を差し出した。

 受けとないと……ダメなのかな?
 正直、面倒事には関わりたくないんだけど……。

 私はチラリと男性の方を見る。
 目が合い、目を逸らそうとした時だった。

 「参加しなければ貴方の秘密…………バラしちゃいますよ?」

 「脅しですか?」

 「はい。もちろんです」

 男性はニコリと微笑んだ。

 この人は私がディグラード家から抜け出しここにひっそりと暮らしている事も、私がSランクの魔導師だと言うことも知っているみたいだし、これで逆らったらどうなるか分からない。

 私はしぶしぶとその招待状を受け取ると、アヤメと呼ばれた女の子がゆっくりと口を動かした。


 「…………エデン様」

 「な、なに?」

 警戒心丸出しの私である。

 「兄様は……兄様は悪くないの。お願い、信じて」

 綺麗なルビーのような瞳。
 サラサラで綺麗なシルクみたいな白い髪。
 綺麗に整った顔立ち。

 私は目を見開く。


 「セリア……様」

 女の子は小さく頷くと、男性の方へと駆け足で戻っていってしまった。
 
  「と、言うことで……エデン様。それと竜人の少年とレッドドラゴンの御二人も集いへのご参加心よりお待ちしております!」

 男性はそう言うと大きなシルクハットを取り、深々と頭を下げる。
 そして風に吹かれた煙のように忽然と姿を消した。

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