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魔導師の集い編
29 仮装と仮面
しおりを挟む翌日の午後八時少し前、私達はグランジュエの舘へ来ていた。
ルカの魔法を一度解き、再びドラゴンの姿となったルカに乗り招待状に記された会場へ向かって1時間。辿り着いたのは丘の上に立つ大きなお屋敷。少し不気味な雰囲気はあるけど、至って普通のお屋敷にも見える。
私はもう一度ルカに魔法をかけ、人間の姿へと変える。
やっぱりこれは大変だから早くなんとかしなきゃね。
お屋敷の門へと近づけば、ギギギィとこれまた不気味な音をたてて空いた。しかも、自動ドアみたい。
「まるでお化け屋敷みたい……」
ポツリと私が呟けば、アンくんが顔を真っ青にした。
一方のルカは目をキラキラと輝かせていた。
門を潜れば、門の扉はまた一人で勝手に閉まった。
多分グランジュエの魔法で来客者には扉が自動に開くように調節されているのだろう。本当に魔法は便利だなと改めて思った。
不気味なお屋敷は、敷地の庭だって不気味だった。
変な銅像、赤い液体の噴水に、黒い薔薇ばかり埋められた花壇。
そんな花壇の前に、ポツンと浮く白い何か。
よーく目を凝らして見てみる。
「あ、貴方は……」
「お待ちしておりました。エデン様、アンドレ様。ルカ様」
そこに居たのはアヤメと呼ばれていた女の子だった。
「集いの会場はこちらです」
そう言うとその子はどんどん先へと歩いていってしまった。
置いていかれないよう私達もその子の後ろを着いていく。
そうしてやっとお屋敷へと辿り着いた。
見た目の割に庭が広く、門からお屋敷までかなり距離があった。なので辿り着けて心底ホッとした。
「今日はお越し頂き誠にありがとうございました。こちらが大魔導師であるグランジュエのグランジュエの舘です」
女の子はそう言うと、私たちを舘へともてなした。
メルさん曰くパーティーみたいなようなものらしいけど、静けさと不気味さのせいで私にはどうしてもパーティーには見えない。
見た目さえも不気味な舘なのに、中はさらに不気味だった。
まず大きな人形。黒をベースとした言わぬるゴシックロリータな服に身を包んでいる。そんな人形が数十体と飾られている。
次にぐちゃぐちゃに絵の具を撒き散らしただけのようは……正直何が描かれているのかさっぱり分からない絵がずらりと壁に掛けられている。
長い廊下が続いた後、突然女の子が足を止めた。
「ここがパーティー会場?」
「いえ。ここは衣装室です」
「衣装室?」
「皆様には仮装をしてもらいます。顔が見えないよう、仮面もつけて頂きます」
「あの、何で仮装をしないといけないんですか?」
「グランジュエ様の趣味です」
あー、なるほど。
私は一人納得するのであった。
「ではアンドレ様はこちらに」
「え!? 俺も仮装するの!?」
「はい。集いに参加する為の第二の条件となっていますので」
心底嫌そうな顔になるアンくん。
仮装なんて初めてでちょっぴり楽しみ……なんて言えるわけなかった。
************
「見て下さい、エデンさん! 」
元気いっぱいな声でそう言ったのは純白のドレスに身を包むルカだった。
長い髪を高い位置に2つに結び、ティアラをつけているルカの姿はまさに花嫁そのものだった。
「似合いますか?」
「うん。可愛いルカにぴったりだと思うよ」
私がそう褒めればルカが嬉しそうに笑った。
花嫁……うんうん。これは天使。天使に違いない。
きゃっきゃと楽しそう笑うルカに私の頬が思わず緩んだ。
「エデンさんはどんな仮装をするんですか?」
「えっと……実は迷ってて」
だって衣装室には何千着ものお洋服、髪飾り、靴、小物などがあるのだ。そう簡単には選ぶ事が出来なかった。
「なら、私が選んであげます!」
「うん。それが良いかも」
「はい! 任せてください!」
ルカは小さな胸を張ると、気合い溢れた様子で私の衣装を探しに行ってくれた。
「あ、出来れば露出が高いのは辞めてねー」
そう一言注意を入れれば、ルカのはーい、と言う返事が返ってきた。
それから数十分後。
やり切った! というような表情で戻ってきたルカから衣装を受け取り、私は早速試着した。
そして鏡にうつった自分を見て私はルカに尋ねる。
「…………ルカさん。この衣装は……?」
「森の妖精エルフです!」
「な、なるほど」
確かに私の髪色は金色に近いし、エルフの仮装は案外1番いいのかもしれない。
緑と白をベースにしたワンピースには小さな羽がついていた。所々に小さな花が着いていて可愛らしい。それとエルフ特有の耳の飾りをつけ、頭には花冠といった服装。
まさかエルフの仮装をする事になるとは……。
鏡にうつる自分を見つめる。
まぁ、露出度はあまり高くないからいっか。
私は用意された仮面を手に取る。
さて、魔導師の集いに参加してきますか……。
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