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錬金術師と魔導師編
41 光の精霊
しおりを挟むその後、精霊達は帰って行った。
光の精霊について詳しく聞きたかったんだけど、私の腹の虫がそれを阻止してしまったのだ。
私は図鑑を手にリビングへと向かう。
そしてリビングへと繋がる扉のドアノブに手を掛けた時だった。
【貴方から漂う素敵な香り……何かが起こる予感がするわ!】
「え……?」
脳内に突然響いた声。
私は弾かれたように後ろを振り返る。
するとそこに居たモノに思わず私は構える。
小さな羽がある事から精霊なのだろう。
でも先程あった風の精霊や、炎の精霊とは違う。
なにせその精霊は見た目は人間そのものだったからだ。
【とは言っても決してこれは良いことでは無いわ。言わゆる不吉な予感ってやつよ。私はそんな貴方を助けるべく加護を与えたの】
くるくると回りながらその妖精は突然笑えない話を話し出す。
本当かどうかも信じ難い話だけど、先程会った妖精達とは何処か格が違う気がする。
まず見た目からそうだ。
ショートボブの金色の髪に、桃色の瞳で、服だって着てる。
そして何より違うのは羽。
なんと言うか大きくてとても立派な羽なのだ。
【そうだ! まだ名乗っていなかったわね! 私はリリア。光の精霊王って呼ばれているわ】
「エデン。昨日からここにやって来たの。よろしくねリリア」
光の精霊王って事は凄い精霊なのだろう。
私は精霊については詳しく分からないが名前からして凄いんだと思う。
リリアは私の肩にちょこんと座る。
そんなリリアを見つめる私。
「一緒に……居るの?」
【えぇ。私は貴方に加護を与えたのだから当たり前じゃない】
そうリリアは言うと、鼻歌を歌いだしてしまった。
なんと言うか、自由気ままな子だ。
*************
「はぁ……暇だな~」
私はベッドの上を何度も何度も寝返りをうってはそう呟く。
あの後リビングへ行けばクロートの姿は無くテーブルには朝ご飯と置き手紙が添えてあった。手紙には今日は仕事場に籠るとだけ書かれていた。何をしているのかは分からないけど、まぁお仕事なら仕方ない。
【ねぇ、エデン! 外に行きましょう!】
「勝手に出ていったらクロートに悪いよ」
【クロート?】
「あー。この家の主人の人だよ」
そう私が言えばリリアが両手を合わせ微笑んだ。
【もしかして冷徹の錬金術師のことかしら!?】
冷徹の錬金術師……?
首を傾げる私にリリアが大きく頷く。
【精霊達の間では有名な話しよ! 冷徹の錬金術師。何かを求めて毎日錬金術に明け暮れてるって話しよ。精霊の加護を貰っているのか私達の姿が見えるっていう話も聞いたわ。それに冷徹の錬金術師に私達精霊は何度も助けられた事があるの】
「へぇ、そうなんだね」
【えぇ! 密かに妖精達の間では人気者なの】
楽しげに話すリリア。
どうやらクロートは精霊達にとっては尊敬出来、尚且つ英雄のような……そんな人間なのだろう。
私は体をおこし、大きく背伸びをする。
時計の短い針はまだ十時。
まだまだ一日は長い。
リリアが居るおかげで話し相手には困らないけれど、ずっと部屋で話っぱなしというのもやはり疲れる気がする。
なので疲れる前に聞きたいことを聞いておこう。
私は手招きし、リリアを手のひらに乗せる。
「ねぇ、リリア。精霊の加護って言うのは誰でも持ってるものなの?」
【いいえ。精霊に認められた者しか持てないわ。とは言っても……精霊の加護を持ってる人間なんて滅多に居ないわ】
「え、どうして?」
【だって精霊の加護を貰える人間というものは決まっているの。例えばそうね……エデン。貴方はそうよ】
リリアがニコリと微笑み、私を指さしそう言った。
どうやら私は精霊の加護を貰える人間だったらしい。
ユニーク要素が出て、鑑定眼が使えて、巫女になってまさかの次は精霊の加護ときた。
【エデン。貴方から漂う素敵な香りに私はつられてしまったわ! 精霊の加護を貰える人間というのはそんな香りがする人だけなのよ!】
「……え? それだけ?」
【えぇ! それだけよ!】
思わず聞き返してしまった。
それにここまでキッパリと返されるともう何も言えない。
なにせ思った以上に精霊の加護を貰える人間の条件が簡単なように思えた。その素敵な香りというものがどんなのかは私には分からないけどそれが精霊それぞれだった場合いろんな人が加護を貰えそうな気がした。
確か精霊の加護を持ってる人は少ないと聞いた。
その素敵な香りって言うのは言わば不吉な事が起こる前兆。
何だか素直に喜べない。
【という事でエデン! 私は貴方のそんな香りにつられ加護を与えたの。不吉な予感……とは言ったけど当たるかなんて分からないわ! でもそれがドキドキワクワクだもの! 私は好きよ。そらから……私は貴方を全力でサポートするわ! だからこれからよろしくね、エデン!】
「う、うん……よろしくリリア」
小さな手が差し出され、私は指を差し出す。
リリアの手は小さい。だからこれで握手だ。
リリアの言う不吉な予感というモノがどいうものなのかは分からないけど、取り敢えず何も起こらないと事を願うしかない。
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