烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

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パン屋がやってきた編

54 ルゲル村

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 ギルドへとやって来た私とユウさん。
 私は早速ギルドマスターにBランクのモンスターを見せた。

 「こりゃあ大物だな。ここも遂にランク替えの時期なんだな」

 「ランク替え?」

 聞き慣れない言葉に私は首を傾げた。

 「ランク替えと言うのは10年経つにつれ現れるモンスターのレベルがランダムに変わっていくことを言うんです。何故ランク替えが起こるのかまだ詳しくは分かっていなんですが……にしても今回のランク替えはハズレでしたね。まさかBランクのモンスターが当たるなんて」

 メルさんの詳しい説明に頷く私。
 なるほど。だからCランクしか出ない筈の森なのにBランクのモンスターが現れたのか。

 「でも、これってつまり……」

 「はい。Bランクのモンスターは人を襲う事があります。それに家畜や作物が荒らされる可能性だってありますし厄介ですね」

 メルさんが大きなため息を吐いた。
 BランクのモンスターはCランクのモンスターと比べたら体も大きいし凶暴である。そんなモンスターがもしルゲル村に突然現れたら村はパニック状態に陥るだろう。それに……

 「ここがBランクのモンスターが現れるとなると人があんまり寄ってこないだろうな……」

 「そうですね……」

 ギルドマスターの言う通り、一般の人にとってBランクのモンスターは危険すぎる。これから沢山の住人を迎え入れたいこの村にとってはこのランク替えは最悪の事態だと思う。

 「うぅ……ユウさんが来てくれてルゲル村にパン屋が出来るというのにぃ! ランク替えのせいで益々人が寄り付かなくなりますよぉ!」

 メルさんが涙目で訴えるように言った。
 この村の発展の為に努力してきたメルさんにとって今回のランク替えはとてもショックだったと思う。
 私はメルさんを慰めようと背中を摩った。
 そうすればメルさんが私へと抱き着いて、声を荒らげた。

 「エデンさぁぁぁん!」

 「私も何か出来る事があれば頑張ります! だから悲しまないでください!」

 そうは言ったものの私に出来る事って何だろう?

 私の第二の故郷のルゲル村。
 住人の皆が優しくて、そして土地も広くて、何より自然が豊かで素晴らしい村である。

 沈黙が続く中、そんな沈黙を壊したのはユウさんだった。

 「あの、俺のパン屋を開店してお客さんを呼び込むのはどうでしょう? 近くとは言っても離れた場所なんですがそれなりに大きな街があります。そこで呼び込みとかしたりしたらいいんじゃないですかね? そしたらきっとルゲル村に沢山の人が来てくれますよ」

 ユウさんの思い切った提案に私もメルさんもギルドマスターも面を食らった。

 だってまさかこんな提案されるなんて誰も思っていなかったから。
 私はメルさんと顔を見合わせる。

 「えっと……ユウさんはそれでも大丈夫なんですか?」

 「はい。俺は大丈夫です」

 ニコリと爽やかな笑顔で言うユウさんだけど、ユウさんの言っている事がどれほど大変なのか本人が1番分かっていると思う。

 私はよし!拳を握りしめた。

 「ユウさん、私も手伝います! パンに必要な食材の採取は任せて下さい。それと他の街での呼び込みも任せて下さい」

 「え? いいんですか!? 助かります」

 パァと花が咲いたかのような笑顔をうかべるユウさん。

 「はい。任せて下さい!」

 私は大にぬ胸を張った。

 私に今出来ること。
 それはユウさんを支える事だと思う。
 だって私はパンなんて作れない。だけど呼び込みとか、食材採取なら出来る気がした。

 「私も、受付嬢として冒険者さんがルゲル村に来てくれるよういろいろクエストを依頼してみようと思います!」

 メルさんに笑顔が戻り、私はホッとしたのと同時に小さくガッツポーズをし、気合を入れた。


 さて、忙しくなるぞー!!

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