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パン屋がやってきた編
59 盗賊
しおりを挟む「なんだ、なんだ? まさか俺達と戦おうってかぁ~?」
下品な笑みを浮かべながら私へと徐々に距離を縮めてくる一人の男に私は言う。
「あまりそういう事は好きではないんです。なので話し合いませんか? それで解決するのが一番だと思うんです」
「はぁ!? お嬢ちゃん、ちょっと可愛いからって調子に乗るんじゃねぇーぞー!!」
どうやら話し合いは無理みたい。
あまり手荒な真似は好きじゃないから嫌だったんだけどな……。
私は鑑定眼で男を見る。
____________
名前 ケイガ
職業 盗賊
ランク C
体力 400
精神力 230
防御力 300
攻撃力 310
魔力 100
素早さ 330
_____________
体力はあるみたいだけど、魔力はあまり無いみたい。
それに精神力も低い。
この鑑定眼では人を鑑定する際にその人が冒険者で例えるとどのランクに値するか分かる。
なのでこの男は冒険者ランクCに値する実力を持つという事になる。
男は鞘から剣を抜くと、剣を構え走り出す。
「とりやぁぁぁぁぁ!」
掛け声だけなら立派な剣士に聞こえるんだけど、他は全然ダメダメだった。なにせ剣術を習ったばかりの私でも分かるくらい男の構えは隙だらけでまるで何時でも攻撃して下さいと言わんばかりのように見えた。
振り上げられた剣を避け、私は男のおデコに手を伸ばす。
そして思いっきりデコピンをした。
私のデコピンは思った以上にいい音を出した。
いい音が出たと言う事はそれなりに威力もあった。
男は吹っ飛び、宙を舞い、そして地へと落ちる。
モクモクと砂埃がまった後、男がようやく姿を見せた時にはもう彼は白目をむいて気絶していた。
「嘘だろ! デコピンで……!?」
「一体何者なんだ! あの女の子はっ!?」
ざわつく盗賊達。
これで話し合う気になってくれたら嬉しい。
だけどどうやら私の考えは甘かったらしい。
リーダーらしき男が腰に下げていた二つの鞘から剣を抜く。
二刀流使いなんて初めて見た。
私は早速鑑定眼で鑑定をする。
ランクはBの上……か。
だとすればBランクの冒険者に値する実力でそれも上位の方の実力。
改めてこの鑑定眼の便利さに苦笑を浮かべる。
何だか覗き見している気分で申し訳ない。
「嬢ちゃん。中々強いみたいだが……いいのか? 俺は強いぞ?」
汗をだらだらと流しながらリーダーの男がそう言った。
気の所為かな? 何だか顔色が悪い気がする。
「お構いなく」
「そ、そうか……嫌、だがな……俺は女を切る趣味なんて無いんだよ。つまりな、やっぱり剣を持たない奴とは戦えないんだよ!」
「では戦う気もなければ話し合う気もないと?」
「そ、そういう事になるなっ! 」
「そうですか……なら仕方ないですね」
私は小さく息を吐く。
こうなったら……仕方ない。
両手を天へと突き上げ、唱える。
「いでよ、魔剣!」
そう唱えれば魔法陣が現れ、魔剣が姿を現す。
私は魔剣を手に取り、リーダーの男へと向ける。
「これでいいですか?」
ニコリと微笑む。
ちょっと驚かせすぎちゃったかな?
でもこれぐらいしないときっとこの人達は反省しないだろう。
あまり目立つ事はしたくなかったけどこの街の人達の為には一番効率の良いやり方だったと思う。
「何か言うことは?」
「「「すいませんでしたぁぁぁぁぁ!!」」」
盗賊の男達全員が地面に手を付き、足をつき、頭をついた。
言わば土下座というやつだ。
と、取り敢えず一件落着……かな?
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