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パン屋がやってきた編
62 試作品のパン
しおりを挟むロキさんの手伝いを済ませたあと、ユウさんのお店へと向かった私。
お店の扉を開けるなり、甘い香りがしてきて思わず笑みが零れた。
「あ、お師匠! おかえり!」
するとテーブル席に腰掛けていたアンくんが私の方へと駆け寄ってきた。
頬には白い粉が着いていた。
「アンくんほっぺたに粉が着いてるよ。取ってあげるね」
そう言えば少し恥ずかしそうに頬を染めるアンくん。
けど素直に粉を取らせてくれた。
「もしかしてパン作りしてた?」
「そう。お手伝い……って思ってやってたんだけど上手く出来なくて」
しょんぼりして言うアンくんに私は慰めの言葉をかけようとすれば厨房へと繋がる扉が開いた。
「アンドレ君はよく頑張ってくれましたよ。手つきが素人とは思えないくらいでしたし、なにより俺のサポートを頑張ってくれてました。本当に助かってましたよ」
「だってよ、アンくん」
「……うん。ありがと」
お、珍しい。アンくんがここまで人に懐いているなんて。
「エデンさん。お疲れ様です。良かったらパンの試作が出来たので食べてみませんか?」
「え、いいんですか!? 実はお腹ぺこぺこでして……」
「はい。勿論です。アンドレ君もどーぞ」
「……うん」
ユウさんが厨房から次々に試作費のパンを持ってくる。
その量は三人で食べにれるような数では無かったので、取り敢えず残ったパンは皆に配る事にした。
私はまん丸のパンに手を伸ばす。
白い生地がモチモチしていて、私はそれにかぶりつく。
「んん! 美味しい! これ、カスタードパンですね?」
「はい。正解です」
かじった瞬間甘いカスタードが口の中に広がった。
そしてふわふわな生地のおかげでそのカスタードが甘みがより際立っていた。
「美味しいです。ほんとに!」
私はまた一口、また一口とパンを食べていく。
そしてあっという間にカスタードパンを平らげてしまった。
「お師匠って、ほんと美味しそうに食べるよねー」
「そ、そうかな?」
「はい。作って良かったなと思いました」
た、確かに食べるのは好きだけどそんなに美味しそうに食べてる?
何だか恥ずかしくなってきた。
「あ、アンくんは何食べてるの?」
私は話を切り替えた。
そしてアンくんの手に握られているパンを見つめる。
「木の実ロールだよ。木の実が新鮮で凄く美味しい」
「美味しそう! 私も食べようーっと!」
早速私も木の実ロールを食べてみる。
うん、アンくんの言った通り凄く美味しい。
なによりボリューム、風味、食感のバランスが良かった。
「エデンさん。まだまだありますから是非!」
勧められてしまい私は断ることが出来ずにまたパンを一つ手に取る。
今度は一口サイズのパン。
これなら作業をしながら簡単に食べれそう。
こうして私は次々に試作品のパンを食べ続けた。
その夜…………
「ぐっ……! お腹いっぱいで食べれないよー!!」
目の前にある美味しそうな肉料理を前に私は泣き叫んでいた。
今日は試作品のパンを食べ過ぎだせいでお腹いっぱいになってしまったのだ。
そんな日に限ってメルさんからご飯に誘われ、しかも肉料理ときた。
私は机に突っ伏す。
「うぅ……パンを食べれたのはいいけどお肉も食べたーい……」
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