烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

文字の大きさ
64 / 78
パン屋がやってきた編

62 試作品のパン

しおりを挟む

 ロキさんの手伝いを済ませたあと、ユウさんのお店へと向かった私。
 お店の扉を開けるなり、甘い香りがしてきて思わず笑みが零れた。

 「あ、お師匠! おかえり!」

 するとテーブル席に腰掛けていたアンくんが私の方へと駆け寄ってきた。
 頬には白い粉が着いていた。

 「アンくんほっぺたに粉が着いてるよ。取ってあげるね」

 そう言えば少し恥ずかしそうに頬を染めるアンくん。
 けど素直に粉を取らせてくれた。

 「もしかしてパン作りしてた?」

 「そう。お手伝い……って思ってやってたんだけど上手く出来なくて」

 しょんぼりして言うアンくんに私は慰めの言葉をかけようとすれば厨房へと繋がる扉が開いた。

 「アンドレ君はよく頑張ってくれましたよ。手つきが素人とは思えないくらいでしたし、なにより俺のサポートを頑張ってくれてました。本当に助かってましたよ」

 「だってよ、アンくん」

 「……うん。ありがと」

 お、珍しい。アンくんがここまで人に懐いているなんて。

 「エデンさん。お疲れ様です。良かったらパンの試作が出来たので食べてみませんか?」

 「え、いいんですか!? 実はお腹ぺこぺこでして……」

 「はい。勿論です。アンドレ君もどーぞ」

 「……うん」

 ユウさんが厨房から次々に試作費のパンを持ってくる。
 その量は三人で食べにれるような数では無かったので、取り敢えず残ったパンは皆に配る事にした。

 私はまん丸のパンに手を伸ばす。
 白い生地がモチモチしていて、私はそれにかぶりつく。

 「んん! 美味しい! これ、カスタードパンですね?」

 「はい。正解です」

 かじった瞬間甘いカスタードが口の中に広がった。
 そしてふわふわな生地のおかげでそのカスタードが甘みがより際立っていた。

 「美味しいです。ほんとに!」

 私はまた一口、また一口とパンを食べていく。
 そしてあっという間にカスタードパンを平らげてしまった。

 「お師匠って、ほんと美味しそうに食べるよねー」

 「そ、そうかな?」

 「はい。作って良かったなと思いました」

 た、確かに食べるのは好きだけどそんなに美味しそうに食べてる?

 何だか恥ずかしくなってきた。

 「あ、アンくんは何食べてるの?」

 私は話を切り替えた。
 そしてアンくんの手に握られているパンを見つめる。

 「木の実ロールだよ。木の実が新鮮で凄く美味しい」

 「美味しそう! 私も食べようーっと!」

 早速私も木の実ロールを食べてみる。
 うん、アンくんの言った通り凄く美味しい。
 なによりボリューム、風味、食感のバランスが良かった。

 「エデンさん。まだまだありますから是非!」

 勧められてしまい私は断ることが出来ずにまたパンを一つ手に取る。
 今度は一口サイズのパン。
 これなら作業をしながら簡単に食べれそう。

 こうして私は次々に試作品のパンを食べ続けた。


 その夜…………



 「ぐっ……! お腹いっぱいで食べれないよー!!」

 目の前にある美味しそうな肉料理を前に私は泣き叫んでいた。
 今日は試作品のパンを食べ過ぎだせいでお腹いっぱいになってしまったのだ。
 そんな日に限ってメルさんからご飯に誘われ、しかも肉料理ときた。
 私は机に突っ伏す。


 「うぅ……パンを食べれたのはいいけどお肉も食べたーい……」

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

薄幸ヒロインが倍返しの指輪を手に入れました

佐崎咲
ファンタジー
義母と義妹に虐げられてきた伯爵家の長女スフィーナ。 ある日、亡くなった実母の遺品である指輪を見つけた。 それからというもの、義母にお茶をぶちまけられたら、今度は倍量のスープが義母に浴びせられる。 義妹に食事をとられると、義妹は強い空腹を感じ食べても満足できなくなる、というような倍返しが起きた。 指輪が入れられていた木箱には、実母が書いた紙きれが共に入っていた。 どうやら母は異世界から転移してきたものらしい。 異世界でも強く生きていけるようにと、女神の加護が宿った指輪を賜ったというのだ。 かくしてスフィーナは義母と義妹に意図せず倍返ししつつ、やがて母の死の真相と、父の長い間をかけた企みを知っていく。 (※黒幕については推理的な要素はありませんと小声で言っておきます)

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

偽りの婚姻

迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。 終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。 夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。 パーシヴァルは妻を探す。 妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。 だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。 婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……

華都のローズマリー

みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。 新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!

処理中です...