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竜の国 編
73 頼まれごとを果たしに
しおりを挟む私はリーネ様にある物を渡された。
それは竜騎士見習いが着る制服で、私はその服に着替えた。
白をベースとしたワンピースで、胸元には四つの黒いボタン。とてもシンプルなデザインで、なおかつ動きやすく肌触りが良い服だ。
「エデンさんの強さを見込んでのお願いです。頼まれていただけますか?」
協力すると言った以上断る気にもなれず私は頷いた。
一体これから何をするんだろう? 私は首を傾げることしか出来なかった。
そうして連れてこられたのはエルゼさんと会った竜の国の前に鬱蒼と生い茂る森の前だった。
「エデンさん、どうぞよろしくお願いします」
リーネ様が私に深々と頭を下げて言った。
一応作戦は聞いたので私がするべきことは分かったけど責任重大な役目すぎて私に務まるかどうか不安ではあるが取り敢えず今は任された役目を果たそう。
私は拳を握りしめ、指定の位置に着く。
そこは周りが全く見えず、ただただ薄気味の悪い森の奥だ。
あまり暗いところは好きじゃない。けど、少しの辛抱だと自分に言い聞かせ、私はリーネ様から渡された剣を鞘から抜き、素振りの稽古をしているふりを始めた。
そして数分が経った時だった。
「今日は女の竜人か!」
と突然後ろから足音と声が聞こえ、私は振り返る。
元々気配は感じていたけど気付かないふりをしていた。にしてもまさか本当にリーネ様の予想通りだった。
この竜騎士見習いの制服を渡された時、私はリーネ様が話していたことを思い出す。
『恐らく竜人達を連れ去ったのはコレクターもしくは奴隷商人だと思われます。頑丈で力自慢の竜人ですが、眠らせられたり奴隷紋を入れられてしまえば身動きは取れません。それにまだ経験不足の竜騎士見習い達ならば隙をついて魔法を掛けることも容易いでしょう。そこでエデンさんにお願いがあるのです。竜騎士見習いに扮装して敵を誘き寄せて欲しいのです。貴方の力を私はこの”目”で凡そ理解しています。これはシキやエルゼにもこの役目は務まりません。エデンさん、貴方にしか出来ないことなのです』
正直なところこれは巫女がするような仕事なの? と思った。
けど、相手が竜人を眠らせたり奴隷紋を入れられるというのは私のおでこにある失格紋と同じように魔法によって付けられるものだ。そのため、敵が魔法を使う相手だとしたら第一上級竜騎士のシキさんやエルゼさんでも勝てるかどうかま危ういらしい。何故なら竜人は短期でかつ単純な人が多いからだとリーネ様は言っていた。
「やっぱり竜人は馬鹿だなぁ。仲間が行方不明になっているのにも関わらずこうしてまた自らほいほいと来てくれるんだからねぇ」
スラリとした体型の男性は深くシルクハットを被りなおす。そしてニヤリと微笑んだ。
どうやらこの人が犯人で間違いないみたい。
「今回はどれぐらいの値で売れるかな~」
男性はそう言うと、大きく手を広げる。
すると次の瞬間、頭上に魔法陣が浮かび上がったかと思えば魔法陣から雪のようなものが降ってきた。けれどそれが眠り粉だと直ぐに私は気づいた。とは言っても今の私にはリリアから授かった精霊の加護があるから眠り粉は効かないのだ。
ケロリとする私にその男性も驚いたみたい。
深く被ったシルクハットのせいで表情までは見れなかったけど、明らかに動揺しているのが目に取れた。
「な、何なんだ……お前!?」
男性は怯えたような声でそう言うと、一歩後ろへと下がる。そして男性は走り出した。けど、勿論逃がすつもりはない。私はすぐ様男性の体を地面へと押さえ込んだ。
「頼む! い、命だけは!」
必死に踠く男性に私はため息混じりの言葉で言った。
「それは私にじゃなくてあの人に言ってください」
男性は顔を上げる。すると茂みの中からリーネ様とシキさん、エルゼさんにアンくん、ルカが出てきた。よほど予想外の事だったらしく男性は大きく目を見開いたまま口をポカーンと開け数分間固まっていた。
その間、リーネ様が”特別な力”で男性の目的などを引き出した。
そしてシキさんとエルゼさんが男性の身柄を拘束し、作戦は成功に終わった。
「まさか本当に人間が犯人だったとは……陛下の予想通りでしたね」
「安心するのはまだ早い。この付近にこいつの仲間がいる。隠れている場所も拠点も全て分かった。今から一気に制圧しに行こうと思うが、異論は?」
リーネ様の言葉に皆賛同し、リーネ様の支持に従い次々に竜人達を連れ去った人間のグループは捕らえていった。戦闘になった際は防御魔法を張ってサポートしたり、時には拳を
そして後に竜人達を連れ去っていたのは奴隷商人だと言うことが判明した。
美しい容姿を持ち、尚且つ力自慢の竜人を欲しがる人間は多いらしく、そのために竜人達は誘拐され、貴族などに売り飛ばされてしまっていたが第一上級竜騎士によって救出された。
竜の国では竜騎士見習い達の帰還に皆が喜び、そして涙を零した。
これから巫女のお披露目と竜騎士見習いの無事を祝うパーティが同時に行われることとなった。巫女の私は勿論パーティには参加しなければいけなかったので、メイドさん達から身だしなみを整えてもらい、ドレスに身を包んだ。あまり派手なのは避けたかったので一番無難な白いドレスを選んだけど、エルゼさんが隣で「とてもお似合いですよ!」と満面の笑みで褒めてきたので照れくさかった。
準備を終え、支度部屋から出るとそこにはアンくんとリーネ様、シキさんの姿があった。
「大変良くお似合いですよ」
リーネ様が私のドレス姿を見るなりそう褒めてくれた。
お世辞だと分かっていても気恥ずかしくて、思わず私は笑みをこぼせば、リーネ様が柔らかな笑みを浮かべて言った。
「エデンさん。改めて御礼を言わせてください。貴方にはあんな危険な役目を引き受けて下さり感謝しかないのです。エデンさん、貴方が竜の国へと来てくれた、そして国民を救ってくれた。感謝してもしきれないくらいです。本当にありがとうございます」
その会話のあと、直ぐにパーティは始まり竜の国の国民達が私の存在を受け入れてくれた。まさかこうも簡単に受け入れられるとは思っていなかったので拍子抜けしてしまいそうになった。そしてしばらくの間、私は竜の国に身を置くことに決めた。理由はアンくんやルカが竜の国についてもっと知って欲しい、と頼まれたからである。けれど、竜の国や竜人、それからドラゴンの事について知るには良い機会だと思えた。
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