女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人

文字の大きさ
6 / 33

4

しおりを挟む

 婚約破棄された事を、家族に伝えなければ……。

 そう考えながらプレセアは馬車に揺られる。しかし、家族の優しい笑顔を思い出すと胸が苦しくなった。
 誰よりもルイスとの関係を応援してくれた家族。きっと婚約破棄された事を告げれば、優しく声を掛け、励ましてくれる事だろう。
 しかし、プレセアにはそれが耐えられなかった。

 ルイスという最愛な人と出会わせてくれた両親。
 心から感謝したし、仲睦まじく、そして彼と幸福に満ち溢れた両親の様な夫婦になる事を夢見ていた。

 ……まぁ、そんな夢は突如吹き荒れた嵐によっね散った花のようになってしまった訳だが。

 両親が出会わせてくれた最愛の人。
 にも関わらず、自分の不甲斐なさから婚約破棄を告げられてしまった。

 __家に帰りたくない。
 __両親に見せる顔がない……

 だから馬車が止まった時、御者に声を掛けた。

「少し買い物をして帰る。直ぐに済むから護衛は要らない。直ぐに戻るから心配は要らないとお父様達には伝えておいて!」

「お、お嬢様!?」

 突然のプレセアの言動に御者は目を見張る。
 隙をつき、馬車から降りてすぐ様死角になる曲がり角へと身を潜めた。


 __困らせてごめんなさい。心配をかけてごめんなさい。けど、まだ家に帰りたくないの


 心の中で謝罪し、また帰ったら迷惑をかけてしまった事を謝ろう。


 特に行きたい場所は無い。
 ただ心を落ち着かせたくて飛び出しただけなのだから。

 ボーッとした頭と重い足取りで歩を進めていく。
 入れ違う人々は皆幸福に満ちた表情をしていて、まるで一人置いてけぼりな様な……そんな孤独感を感じる。

 広場までやって来れば、ベンチに腰を下ろし、濁りきった空を見上げた。
 風がそよそよと優しく吹けば、鼻先を雨の香りが過ぎ去って行く。
 かと思えば次の瞬間、ポツリと白い頬に一滴の雨粒が落ちてきた。そして雨粒は一滴、また一滴と頬を伝う。
 生憎雨具は持っていない。

 広場にいた人々が傘をさしたり、駆け足で去っていく中、プレセアだけはただ呆然と俯いていた。
 次第に雨は強くなり始める。
 このままではまた風邪を引いてしまうかもしれない。そう頭では分かっていても、身体が重くて動かない。だから服も髪も濡れ、皮膚に張り付くのも……全てを受け入れた。

 そんな時、視界に誰かの足元が映った。
 かと思えば、プレセアに降り注いでいた雨が姿を消した。否、雨が止んだ訳では無い。プレセアの場所にだけ雨が降らなくなったのだ。
 突然の事にプレセアは思わず顔を上げる。
 そうすれば、虚ろな灰色の瞳と目があった。


「こんな雨の中何してるの? 風邪ひくよ」


 雨が止んだ理由はどうやらこの青年のおかげだったらしい。


「具合悪い? 」


 膝を折り、今度は目線を合わせて尋ねられる。


「すみません。具合は悪くなくて……。ただ、少し考え事をしてたら雨が降ってきて……」

「そう……。取り敢えず、濡れたままじゃ風邪ぶり返しちゃうかも。付き人は……居ないみたいだし、お嬢様が一人でお出掛けなんて感心しないな」

「どうして風邪のこと…。しかも、お嬢様って」

「え? だって君、ルイスくんの婚約者のプレセアさんだよね?」


 青年の言葉にプレセアは目を瞬かせた。
 同時に、そう言えば……と思う。
 この青年、何処かで見覚えがあるのだ。


「は、はい。そうです。貴方は学校の先輩ですよね? 申し訳ありません。お名前は存じなくて……」

「寧ろ僕の名前知ってたら凄いから気にしないでいいよ。僕はリヒト。プレセアさんの言ってた通り、ルイスくんの同級生。因みに同じクラス。よろしくね」


 そう言って微笑むリヒト。
 以前会った時は白衣を身に付けていたのもあってか雰囲気が全然違う様に思えた。


「自己紹介も終わった事だし、移動しようか」

「い、移動ですか?」

「このままだと本当に風邪ぶり返すよ。そう言えば、ルイスくんの家ってこの近くだったよね。そこで……」

「い、嫌ですっ!」


 プレセアはハッとする。
 思わずリヒトの言葉を遮ってしまった。

 そして、そんなプレセアにリヒトもまた驚いていた。
 突然大きな声で遮られたのだから無理は無い。


「ごめんなさい。突然大きな声を出して……」


自然と拳に力が入る。
婚約破棄を告げられた後なのだ。
今ルイスの顔を見たら、我慢していた涙が溢れ出てしまう気がした。

そんなプレセアにリヒトは頭を悩ませた後、告げた。


「気にしてないから大丈夫。うーん、そうだなぁ……。じゃあ、取り敢えず僕のお家においでよ」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので

鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど? ――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」 自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。 ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。 ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、 「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。 むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが…… いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、 彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、 しまいには婚約が白紙になってしまって――!? けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。 自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、 さあ、思い切り自由に愛されましょう! ……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか? 自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、 “白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。

決めるのはあなた方ではない

篠月珪霞
恋愛
王命で決まった婚約者に、暴言を吐かれ続けて10年。 逃れられずに結婚したカメリアに、実はずっと愛していたと言われ。

旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?

白雲八鈴
恋愛
 我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。  離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?  あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。  私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?

初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。

梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。 王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。 第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。 常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。 ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。 みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。 そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。 しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。

誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢ミリーシャは、自身が誰からも必要とされていないことを悟った。 故に彼女は、家から出て行くことを決めた。新天地にて、ミリーシャは改めて人生をやり直そうと考えたのである。 しかし彼女の周囲の人々が、それを許さなかった。ミリーシャは気付いていなかったのだ。自身の存在の大きさを。

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

あなたの言うことが、すべて正しかったです

Mag_Mel
恋愛
「私に愛されるなどと勘違いしないでもらいたい。なにせ君は……そうだな。在庫処分間近の見切り品、というやつなのだから」  名ばかりの政略結婚の初夜、リディアは夫ナーシェン・トラヴィスにそう言い放たれた。しかも彼が愛しているのは、まだ十一歳の少女。彼女が成人する五年後には離縁するつもりだと、当然のように言い放たれる。  絶望と屈辱の中、病に倒れたことをきっかけにリディアは目を覚ます。放漫経営で傾いたトラヴィス商会の惨状を知り、持ち前の商才で立て直しに挑んだのだ。執事長ベネディクトの力を借りた彼女はやがて商会を支える柱となる。  そして、運命の五年後。  リディアに離縁を突きつけられたナーシェンは――かつて自らが吐いた「見切り品」という言葉に相応しい、哀れな姿となっていた。 *小説家になろうでも投稿中です

処理中です...