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予想外の方向へ
しおりを挟む「エ、エミル! ど、どうしたらいいんですか!?」
「私も困惑してますよ!!」
「貴方が私は恋愛マスターだから任せろと自信満々に言いましたよね!? なのに何故俺は今、ティアから婚約破棄を告げられ、ましてやエミルなんかと婚約させられそうになっているんですかっ!?」
「ちょ!? 私なんかとは何よっ!」
ティアの去った部屋では二人による言い争いが繰り広げられていた。
クラウスは先程よりも更に顔を真っ青にし、まるで世界が終わる寸前かの様な絶望に満ちた顔をしている。
しかし、こうして立ち尽くしていても意味は無い。
今からでもティアを追いかけよう。
そしていっその事、全て話そう。
そう決意し、クラウスが部屋を飛びどそうとするが…
「ちょっと待ってっ! あの、クラウス殿下。なぜ、この様な事になったのか。まずは整理しませんか? このままお姉ちゃんを追いかけた所で、誤解は絶対に解けないと思います」
「……エミルが賢いことを言うなんて。明日は大雪でしょうか?」
「左頬と右頬、どっか選べや」
「どれも嫌ですよ」
二人は何とか冷静さを取り戻した後、再び腰をソファーに下ろす。
そして、何故この様な予想外の展開になってしまったのか会議を始めた。
「まず、殿下。お姉ちゃんに何故私の事を殿下が好きだと、そう勘違いさせてしまったんですか?」
「俺はエミルの指示通り動いていたつもりだったんですが……」
「この恋愛マスターの指示で動いてこの結果とは言わせませんよ?」
眉間にシワを寄せ、圧を飛ばすエミル。
しかし、所詮自称恋愛マスターなエミルだ。
その指示が的確であったかは定かでは無い。
けれども、クラウスはそんな自称恋愛マスターのアドバイスを鵜呑みにしてしまっていた。自称恋愛マスターでも何でもいいから、どうしても相談に乗ってもらいたかったのだ。
クラウスは幼い頃から次期国王として努力してきた。
今は亡き母に告げられた言葉。
『周囲から認められる人間になりなさい』
この言葉を胸に、クラウスは周囲の人間から認められる存在になる為に努力を重ねていく訳だが、勿論、大きな壁に当たることも何度もあった。
悔しくて一人でこっそり泣くこともあった。
エミルに剣の勝負でぼろ負けして、一人でこっそりと涙を流していた時だった。
『殿下は殿下らしく、ありのままの自分で頑張れば良いんです。きっと亡くなられた女王陛下もそれを望んでおられますよ』
誰もがクラウスへと大きな期待を寄せ、皆、次期国王としてのクラウスとしてか接してはくれなかった。けれど、ティアだけは本来のクラウスを見てれたのだ。
それ以来、クラウスはティアを心の底から慕うようになったのだが……
「好きな子と近づく為の方法その一! 共通の話題! 正直、二人の共通の話題って私はあんまり思いつかなかったんですけど…一体どんな話をしていたんですか?」
「あ、はい。エミルの話をしていました」
「は?」
「エミルの話です」
「それはもう聞きました。え、それで他には…?」
「それだけですけど…」
「「「「「「ソレだよぉぉ!!!」」」」」」
エミルがソファーから突然立ち上がり、背を反らして叫んだ。
そのままブリッジが出来てしまいそうなくらいの反りに、傍に控えていたメイド達が顔を真っ青にしている。
そのまま床に頭をぶつけて、もう少し令嬢らしさを思い出して欲しいものだが、エミルはまた勢いよく反らした背中を元に戻すと、勢いよくテーブルに手を着いて、怒鳴るように言う。
「馬鹿なんですか!? いくら超絶可愛いお姉ちゃんの妹である私の名前でも、流石に婚約者の口から他の女の名前が出たら怒りますからねっ!?」
「た、確かに言われてみれば…! それはあまりにも残酷で愚かな行為ですね……」
「今まで殿下がやってきた事ですからね!? そんな引いた目で私を見るなっ!!」
漸く自分が行ってきた事の重大さに気づいたらしいクラウスに、エミルは頭を掻きむしる。せっかくセットされた髪はもうぐちゃぐちゃである。
「因みに他の話題とかしました?」
「…その、ティアと話すと緊張してエミルの話しか出ないんですよね。共通の話題ですし?」
「あの、殿下。私には緊張しないんですか? 自分で言うのもアレですけど、私かなり可愛い方ですし、お姉ちゃん似ですよ?」
「無いですね。あ、それと俺はティア以外興味無いので」
「あっそ」
何故か振られたかのような自分に、エミルは素っ気なく答える。
しかし、ここまでクラウスが空回りしているとは思ってもいなかったし、何より姉がそんなクラウスの想いに気付いていないのも驚きだった。
(殿下、かなり分かりやすいと思うんだけどなぁ…)
クラウスはティア以外には決してあんなに穏やかな瞳を向けない。そして、何より愛おしくて堪らない…そんな表情もである。
一方その頃ティアはと言うと……
「あ、久しぶり。元気にしてた? ティア」
「……メアリー殿下!?」
クラウスの弟である第二王子のメアリーがティアの元へと訪れていた。
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