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四話 謎謎謎
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午後六時
精密検査の結果もこれといって特に問題も発見されなく、母さんたちは安心した。
しかし担当医からは様子見の為にも入院を強く勧められたが、その提案を俺は頑なに断り母さんの反対を押し切って自宅に帰ることを決断させる。
自宅までのタクシーの中で亜香里の事について改めて尋ねてみたが母さんは知らぬ存ぜぬといった感じで全く理解できない状況が続く。
「早く家に……」
一刻も家に帰りたかった理由、それはこの目で確かめないと気が落ち着かない。
「おいなんだよこれ嘘だろ!?」
漸くタクシーは自宅前へと近づくが、車内の窓から見えた光景は衝撃的なものだった。
本来亜香里の家が建てられている場所が空き地と化していてまっ皿な土地へと変貌を遂げていた。
「隣って元から空き地だったっけ?」
「うんそうだよ」
唯の発言は、俺にとって全く身に覚えが無かったがこれ以上二人を心配させまいとこれ以上深く追求することは控え、何もない土地を見ながら家の中へと入った。
「母さん、俺部屋に居るから何かあったら呼んでね」
「えぇ夕御飯が出来たら呼ぶわね」
一日しか経ってないはずの部屋が、何故か全く違って見える。
不思議な感覚に囚われつつ、棚に並べてあるアルバムに手をかけた。
「これにも、あれにも無い。どうして?」
片っ端から開いて中身を確認しては、足元に放り投げ次のを手に取りの繰り返しだ。
というのも自室の棚にあるアルバムの中には幼少期から撮られた数多くの写真が収められており、その中には亜香里と一緒に写った写真も収められてあるはずだった。
しかしいくら探してみても亜香里が写っている写真は一枚として無かった。
そこに母さんが電話機の子機を持って部屋を訪ねてくる。
「岩沼君から電話だよ」
「哲平から?」
「何かあきらに大事な話がある風だったよ」
母さんは子機を俺に手渡すと、部屋に散乱するアルバムを一瞥し部屋から出て階段を降りる音がする。
「もしもし哲平どうしたんだ?」
「やぁ元気そうで良かった。病院で一度唯ちゃんと出くわしたときはあきら君の容態が芳しくないって聞いていたから心配していたんだよね」
「何か心配かけたみたいで悪いな。俺はこの通り元気にしてるよって電話越しじゃ分からないか」
「まっその感じなら大丈夫そうだね。ところであきら君、君は校舎から出た後のことで何か覚えてる事ってある?」
「それが余り覚えてないんだ。ただ必死に校舎から離れようとしたことは覚えてるんだけどそれ以上は思い出せないんだ」
「そうか、分かったよ。変な質問してごめん気にしないで」
「なぁ哲平、お前は亜香里の事覚えているよな。頼む答えてくれ?」
「亜香里……?やばい見つかった、ごめんもう切るね」
切羽詰まったような声でそう言い残すと電話は一方的に切られてしまった。
「何をしているんだ彼奴は?」
哲平が今何をしているのか気になるところではあったが、もう一度電話を掛け哲平に亜香里の事についてもっと深く聞こうとすることは諦めざる終えなかった。
哲平との電話が済んだ後、電話で中断された作業に戻る。
「ちくしょ~何がどうなってるんだ」
だが結局アルバム全てを見てもそのどこにも、彼女が写っている写真は一枚として存在しなかった。
食事をする気など一切湧かなかったが、母さんに促され夕食を食べていた。
テレビでは彗星落下についての特番放送が放映されていて、丁度昼間に撮影したと思われる大宮高校校門前の画像に切り替わり野次馬の一人にインタビューしている場面が今テレビに映し出されている。
「凄く大勢の人が来ているのね。そうだあきら、学校のことなんだけどまだ立ち入り禁止が解除されないらしくしばらく学校の方はお休みになるそうよ」
「了解、ご飯も食べ終えたし部屋に戻るよ」
これ以上母さんを心配させたくなくいつも通りの振る舞いを心掛ける事にして食事を済ますと席を立つ。
部屋に戻ると部屋に置きっ放しにしていた子機を使い権ちゃんの携帯に電話を掛けることにした。
「夜分遅く済まない。権ちゃん起きてるか?」
「おぉどうしたあきら?」
電話に出たの、天文部の部長であり頼りなる存在彼の落ち着いた声が電話の向こうから聞こえてきた。
「会って話したいことがあるんだが、明日会えるか?」
「丁度良かった、俺もそう考えていたところだったんだ。それでさっきまで恭子ちゃんと話したんだけど、明日の午後二時過ぎに恭子ちゃん家に集まろうってことになったから空けとけよ」
「分かった」
「おいあきらもし悩んでいることがあるんなら相談しろ友達なんだからよ」
「ありがとう権ちゃん」
俺は権ちゃんと話し終えるとベランダの窓を開け外に足を踏み出す。
そこから見る空の景色は昨日見た空と何一つ変わっていなかったはずなのにいつもそこにあったはずの白石家がないだけで全く違う景色のようだった。
白石家が無いだけで、夜空の景色が変わることなど無いはずなのに……。
岩沼哲平は一人学校に隣接する竹林を、夜の暗さの中物音を立てず、静かに歩く。
勿論竹林の手前にも警備をしている人はいたのだが監視の目を何とかくぐり抜け忍び込んでいたのだ。
それというのも中の様子取り分け彗星が落下したとされる校庭の状況が知りたくて一度学校内に入ろうと試みたのだが正面突破は不可能だと先程痛感させられた。
「あの警備員、中に入れさせてくれても良いのに。一方的に駄目って言うなんて」
そこで学校と竹林を隔てている高い金網フェンスからなら校庭の様子を窺い知れると思っての行動で今に至っている。
哲平は目的のフェンス前まで来たが落下地点を中心にドーム型に布のような何かで覆われていて中の様子は分からず途方に暮れていた。
ここまで都合良く上手くいき、順調に行った油断から林の中であきら君に電話を掛けてしまった。
「おい貴様そこで何をしている!」
「やばい見つかった、ごめんもう切るね」
その現場を警備員に見つかり捕まらないよう必死に逃げる。
足場なんか気にせず走り、かすり傷があちこちに入っていく。
竹林を抜け歩道へと飛び出たが、体力が底を尽きかけ警備員はまだ追ってこようとして距離も段々詰み始めこのままでは逃げ切れられないと諦めそうになってしまったその時だった。
こちらに近づく光を目にした。
「おい坊主、早く車に乗り込め」
「え、えっと……」
「いいから早く。このままでは奴等に捕まるぞ」
一台のワゴン車が目の前に止まりその車の助手席の扉が勢いよく開き、老人が手招きしてきた。
そのワゴン車の運転手の老人を哲平は知らなかったがここでは捕まりたくないという強い想いが、哲平の身体を後押しして見知らぬ老人が運転するワゴン車への中へと誘なわれた。
哲平がワゴン車の中に入ると車は発進し追いかけていた警備員を見事振り切って、道路を突き進んでいく。
「ありがとうございますおじさん」
無事に逃げ切れたことへの安心感、それに伴い疲れきった身体を休めるようにゆっくりと呼吸を整えていく。
万全とはいかないが、落ち着きを取り戻して始めて助けてくれた老人に哲平は感謝の言葉を述べた。
「そんな礼は要らないぞ岩沼哲平君」
運転に集中していた老人が前方を見たまま、後部座席に座る哲平に聞こえる大きさで名前を口にし、自分の正体を知っている老人への警戒を最大限に強め構える。
「すまんそう警戒しないくれ、別に怪しい者ではないぞ。わしの名前は阿笠輝雄恐らく君が追い求めている謎と同じ謎を追い求めている科学者だ」
依然として警戒心を緩めるつもりは毛頭ないがその言葉を聞いて哲平は少し謎のおじさんへの意識を少しだけ改め質問した。
「なぜ僕の名前をご存じなのですか?」
昼間の柿さんの話では報道各社への情報規制を行っていて世間には知られていないとの事だったからだ。
それが最も哲平が、この老人を警戒する一番の要因なわけだが。
「伝手を頼りにしただけじゃよ」
「伝手?」
「そんなことはどうでもよい。お主、知りたいことがあるからこそ、あの場に居たのじゃろ」
それは確信をついた発言だった。
「君の知りたいことを多分教えてあげられるはずじゃ。まぁわしの家まで来ればだがな、それが嫌ならここで降ろすが君はどうする哲平君」
「行かせてください。僕にはどうしても知りたいことがあるんです」
精密検査の結果もこれといって特に問題も発見されなく、母さんたちは安心した。
しかし担当医からは様子見の為にも入院を強く勧められたが、その提案を俺は頑なに断り母さんの反対を押し切って自宅に帰ることを決断させる。
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「早く家に……」
一刻も家に帰りたかった理由、それはこの目で確かめないと気が落ち着かない。
「おいなんだよこれ嘘だろ!?」
漸くタクシーは自宅前へと近づくが、車内の窓から見えた光景は衝撃的なものだった。
本来亜香里の家が建てられている場所が空き地と化していてまっ皿な土地へと変貌を遂げていた。
「隣って元から空き地だったっけ?」
「うんそうだよ」
唯の発言は、俺にとって全く身に覚えが無かったがこれ以上二人を心配させまいとこれ以上深く追求することは控え、何もない土地を見ながら家の中へと入った。
「母さん、俺部屋に居るから何かあったら呼んでね」
「えぇ夕御飯が出来たら呼ぶわね」
一日しか経ってないはずの部屋が、何故か全く違って見える。
不思議な感覚に囚われつつ、棚に並べてあるアルバムに手をかけた。
「これにも、あれにも無い。どうして?」
片っ端から開いて中身を確認しては、足元に放り投げ次のを手に取りの繰り返しだ。
というのも自室の棚にあるアルバムの中には幼少期から撮られた数多くの写真が収められており、その中には亜香里と一緒に写った写真も収められてあるはずだった。
しかしいくら探してみても亜香里が写っている写真は一枚として無かった。
そこに母さんが電話機の子機を持って部屋を訪ねてくる。
「岩沼君から電話だよ」
「哲平から?」
「何かあきらに大事な話がある風だったよ」
母さんは子機を俺に手渡すと、部屋に散乱するアルバムを一瞥し部屋から出て階段を降りる音がする。
「もしもし哲平どうしたんだ?」
「やぁ元気そうで良かった。病院で一度唯ちゃんと出くわしたときはあきら君の容態が芳しくないって聞いていたから心配していたんだよね」
「何か心配かけたみたいで悪いな。俺はこの通り元気にしてるよって電話越しじゃ分からないか」
「まっその感じなら大丈夫そうだね。ところであきら君、君は校舎から出た後のことで何か覚えてる事ってある?」
「それが余り覚えてないんだ。ただ必死に校舎から離れようとしたことは覚えてるんだけどそれ以上は思い出せないんだ」
「そうか、分かったよ。変な質問してごめん気にしないで」
「なぁ哲平、お前は亜香里の事覚えているよな。頼む答えてくれ?」
「亜香里……?やばい見つかった、ごめんもう切るね」
切羽詰まったような声でそう言い残すと電話は一方的に切られてしまった。
「何をしているんだ彼奴は?」
哲平が今何をしているのか気になるところではあったが、もう一度電話を掛け哲平に亜香里の事についてもっと深く聞こうとすることは諦めざる終えなかった。
哲平との電話が済んだ後、電話で中断された作業に戻る。
「ちくしょ~何がどうなってるんだ」
だが結局アルバム全てを見てもそのどこにも、彼女が写っている写真は一枚として存在しなかった。
食事をする気など一切湧かなかったが、母さんに促され夕食を食べていた。
テレビでは彗星落下についての特番放送が放映されていて、丁度昼間に撮影したと思われる大宮高校校門前の画像に切り替わり野次馬の一人にインタビューしている場面が今テレビに映し出されている。
「凄く大勢の人が来ているのね。そうだあきら、学校のことなんだけどまだ立ち入り禁止が解除されないらしくしばらく学校の方はお休みになるそうよ」
「了解、ご飯も食べ終えたし部屋に戻るよ」
これ以上母さんを心配させたくなくいつも通りの振る舞いを心掛ける事にして食事を済ますと席を立つ。
部屋に戻ると部屋に置きっ放しにしていた子機を使い権ちゃんの携帯に電話を掛けることにした。
「夜分遅く済まない。権ちゃん起きてるか?」
「おぉどうしたあきら?」
電話に出たの、天文部の部長であり頼りなる存在彼の落ち着いた声が電話の向こうから聞こえてきた。
「会って話したいことがあるんだが、明日会えるか?」
「丁度良かった、俺もそう考えていたところだったんだ。それでさっきまで恭子ちゃんと話したんだけど、明日の午後二時過ぎに恭子ちゃん家に集まろうってことになったから空けとけよ」
「分かった」
「おいあきらもし悩んでいることがあるんなら相談しろ友達なんだからよ」
「ありがとう権ちゃん」
俺は権ちゃんと話し終えるとベランダの窓を開け外に足を踏み出す。
そこから見る空の景色は昨日見た空と何一つ変わっていなかったはずなのにいつもそこにあったはずの白石家がないだけで全く違う景色のようだった。
白石家が無いだけで、夜空の景色が変わることなど無いはずなのに……。
岩沼哲平は一人学校に隣接する竹林を、夜の暗さの中物音を立てず、静かに歩く。
勿論竹林の手前にも警備をしている人はいたのだが監視の目を何とかくぐり抜け忍び込んでいたのだ。
それというのも中の様子取り分け彗星が落下したとされる校庭の状況が知りたくて一度学校内に入ろうと試みたのだが正面突破は不可能だと先程痛感させられた。
「あの警備員、中に入れさせてくれても良いのに。一方的に駄目って言うなんて」
そこで学校と竹林を隔てている高い金網フェンスからなら校庭の様子を窺い知れると思っての行動で今に至っている。
哲平は目的のフェンス前まで来たが落下地点を中心にドーム型に布のような何かで覆われていて中の様子は分からず途方に暮れていた。
ここまで都合良く上手くいき、順調に行った油断から林の中であきら君に電話を掛けてしまった。
「おい貴様そこで何をしている!」
「やばい見つかった、ごめんもう切るね」
その現場を警備員に見つかり捕まらないよう必死に逃げる。
足場なんか気にせず走り、かすり傷があちこちに入っていく。
竹林を抜け歩道へと飛び出たが、体力が底を尽きかけ警備員はまだ追ってこようとして距離も段々詰み始めこのままでは逃げ切れられないと諦めそうになってしまったその時だった。
こちらに近づく光を目にした。
「おい坊主、早く車に乗り込め」
「え、えっと……」
「いいから早く。このままでは奴等に捕まるぞ」
一台のワゴン車が目の前に止まりその車の助手席の扉が勢いよく開き、老人が手招きしてきた。
そのワゴン車の運転手の老人を哲平は知らなかったがここでは捕まりたくないという強い想いが、哲平の身体を後押しして見知らぬ老人が運転するワゴン車への中へと誘なわれた。
哲平がワゴン車の中に入ると車は発進し追いかけていた警備員を見事振り切って、道路を突き進んでいく。
「ありがとうございますおじさん」
無事に逃げ切れたことへの安心感、それに伴い疲れきった身体を休めるようにゆっくりと呼吸を整えていく。
万全とはいかないが、落ち着きを取り戻して始めて助けてくれた老人に哲平は感謝の言葉を述べた。
「そんな礼は要らないぞ岩沼哲平君」
運転に集中していた老人が前方を見たまま、後部座席に座る哲平に聞こえる大きさで名前を口にし、自分の正体を知っている老人への警戒を最大限に強め構える。
「すまんそう警戒しないくれ、別に怪しい者ではないぞ。わしの名前は阿笠輝雄恐らく君が追い求めている謎と同じ謎を追い求めている科学者だ」
依然として警戒心を緩めるつもりは毛頭ないがその言葉を聞いて哲平は少し謎のおじさんへの意識を少しだけ改め質問した。
「なぜ僕の名前をご存じなのですか?」
昼間の柿さんの話では報道各社への情報規制を行っていて世間には知られていないとの事だったからだ。
それが最も哲平が、この老人を警戒する一番の要因なわけだが。
「伝手を頼りにしただけじゃよ」
「伝手?」
「そんなことはどうでもよい。お主、知りたいことがあるからこそ、あの場に居たのじゃろ」
それは確信をついた発言だった。
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