ラブミーノイジー

せんりお

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朝、食欲をそそるいい匂いがして目が覚めた。居間をのぞくとそこにはキッチンに立つ三咲の姿があった。俺に気づくと微笑んで「おはよう」と言ってくれる。
口パクでおはようと返しながら俺は三咲に近づいた。手元をのぞきこむと手際よくトマトを切っている。同時平行のフライパンにはオムレツ。皿には既に焼けたウインナーが乗っている。

「早くに目が覚めちゃったから朝から下の購買に行って食材買ってきたんだ。木南の分もあるけど食べる?」

断るわけがない。ぶんぶんと勢いよく頷くと三咲が笑った。

「もうちょっとで出来るから顔洗って着替えてきたら?」

三咲に促されて朝の支度をする。
居間に戻ると、テーブルにこんがり焼かれた上にバターまで塗られてある食パンと湯気をたてるコーンスープが準備されていた。

「出来たよー。食べよう?」

サラダの入ったガラスの器をことりとテーブルに置いて微笑む三咲はまさしく母親だった。
いただきます、と手を合わせてからスプーンを手に取る。コーンスープをゆっくりとすすれば、ふわりと優しい甘味が口の中に広がった。オムレツにフォークを刺せばとろとろと絶妙に半熟の中身が溢れだす。ウインナーはぱりっぱりだし、トーストは最高の焼き加減で外はカリカリ中はふわふわ。お店のような出来映えの料理に、口に運ぶ手が止まらない。

『三咲お前凄すぎ!すっげえ美味しい!』

「ほんと?嬉しいなぁ。朝ごはんは毎日作ろうと思ってるんだけど木南の分もいる?」

『負担じゃないならぜひ作って欲しいです』

「じゃあそうするね」

『ほんとにいいのか?』

「うん。料理は趣味みたいなものだし、食べてくれる人がいるほうが作りがいがあるしね」

この圧倒的人間力。三咲が輝いて見える。
料理が出来ない俺は毎日2食分無料の権利を使って食堂で食べるつもりだったけど、1食分はどうしようかと本気で悩んでいたところだった。三咲が作ってくれるなら本気でありがたいし、加えて三咲の料理はお金を払ってもいいというくらい美味しい。俺としては飛びつく以外の選択肢がない申し出だった。

『ほんとにありがとう。お願いします』

「あはっ、はい。頼まれました」

『作ってくれる代わりに食材費は全部出す』

「え、そんなのいいよ!どうせ俺の朝ごはんは作るんだし」

『そうは言っても』

せめて食材費だけでも出させてくれ。譲らない俺の表情を見て三咲がうーんと唸る。

「…あ、じゃあこうしよう!購買は個人カードキーを使って買い物出来るんだけど、1週間交代でそれぞれのカードを使う。それじゃだめ?」

だめ、と言いたいところだが三咲もこれ以上は譲ってくれないだろう。ここが落とし所か。
しぶしぶ頷くと三咲が「決まり!」と言って牛乳が入ったコップを差し出してくる。俺も同じように自分のコップを差し出すとコンと軽く音を立ててぶつけられた。乾杯の形だ。おかしくてふっと唇を緩めた。


朝食後、二人分の食器を洗う。ここでもまた一悶着あったけど、料理を作ってくれるお礼だからとここは俺が譲らず、毎朝の皿洗いは俺の仕事となった。もめている最中「だって不器用でしょ!」と言われたのが納得できない。いくら不器用でも皿洗いくらいはちゃんと出来る。…はずだ。



昼過ぎ、俺は寮監室に向かった。届いているだろう荷物を受け取りに行くためだ。三咲も一緒についてきてくれた。
寮監室にいるのは管理人だけど寮監は生徒がやっているらしい。管理人さんは穏やかそうなおじいちゃんだ。管理人さんから大きな段ボール箱2つを受けとる。中身が服や日用品のほうはいいけれど、もう1つは俺の趣味である本が詰まっていて重いので台車を借りた。重い台車を俺が押して、服のほうを三咲に持ってもらった。

「二箱だけ?」

ガムテープを剥がしながら三咲が聞いてくるのに頷く。

「え、それで全部入ったの?」

『余裕で入った。必要最低限のものと本だけだし』

なんなら服も学園では制服だから普段着もそんなにいらない。スウェットとちょっとした外出着だけでいい。
読書は俺の趣味だから本だけは厳選して持ってきた。新学期が始まったら図書室に行きたい。これだけ金持ちの学校なら本も充実しているだろう。期待が高まる。

「ふーん、本そんなに好きなんだね。今度おすすめ教えて?俺も読書嫌いじゃないし」

本に興味を持ってもらえるのは嬉しい。笑顔で首を縦に振った。

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