6 / 44
6
しおりを挟む
その内教師がやってきて、オリエンテーションが始まった。俺の担任はロマンスグレーのおじいちゃん先生だ。穏やかで紳士的な雰囲気が嫌な印象を与えない。話し方は柔らかいけど隙がない。自然と背筋が伸びる感じ。この紺野という担任はとても好感が持てる。
オリエンテーションが終わると今度は自己紹介。順番に立ち上がって挨拶していく。
「木島翔太。好きなのは音楽すること。よろしく」
前の席の抹茶くんは木島翔太と言うらしい。低めの少し掠れたようなハスキーボイス。しかし、ぼそぼそ喋るのではなくその通る声で、必要なことだけを簡潔に言う態度は嫌いじゃない。
木島くんが終わったら俺の番だ。スマホで文字を入力し、それを音声出力して対応すると教室がざわついた。俺の声が出ないということに驚いているのだろう。同情や好奇の視線が突き刺さるのを綺麗に無視して座る。こんな視線、気にしてたらきりがない。
今日は自己紹介だけで終わりらしい。
解散を告げられて、すぐに教室から出ようとすると「きーなみー」と俺を呼ぶ声が聞こえた。教室の外から三咲が俺を呼んでいた。あっちのほうが早く終わったらしい。
男子にしては低めの身長で、人波に埋もれないようにぴょこぴょこ跳ねて俺を見つけようとしているのに思わず笑う。
『ごめん、待った?ありがとな』
「ううん、大丈夫!お昼食べに食堂行くでしょ?一緒に行こ!」
頷いて、三咲と連れだって食堂に向かう。
「体調大丈夫だった?」
『もう大丈夫。ありがと』
三咲が顔を覗き込みながら聞いてくれるのに苦笑する。微量のグレアに当てられたのが原因だから、それがなくなれば具合はよくなる。多少のだるさは感じるけど、何の問題もない。顔色も戻ったはずだ。
食堂はものすごい人数で混みあっていた。ちょうど昼ごはんの時間だから仕方がないがそれにしてもすごい人だ。これでも購買と人が分散しているはずなんだけどな。
みんな自炊しないのか?いや、俺は人のことまったく言えないけど。
運よく目の前で席が空いてさっさと座る。早く食べて早く出よう。三咲は今日は味噌ラーメンにするらしい。俺はきつねうどんにした。一応体調のことを考えた結果だ。最初はカレーを頼もうと思ったけれど三咲に「あんなに気分悪そうだったのにそんな刺激物食べちゃだめ!」と全力で止められたせいだ。心配性だなと思ったけど心配してくれるのは嬉しかったので素直に従った。
担任やクラスのことを話しながら麺を啜っていると、急に辺りが騒がしくなった。
顔をあげるとみんなある一点を見ている。
何があるのか訪ねようと三咲を見る。すると三咲もそちらのほうを見ていた。
「木南、ほら!あれ風紀委員長!」
は、風紀委員長?人の視線が集まるほうをよく見てみると確かに人波の向こうに長身が見えた。…いや見えるけどそれがなんなんだ?
「かっこいいよねー憧れる」
うっとりとした顔で三咲が言う。
確かにとんでもないレベルのイケメンだ。切れ長の目にすっと通った鼻筋、薄い唇。綺麗と言い表すのがしっくりきすぎる。でもだからと言って中性的な訳ではなく、男っぽい色気がある。硬派な黒髪だけど少し遊ばせた髪先が硬すぎずいい感じ。
いや、イケメンなのは分かったけどだからそれがなんなんだよ!
そう打ち込んで見せると三咲が、あぁという顔をした。
「あのね、うちの学園の役職持ちってもちろん能力が高いのは前提で、その上なぜか顔がいいの。だから何て言うか…アイドル的存在?になっちゃってるんだよね 」
『役職持ちって生徒会とかのことか?』
「そ。生徒会と風紀委員がツートップ。後はそれぞれの委員会の委員長とかね」
なるほど何となくはわかった。もう一度ちらっと視線を移してみる。風紀委員長は友達だろう人と談笑している。そこには常に多くの視線が集まっていた。でもそんな視線に慣れているのか気にする様子もなく食事を続けている。いくら能力が高くても、イケメンでも、常に衆人環視の状況なんて俺はごめんだな。
半ば同情の気持ちを込めて、そっと視線を外そうとすると風紀委員長がふいに目を上げた。その直線上にいた俺と一瞬視線が絡んで俺はさっと目をそらした。
敏感なSubは目を合わすだけで相手のダイナミクスがわかることもある。敏感の部類に入る俺もおかげで分かってしまった。まあそれ以外にはないと思っていたけれど。
あの人もDomだ。
Domなんて関わるとろくなことがないんだ。
もう絶対にそちらを向かないようにして俺は汁を吸って柔らかくなった麺をすすった。
オリエンテーションが終わると今度は自己紹介。順番に立ち上がって挨拶していく。
「木島翔太。好きなのは音楽すること。よろしく」
前の席の抹茶くんは木島翔太と言うらしい。低めの少し掠れたようなハスキーボイス。しかし、ぼそぼそ喋るのではなくその通る声で、必要なことだけを簡潔に言う態度は嫌いじゃない。
木島くんが終わったら俺の番だ。スマホで文字を入力し、それを音声出力して対応すると教室がざわついた。俺の声が出ないということに驚いているのだろう。同情や好奇の視線が突き刺さるのを綺麗に無視して座る。こんな視線、気にしてたらきりがない。
今日は自己紹介だけで終わりらしい。
解散を告げられて、すぐに教室から出ようとすると「きーなみー」と俺を呼ぶ声が聞こえた。教室の外から三咲が俺を呼んでいた。あっちのほうが早く終わったらしい。
男子にしては低めの身長で、人波に埋もれないようにぴょこぴょこ跳ねて俺を見つけようとしているのに思わず笑う。
『ごめん、待った?ありがとな』
「ううん、大丈夫!お昼食べに食堂行くでしょ?一緒に行こ!」
頷いて、三咲と連れだって食堂に向かう。
「体調大丈夫だった?」
『もう大丈夫。ありがと』
三咲が顔を覗き込みながら聞いてくれるのに苦笑する。微量のグレアに当てられたのが原因だから、それがなくなれば具合はよくなる。多少のだるさは感じるけど、何の問題もない。顔色も戻ったはずだ。
食堂はものすごい人数で混みあっていた。ちょうど昼ごはんの時間だから仕方がないがそれにしてもすごい人だ。これでも購買と人が分散しているはずなんだけどな。
みんな自炊しないのか?いや、俺は人のことまったく言えないけど。
運よく目の前で席が空いてさっさと座る。早く食べて早く出よう。三咲は今日は味噌ラーメンにするらしい。俺はきつねうどんにした。一応体調のことを考えた結果だ。最初はカレーを頼もうと思ったけれど三咲に「あんなに気分悪そうだったのにそんな刺激物食べちゃだめ!」と全力で止められたせいだ。心配性だなと思ったけど心配してくれるのは嬉しかったので素直に従った。
担任やクラスのことを話しながら麺を啜っていると、急に辺りが騒がしくなった。
顔をあげるとみんなある一点を見ている。
何があるのか訪ねようと三咲を見る。すると三咲もそちらのほうを見ていた。
「木南、ほら!あれ風紀委員長!」
は、風紀委員長?人の視線が集まるほうをよく見てみると確かに人波の向こうに長身が見えた。…いや見えるけどそれがなんなんだ?
「かっこいいよねー憧れる」
うっとりとした顔で三咲が言う。
確かにとんでもないレベルのイケメンだ。切れ長の目にすっと通った鼻筋、薄い唇。綺麗と言い表すのがしっくりきすぎる。でもだからと言って中性的な訳ではなく、男っぽい色気がある。硬派な黒髪だけど少し遊ばせた髪先が硬すぎずいい感じ。
いや、イケメンなのは分かったけどだからそれがなんなんだよ!
そう打ち込んで見せると三咲が、あぁという顔をした。
「あのね、うちの学園の役職持ちってもちろん能力が高いのは前提で、その上なぜか顔がいいの。だから何て言うか…アイドル的存在?になっちゃってるんだよね 」
『役職持ちって生徒会とかのことか?』
「そ。生徒会と風紀委員がツートップ。後はそれぞれの委員会の委員長とかね」
なるほど何となくはわかった。もう一度ちらっと視線を移してみる。風紀委員長は友達だろう人と談笑している。そこには常に多くの視線が集まっていた。でもそんな視線に慣れているのか気にする様子もなく食事を続けている。いくら能力が高くても、イケメンでも、常に衆人環視の状況なんて俺はごめんだな。
半ば同情の気持ちを込めて、そっと視線を外そうとすると風紀委員長がふいに目を上げた。その直線上にいた俺と一瞬視線が絡んで俺はさっと目をそらした。
敏感なSubは目を合わすだけで相手のダイナミクスがわかることもある。敏感の部類に入る俺もおかげで分かってしまった。まあそれ以外にはないと思っていたけれど。
あの人もDomだ。
Domなんて関わるとろくなことがないんだ。
もう絶対にそちらを向かないようにして俺は汁を吸って柔らかくなった麺をすすった。
26
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
待てって言われたから…
ゆあ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。
//今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて…
がっつり小スカです。
投稿不定期です🙇表紙は自筆です。
華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)
世界で一番優しいKNEELをあなたに
珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。
Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。
抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。
しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。
※Dom/Subユニバース独自設定有り
※やんわりモブレ有り
※Usual✕Sub
※ダイナミクスの変異あり
隠れSubは大好きなDomに跪きたい
みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。
更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
愛されSubは尽くしたい
リミル
BL
【Dom/Subユニバース】
玩具メーカーの取締役開発部長Dom(37)×元子役の大学生Sub(20)
かつて天才子役として名を馳せていた天使 汐は、収録中にSub drop(サブドロップ)に陥り、生死の境をさまよう。
不安定になっていた汐を救ったのは、スーツ姿の男だった。
素性や名前も知らない。でも、優しく撫でて「いい子」だと言ってくれた記憶は残っている。
父親の紹介で、自身の欲求を満たしてくれるDomを頼るものの、誰も彼も汐をひたすらに甘やかしてくる。こんなにも尽くしたい気持ちがあるのに。
ある夜、通っているサロンで不正にCommand(コマンド)を使われ、心身ともにダメージを負った汐を助けたのは、年上の男だ。
それは偶然にも15年前、瀕死の汐を救った相手──深見 誠吾だった。
運命的な出会いに、「恋人にもパートナーにもなって欲しい」と求めるも、深見にきっぱりと断られてしまい──!?
一筋縄ではいかない17才差の、再会から始まるラブ!
Illust » 41x様
不透明な君と。
pAp1Ko
BL
Dom/Subユニバースのお話。
Dom(美人、細い、色素薄め、一人称:僕、168cm)
柚岡璃華(ユズオカ リカ)
×
Sub(細マッチョ、眼鏡、口悪い、一人称:俺、180cm)
暈來希(ヒカサ ライキ)
Subと診断されたがランクが高すぎて誰のcommandも効かず、周りからはNeutralまたは見た目からDomだと思われていた暈來希。
小柄で美人な容姿、色素の薄い外見からSubだと思われやすい高ランクのDom、柚岡璃華。
この二人が出会いパートナーになるまでのお話。
完結済み、5日間に分けて投稿。
【完結】君の声しか聴こえない
二久アカミ
BL
伊山理央(24)はネット配信などを主にしている音楽配信コンポーザー。
引きこもりがちな理央だが、ある日、頼まれたライブにギタリストとして出演した後、トラブルに巻き込まれ、気づけばラブホテルで男と二人で眠っていた。
一緒にいた男は人気バンドAVのボーカル安達朋也。二人はとあることからその後も交流を持ち、お互いの音楽性と人間性、そしてDom/subという第二の性で惹かれ合い、次第に距離を詰めていく……。
引きこもりコンプレックス持ちで人に接するのが苦手な天才が、自分とは全く別の光のような存在とともに自分を認めていくBLです。
※2022年6月 Kindleに移行しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる