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38 マッチョ猫
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そうと決まれば行動は早い方がいい。
シグさんの次の休みに魔の森に向かうことを決めた。
それまでは準備期間。魔獣と出会っても少しは対処出来るように魔法を鍛えたい、と言うとシグさんのスパルタ修行が始まった。
『ちょ、ちょっと待って』
ぜいぜいしている私とはうって変わって涼しい顔をしているシグさん。爽やかさが憎らしい。
「そのくらいでバテてどうする。魔獣は一体だけとは限らないんだぞ」
『うぅー、わかってるよ!』
わかってるけど体がついていかないの!魔法を使うのは思っていたより体力の消費が激しい。元の世界のイメージだと魔法使いってひょろっとした頭脳派のイメージで、筋肉や体力はいらない職業だったはずなのに… 現実は厳しい。魔法を発動するのには集中力に加えて、その衝撃に耐えうる体が必要らしい。高度な魔法になればなるほど必要な能力もすべて上がるらしく、次々にレベルを上げていく修行のせいで最近の私はずっと全身筋肉痛だ。
どうしよう、このままだと筋肉ムキムキになる。マッチョな猫になる…やだ、なにそれ怖い…
「おら!シールド張れ」
今だに息が整わない私に向かってシグさんが青い魔力の球を撃ってくる。
『ひぃっ』
あんなの当たったら死ぬ!慌ててシールドを張る。最初はシグさんの攻撃一発で砕け散っていたそれは、10発くらいならなんとか持ちこたえることが出来るようになった。
「よし、今日はここまで」
シグさんが満足げに頷いて今日の修行は終了。
『つ、疲れた…』
へにゃへにゃとその場に座り込む。
修行が終わると毎回こうだ。立っているのもしんどいほどに疲労困憊する。こんな様子で大丈夫なんだろうか。実際に戦いになるとこうやって座り込むことも出来ない。魔の森に行くのは私とシグさんだけだ。二人で最深部までたどり着き、また無事に帰ってくるためには私自身もっと強くならなきゃいけない。シグさんの足手まといにはなりたくない。
どうしたら短期間で強くなれる?どうしたら…
「お前はちゃんと強いから大丈夫だ」
突然シグさんの大きな手が私の頭を撫でた。いつの間にか俯いていたようだ。見上げるとシグさんの微笑みが見えた。
「焦る必要はない」
『…なんでわかったの』
「耳」
簡潔に答えたシグさんはもう一度わしわしと力強く頭を撫でて手を離した。
耳?耳を見て私が悩んでいることに気づいたのだろうか。前足でぐしぐしとこすってみる。そんな私を見てシグさんがふっと笑った。と思ったらすぐに表情が引き締められた。
「誰か来るな」
あの一件以来、二人とも魔法を使っている最中の気配にはとても気を配っている。
足音が近づいてくる。普通の人よりも軽くて、少し速い。
すぐに訓練場の扉が開いた。
「シグ、リツカ話がある」
私たちの名前を呼びながら入ってきたのはいつになく真剣な表情のレオンさんだった。
シグさんの次の休みに魔の森に向かうことを決めた。
それまでは準備期間。魔獣と出会っても少しは対処出来るように魔法を鍛えたい、と言うとシグさんのスパルタ修行が始まった。
『ちょ、ちょっと待って』
ぜいぜいしている私とはうって変わって涼しい顔をしているシグさん。爽やかさが憎らしい。
「そのくらいでバテてどうする。魔獣は一体だけとは限らないんだぞ」
『うぅー、わかってるよ!』
わかってるけど体がついていかないの!魔法を使うのは思っていたより体力の消費が激しい。元の世界のイメージだと魔法使いってひょろっとした頭脳派のイメージで、筋肉や体力はいらない職業だったはずなのに… 現実は厳しい。魔法を発動するのには集中力に加えて、その衝撃に耐えうる体が必要らしい。高度な魔法になればなるほど必要な能力もすべて上がるらしく、次々にレベルを上げていく修行のせいで最近の私はずっと全身筋肉痛だ。
どうしよう、このままだと筋肉ムキムキになる。マッチョな猫になる…やだ、なにそれ怖い…
「おら!シールド張れ」
今だに息が整わない私に向かってシグさんが青い魔力の球を撃ってくる。
『ひぃっ』
あんなの当たったら死ぬ!慌ててシールドを張る。最初はシグさんの攻撃一発で砕け散っていたそれは、10発くらいならなんとか持ちこたえることが出来るようになった。
「よし、今日はここまで」
シグさんが満足げに頷いて今日の修行は終了。
『つ、疲れた…』
へにゃへにゃとその場に座り込む。
修行が終わると毎回こうだ。立っているのもしんどいほどに疲労困憊する。こんな様子で大丈夫なんだろうか。実際に戦いになるとこうやって座り込むことも出来ない。魔の森に行くのは私とシグさんだけだ。二人で最深部までたどり着き、また無事に帰ってくるためには私自身もっと強くならなきゃいけない。シグさんの足手まといにはなりたくない。
どうしたら短期間で強くなれる?どうしたら…
「お前はちゃんと強いから大丈夫だ」
突然シグさんの大きな手が私の頭を撫でた。いつの間にか俯いていたようだ。見上げるとシグさんの微笑みが見えた。
「焦る必要はない」
『…なんでわかったの』
「耳」
簡潔に答えたシグさんはもう一度わしわしと力強く頭を撫でて手を離した。
耳?耳を見て私が悩んでいることに気づいたのだろうか。前足でぐしぐしとこすってみる。そんな私を見てシグさんがふっと笑った。と思ったらすぐに表情が引き締められた。
「誰か来るな」
あの一件以来、二人とも魔法を使っている最中の気配にはとても気を配っている。
足音が近づいてくる。普通の人よりも軽くて、少し速い。
すぐに訓練場の扉が開いた。
「シグ、リツカ話がある」
私たちの名前を呼びながら入ってきたのはいつになく真剣な表情のレオンさんだった。
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