白い猫と白い騎士

せんりお

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そのまま暫くシグさんを見守っていると、うーとかあー、とか呻きながら起き上がってきた。どうやら軽く復活してくれたらしい。

「…待てよ。これでお前がもし幻獣だったら万事解決じゃないか。高位の幻獣は言葉を話すというし…」

…ゲンジュウ?なんだろう

「リツカ、お前幻獣なのか?」

シグさんに問われるも分からないので首を傾げておく。

「そうだな…‘はい’なら尻尾を1度、‘いいえ’なら2度振ってくれ」

それは分かるので尻尾を1度振る。それを見てシグさんは満足そうに頷いた。

「よし。通じたな。なら、お前は幻獣か?」

だからそれは分からないんだって‼
どうしようもないので尻尾をぱたぱたと何度も振った。

「あぁ?お前理解できんのかできないのかどっちだよ!」

「にゃー!(怒られても困るよ!)」

仕方がないのでまた書類から文字を探すことにした。
必死に一文字ずつ探す私を見てシグさんが

「ちょっと待ってろ」

と言い、傍にあった白紙に大きく字を書き始めた。表のようにして一文字ずつ丁寧に書いていく。どうやら五十音表のようなものを作ってくれているらしい。

「できたぞ、ほら」

と机の上に広げてくれたその紙には私が前足で十分押さえて示すことができるくらいの大きさの文字が並んでいる。

「にゃあ!(ありがとう!)」

と返事してから私は早速それを使って言葉を伝える。

「わ、か、ら、な、い?自分が幻獣かどうかだということがか?」

尻尾を1度振る。

「げ、ん、じ、ゅ、う、と、は、な、に…は?お前幻獣が何かもわからないっていうのか?」

また尻尾を1度振る。

「はぁー…お前ほんとに何なんだ?」

シグさんは頭を抱えてしまった。

「…いいか、この世には人間と普通の動物の他に魔獣と幻獣という2つの生き物がいる。一般的に魔獣は人間を襲い、幻獣は人を加護するものだと言われている。 」

どうやら説明してくれるようだ。私はふんふんと頷きながら話を聞く。

「魔獣と幻獣は個体にもよるが大きな魔力をもつ」

あ、ちょっとストップ!その魔力って何だ?私の想像通りだとハリー・○ッターとかになるんですけど…
私は慌てて表で文字を示す。

「ん?なんだ?…魔力って?だと!?まさかそこからか!」

シグさんが驚愕に目を見開いている。
どうもすみません。この世界初心者なんですよ…

「はぁー、…魔力っていうのは基本的にもつ力だ。誰にでもある。保有量は個人差があるがな。俺達はそれを使って生活したり仕事をしたりするんだ。つっても仕事にできるやつってのは一握りだ。魔力はコントロールすると魔法になる。だがそのコントロールが難しい。だから食っていけるレベルにまでなるやつは少ないんだ。それに保有量が多くないと高度な魔法は使えないからな。」

「にゃー(なるほど!)」

さっきのお湯のことも聞いてみる。

「あれは魔石だ。…お前ほんとに何も知らないんだな。魔石は魔力のコントロールを助けるんだ。まあ、お湯くらいならなくても簡単にできるんだが、めんどくさいからな。子供だったりはよく使うんだ。後は料理の火を起こしたり、明かりをつけたりするのに使われることが多い」

シグさん説明ありがとうございます!
これでだいたいわかった。やっぱりこの世界は剣と魔法の世界らしい。
前の世界とはまったく違う異世界に来てしまったようだと認めざるをえなくなってしまった。
…まあ、なんか楽しそうだからいっか!

「で、話を戻すが、幻獣は大きな魔力を持つ。魔力には質がいろいろあるんだが幻獣の持つものは清浄で半端じゃなく質がいい」

シグさんの話は続く。

「ここからが本題なんだが、森の中でお前からその清浄な魔力を感じたんだ」

ん?それって…私が幻獣ってこと?

「な?びっくりするだろ?」

余程驚いた顔をしていたらしい。っていうか猫でも表情わかるんですね。

「お前みたいなちびが幻獣だとは思えないんだがなー」

「にゃー!(ちびって失礼!)」

「いって!」

鳴き声と猫パンチで抗議しておく。
すると、仕返しとばかりに頬をむにゅーと掴まれて潰れたような情けない声が出た。

「それにしてもお前は自覚ないんだよな?」

そんな自覚はまったくないので尻尾を一回振る。

「うーん、ますますわからんな」

シグさんが考え込む。わたしにもまったく訳がわからない。異世界に来たと思ったらまさかの幻獣疑惑とか、頭がついていけない。


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