白い猫と白い騎士

せんりお

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「まあいいか。そのうち何かわかるだろ」

シグさんはそう言って私の頭を一撫でしてからソファから立ち上がった。ソファが1度沈んでからふわっと浮き上がって私の体は跳ねる。
シグさんに教えてもらってある程度この世界の在り方はわかった。でも、

私はこれからどうしよう…行くあてもないしな…

シグさんは香箱座りで考え込む私を置いてキッチンに歩いていく。

「とりあえず何か食べるか。お前は何食べるんだ?お前の寝床も用意しないとな。いや、俺のベッドでいいのか?」

え?寝床?って…まさか!

私はぴょんと跳ね起きて、慌ててシグさんの足元まで表を引きずっていき、高速で文字を押さえていく。

食べ物とか、ベッドとか…私をここにおいてくれるの!?ここにいていいの!?

「当たり前だろ?俺としても謎がこのままなのはすっきりしないし。あぁ、行くあてがあるならいいが」

本当にそのつもりでいてくれたらしい。こんな突然現れた得体の知れない私を、ほんとに?助けてくれた上に居場所まで…?
これからこの世界で生きていかなければいけなくて、不安になっていた私にその言葉は嬉しすぎた。

「にゃー、にゃー」

ありがとうと言いたいのに言葉がでなくてもどかしい。代わりに何度も鳴いて、シグさんの足に擦りよった。
どうやら察してくれたみたいで頭をぐりぐりと撫でられた。

「おーおー、感謝しろよ」

そう言ってシグさんは満足そうに笑った。




何やら料理をしていたシグさんはキャットフードとかじゃなくてちゃんと自分と同じ食べ物を用意してくれた。元が人間の私は、キャットフードとか出されたらどうしようかと思っていたがほっとした。

食べ終わってお腹も一杯になると眠気が襲ってきた。この人には追い出されないという安心感が眠気に対抗する気力を奪う。
ソファでうとうとしているとお風呂から出てきたシグさんがふっと笑った。

「眠いか?よし、俺も寝るか」

そう言ってシグさんは私を抱き上げて寝室まで行き、ベッドの枕元に置いてくれた。結局そこが私の寝床になったらしい。女子として男の人のベッドに寝るのはどうかと思ったが、猫の姿なので問題ないかと思い直した。

「おやすみ」

当たり前のように声をかけられてはっとする。猫の私をそんな風に扱ってくれるシグさんはほんとにいい人なんだろう。

「ぅにゃん(おやすみなさい)」

そう返事して私は枕元に丸まった。

今日はいろいろありすぎて疲れた。あったことを思い返していると、シグさんのことに辿り着く。
そういや、シグさんは意外と気さくに喋る人だな。最初は無表情無感情かと思った。仕事中とプライベートは切り替えるタイプなのか。
そんなことを思いながら私は眠りについた。


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