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18 出発
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部屋に入ると皆が集まってきて、朝議のような真面目な雰囲気になったので私はシグさんの肩から下りて窓辺で微睡んでいた。
気持ちよくうとうとしていると、突然
『おい、起きろ』
と頭の中に声が響いた。かなり大きな声で、心地よい睡魔は一気に霧散して私はふぅーっと一瞬毛を逆立てた。
近くにいた隊員がうおっ!?と驚いている。
『そんな大きな声出さなくても!』
『ん?それくらいでないと起きないかと思ってな』
しれっと返される。実に質の悪い悪戯だ。
『用件だが、明日の朝ここを発つぞ』
『え、明日?どこに向かってですか?』
『王都だ。帰りに魔獣を討伐して帰る』
魔獣…はちょっと置いといて、そっかもうここを離れるのか。中で迷子にならないレベルになれなかったのは悔しいが、この国の、この世界のいろんな場所やものを見てみたいので嬉しい。
「シグルド、お前その猫はどうするんだ?ここで拾ったのなら置いていくか?俺が面倒見るぞ」
「いえ、連れていきますよ」
即答したシグさんに、問いかけたカデナ基地長は驚いたような顔をしている。
「そうか。なんか…珍しいな」
「なにがですか?」
シグさんは首を傾げている。と、突然レオンさんが会話に入ってきた。
「だめですよー基地長!シグからリツカをとっちゃ。シグの相棒なんだから」
レオンさんはにやにや笑っている。
「ん?相棒?そうなのか?」
シグさんは表情を変えない。
「ねーリツカ。シグと行くよねー?」
レオンさんが私をぷらーんと抱き上げて目線をあわせて話しかけてくる。
私はそれに「にゃお!」と元気よく返事をしておいた。
シグさんが一緒に連れていってくれると即答してくれたことが私には嬉しかった。
シグさんにとって私は邪魔ではなかったことが。
次の日の朝。早朝に基地を出発した。
30名ほどの隊員たちが馬を駆ける。
私はシグさんの前にちょこんと座らせてもらった。初めて乗る馬はとても早く、景色が飛ぶように流れていく。
それにしても
『揺れるぅぅー!』
念話で絶叫する。私は振動で飛ばされないようにくらに必死に爪を立てている。
『無理っ、飛ぶぅぅぅ!』
うるさい、と言いながらシグさんはそんな私に大笑いしている。周りの隊員はぎょっとした顔でシグさんを見ている。そんな声だして大笑いって珍しいからもっと見たいんだけれども今はそれどころじゃない。
『笑ってないで助けてぇ!』
『あー、お前ほんとに面白い』
くっそこの人やっぱりドSだ!
『いいか、馬の振動に合わせるんだ。ほら、イチ、ニ、イチ、ニ』
シグさんの指導に従っていると、段々要領が掴めてきた。少し景色を見る余裕も出てくる。見渡すと辺りは畑というか農園なのか、ひたすら緑だ。田舎町で、ぽつぽつと家が点在しているようだ。家は中世ヨーロッパのような感じだ。
景色を見ている私に気づいたのかシグさんが話しかけてくる。
『ここは王都から離れた田舎町だ。次の村までは一時間近くかかる』
『そんなに?』
『あぁ。ここら辺は治安がいいからな。町同士が離れていても問題ないんだ』
なるほど。何も問題がないから町同士の連携がとりにくくても大丈夫だということか。
『それにここには魔の森も多い。人が多く住むには不便なんだ』
魔の森、あの場所はほんとに怖かった。
空気が重くて呼吸がしづらい。あそこにはもう極力行きたくない。
そして宣言通り一時間後くらい、町らしきものが見えてきた。門が見える。
『着いたぞ。ここは入り江の町、ニルガだ』
シグさんが馬のスピードを落とした。
気持ちよくうとうとしていると、突然
『おい、起きろ』
と頭の中に声が響いた。かなり大きな声で、心地よい睡魔は一気に霧散して私はふぅーっと一瞬毛を逆立てた。
近くにいた隊員がうおっ!?と驚いている。
『そんな大きな声出さなくても!』
『ん?それくらいでないと起きないかと思ってな』
しれっと返される。実に質の悪い悪戯だ。
『用件だが、明日の朝ここを発つぞ』
『え、明日?どこに向かってですか?』
『王都だ。帰りに魔獣を討伐して帰る』
魔獣…はちょっと置いといて、そっかもうここを離れるのか。中で迷子にならないレベルになれなかったのは悔しいが、この国の、この世界のいろんな場所やものを見てみたいので嬉しい。
「シグルド、お前その猫はどうするんだ?ここで拾ったのなら置いていくか?俺が面倒見るぞ」
「いえ、連れていきますよ」
即答したシグさんに、問いかけたカデナ基地長は驚いたような顔をしている。
「そうか。なんか…珍しいな」
「なにがですか?」
シグさんは首を傾げている。と、突然レオンさんが会話に入ってきた。
「だめですよー基地長!シグからリツカをとっちゃ。シグの相棒なんだから」
レオンさんはにやにや笑っている。
「ん?相棒?そうなのか?」
シグさんは表情を変えない。
「ねーリツカ。シグと行くよねー?」
レオンさんが私をぷらーんと抱き上げて目線をあわせて話しかけてくる。
私はそれに「にゃお!」と元気よく返事をしておいた。
シグさんが一緒に連れていってくれると即答してくれたことが私には嬉しかった。
シグさんにとって私は邪魔ではなかったことが。
次の日の朝。早朝に基地を出発した。
30名ほどの隊員たちが馬を駆ける。
私はシグさんの前にちょこんと座らせてもらった。初めて乗る馬はとても早く、景色が飛ぶように流れていく。
それにしても
『揺れるぅぅー!』
念話で絶叫する。私は振動で飛ばされないようにくらに必死に爪を立てている。
『無理っ、飛ぶぅぅぅ!』
うるさい、と言いながらシグさんはそんな私に大笑いしている。周りの隊員はぎょっとした顔でシグさんを見ている。そんな声だして大笑いって珍しいからもっと見たいんだけれども今はそれどころじゃない。
『笑ってないで助けてぇ!』
『あー、お前ほんとに面白い』
くっそこの人やっぱりドSだ!
『いいか、馬の振動に合わせるんだ。ほら、イチ、ニ、イチ、ニ』
シグさんの指導に従っていると、段々要領が掴めてきた。少し景色を見る余裕も出てくる。見渡すと辺りは畑というか農園なのか、ひたすら緑だ。田舎町で、ぽつぽつと家が点在しているようだ。家は中世ヨーロッパのような感じだ。
景色を見ている私に気づいたのかシグさんが話しかけてくる。
『ここは王都から離れた田舎町だ。次の村までは一時間近くかかる』
『そんなに?』
『あぁ。ここら辺は治安がいいからな。町同士が離れていても問題ないんだ』
なるほど。何も問題がないから町同士の連携がとりにくくても大丈夫だということか。
『それにここには魔の森も多い。人が多く住むには不便なんだ』
魔の森、あの場所はほんとに怖かった。
空気が重くて呼吸がしづらい。あそこにはもう極力行きたくない。
そして宣言通り一時間後くらい、町らしきものが見えてきた。門が見える。
『着いたぞ。ここは入り江の町、ニルガだ』
シグさんが馬のスピードを落とした。
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