バースデーソング

せんりお

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番外編 初対面1

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*時系列的には「先輩の恋人」の前です





きっかけはセルジオだった。

「なあー、チハル」

「ん?」

くつろいだ声で呼ばれてそちらを向く。
最近は、企業のCMとのタイアップが決まって忙しい日々を過ごしていた。今日は早く帰れそうで俺は急いで帰り仕度をしていた。

「お前さ、いつになったら彼氏に会わせてくれんの?」

その言葉に固まる。
あー、そういやそうだ。散々相談したり、騒がせたりしておきながら俺はセルジオとニコラを会わせたことがなかったっけ。
これってお互い会わせておくべきなんだろうか。セルジオはこれからもずっと密に関わっていく相棒だし、ニコラはこれから出来ればずっと一緒にいたい相手だ。いや、でもなー…セルジオは俺の想い人だったわけで、ニコラは俺の恋人なわけで…んー会わせてもいい、のか?
固まったまま思案する俺をセルジオはにやにや眺めている。

「で、どうなの?」

さらに重ねるセルジオをじとっと睨みながらも俺は決心した。

「わかった。紹介する」



かくして俺はセルジオをlumeに連れていくこととなったのだ。




決行はそれから数日後。
忙しい日々もなんとか落ち着き、久しぶりに、時間に余裕が出来た日にセルジオをニコラに会わせることにした。
時刻は夕方。その日もセルジオと仕事があったのでそのまま一緒にlumeに帰ることになった。

「いやー、楽しみだなー」

隣を弾んだ足取りで歩くセルジオ。声も楽しそうに弾んでいる。

「なんでそんな楽しみなんだよ」

「だってお前がのろけるレベルの甘々彼氏だぜ?んなの見たいに決まってるだろ。どんなやつかなー?あ、ハードル上げちゃった?」

にやにやしながらいつものように煽ってくる。
ふんっ、どれだけでも煽ってろ!俺は自分自身には全く自信がない。だけどこれだけは確かに言える。俺の恋人、ニコラはめちゃくちゃかっこいいんだ。

「どんだけハードル上げても足りない」

どや顔で言い切った俺にセルジオが一瞬唖然としてから派手に笑い声をあげた。

「さっすがだなー!あーますます楽しみになってきた」

「せいぜい楽しみにしてろよ。ここ曲がるぞ」

いつもの裏路地に入る。もう俺は慣れたものだけどセルジオは驚いたようだ。

「え、ここ?」

真っ暗で狭く、街頭もないような路地だ。この先になにかがあるようには到底思えない。だけどlumeはこの先にある。

「お前俺のことからかってない?」

訝しげなセルジオを無視してそのまま路地を進む。
少し歩くといつものように明かりが見えてきた。

「ここだよ」

店の扉の前で振り返って言うと、セルジオはやはり驚いた顔をしていた。

「ほんとにこんなとこにあるのかよ…お前こんなとこよく見つけたな」

 「俺も偶然見つけたんだ」

初めてここに来た時のことを思い出して苦笑した。

「さ、入るよ」

木の扉を引き開ける。柔らかくドアベルが鳴った。

「ただいま」

カウンターの中にいたニコラに声をかける。いまだにこの挨拶をするのはどこかくすぐったい。

「お帰り」

でもニコラが優しい笑顔でそう返してくれるのが嬉しいから俺は絶対に「ただいま」は欠かさない。

「よう、おけーり!」

いつもの大テーブルにいたマルコさんたちからも声がかかった。

「来てたんだ。ただいま」

入ったところで挨拶を交わしていた俺に焦れて、セルジオが後ろからひょこっと顔を出した。それにニコラが気づいて「いらっしゃい」と言いかけて止まる。

「あれ、君は…」

「セルジオ・ギーニです!初めましてですがお噂はかねがね」

気づいてもらえたセルジオが嬉々としてニコラに握手を求めに行った。ニコラも戸惑いながら応じている。

「お?お前あれじゃねーか!チハルと一緒にやってる…」

マルコさんたちも気づき始めた。

「あ、はい!そうですそうです!チハルと一緒にlampflickerやらしてもらってます、セルジオっす」

セルジオはそちらにも握手を求めにいく。どこまでも愛想のいいやつだ。
セルジオがマルコさんたちと話している間に俺はニコラに近寄った。

「ごめんな、突然連れてきて。紹介しろってうるさいんだよ。まあ俺もそうしたほうがいいかと思ったんだけど…」

「いや、大丈夫だよ。俺も一度会いたいと思ってたからね」

そう言いつつ、ニコラの手が自然に俺を引き寄せて唇に軽いキスを落とす。ニコラがいつもしたがるお帰りのスキンシップだ。こいつはスキンシップがとても多い。まあ俺としてもそれは嬉しいからいいんだけど。
でも今日はあいつがいる。
慌てて振り向くとやっぱりセルジオがにやにやしながらこちらを見ていた。

「なんだよ」

キスを見られた恥ずかしさからついぶっきらぼうになった。そんな俺にセルジオのにやにや笑いがさらに増した。



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