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番外編 君の可愛さ ニコラside
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俺の恋人は朝が弱い。
夜遅くまで曲を作っていたり、ギターをいじったりしているかわりに、どうにも朝早く起きるのが苦手なようだ。
でも、今日は確か…カレンダーを確認するとチハルの予定は朝9時半にスタジオ集合となっている。今の時刻は8時。もう起きないと間に合わなくなるだろう。
まだベッドの住人の彼を起こしに、俺は寝室のドアを開けた。
「チハル、もう起きないと遅刻するよ」
声をかけながらカーテンをさっと開けるとチハルはんー、と可愛く唸りながら布団へ潜り込んでいく。
「ほら、起きて」
ベッドのはしに腰かけて少しだけのぞいた額に軽く口づける。さらさらの黒髪をすくように撫でるとチハルはそろそろと顔を出した。
「おはよう」
まだ半分眠りの世界にいるチハルの開き切らない目尻をそっと撫でて、唇にキスを落とすとだんだん覚醒してきたのか、ゆっくりと身を起こそうとする。腕を回して支えるとチハルはふにゃっとした笑みを浮かべた。
「んーニコラおはよう」
「おはよう」
「なんかいい匂いする」
「朝ごはん、今日はフレンチトーストにしてみた」
「道理で」
ニコラからも甘い匂いがする、とまた柔らかく笑ったチハルがあまりにも可愛すぎて朝から深めのキスを落としてしまった。
「んっ、ふ、ちょっニコラ!」
「ん、ごめん」
さすがにすっかり目が覚めたチハルに抗議されて唇を離すと、そこに真っ赤な顔があってまたキスをしたくなるのを必死に堪えた。
ばっちり開いた綺麗な黒い瞳。普段は真ん丸なそれは今はじとっと細められている。
俺はそれに笑ってベッドから立ち上がった。
「さ、ほんとに遅れちゃうね。フレンチトーストも冷めるし。食べよっか」
「ん。顔洗ってくる」
チハルも1つ大きな伸びをしてからベッドから降りる。乱れた黒髪をくしゃっとしながら俺の横に並んだ。ドアの前からすっとよけて先をゆずるとチハルが立ち止まった。
「ん?どうしたの?」
「…いつもありがと」
若干目をそらしながら、唐突に言われたその言葉に俺が虚を突かれていると、チハルは少し背伸びをして俺の頬にキスを落とした。そして、してやったりという風に、にやっと笑うと今度こそ洗面所に歩いていった。
残された俺は一人で悶絶するしかない。
「っだから可愛すぎ…」
俺の恋人は、超有名アーティストで、綺麗な黒髪を持っていて、中性的なとんでもない美人で、普段はシャイなのに時々とても大胆で、そして世界一可愛い。
夜遅くまで曲を作っていたり、ギターをいじったりしているかわりに、どうにも朝早く起きるのが苦手なようだ。
でも、今日は確か…カレンダーを確認するとチハルの予定は朝9時半にスタジオ集合となっている。今の時刻は8時。もう起きないと間に合わなくなるだろう。
まだベッドの住人の彼を起こしに、俺は寝室のドアを開けた。
「チハル、もう起きないと遅刻するよ」
声をかけながらカーテンをさっと開けるとチハルはんー、と可愛く唸りながら布団へ潜り込んでいく。
「ほら、起きて」
ベッドのはしに腰かけて少しだけのぞいた額に軽く口づける。さらさらの黒髪をすくように撫でるとチハルはそろそろと顔を出した。
「おはよう」
まだ半分眠りの世界にいるチハルの開き切らない目尻をそっと撫でて、唇にキスを落とすとだんだん覚醒してきたのか、ゆっくりと身を起こそうとする。腕を回して支えるとチハルはふにゃっとした笑みを浮かべた。
「んーニコラおはよう」
「おはよう」
「なんかいい匂いする」
「朝ごはん、今日はフレンチトーストにしてみた」
「道理で」
ニコラからも甘い匂いがする、とまた柔らかく笑ったチハルがあまりにも可愛すぎて朝から深めのキスを落としてしまった。
「んっ、ふ、ちょっニコラ!」
「ん、ごめん」
さすがにすっかり目が覚めたチハルに抗議されて唇を離すと、そこに真っ赤な顔があってまたキスをしたくなるのを必死に堪えた。
ばっちり開いた綺麗な黒い瞳。普段は真ん丸なそれは今はじとっと細められている。
俺はそれに笑ってベッドから立ち上がった。
「さ、ほんとに遅れちゃうね。フレンチトーストも冷めるし。食べよっか」
「ん。顔洗ってくる」
チハルも1つ大きな伸びをしてからベッドから降りる。乱れた黒髪をくしゃっとしながら俺の横に並んだ。ドアの前からすっとよけて先をゆずるとチハルが立ち止まった。
「ん?どうしたの?」
「…いつもありがと」
若干目をそらしながら、唐突に言われたその言葉に俺が虚を突かれていると、チハルは少し背伸びをして俺の頬にキスを落とした。そして、してやったりという風に、にやっと笑うと今度こそ洗面所に歩いていった。
残された俺は一人で悶絶するしかない。
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