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お皿を片付け始めたニコラに慌てて、俺がやるよ、と制止する。
「食べさせてもらったんだし俺も手伝う」
「そう?じゃあお願いしようかな」
そう言ってくれたのでニコラと階下に下りて、後片付けを手伝う。
皿を洗いながらニコラに聞いてみる。
「そういや、なんで肉じゃがなんだ?他に和食っていっぱいあるけど」
「知ってる中で1番上手く出来るやつだからね」
同じく洗い物をしながらニコラが答えてくれた。そうなのか…肉じゃがが1番上手いのか。それってなんか
「なんか彼女みたいだな」
俺がそう言った瞬間ニコラが手を滑らせた。洗っていた鍋がぐわーんという音を立てて落ちる。
「うわっ!大丈夫か?」
「…鍋は全然大丈夫だよ…」
「ならよかった。あーびっくりした」
そう言ってからニコラを見ると、彼は隣でなんとも言えないような表情をしてこちらを見ていた。
「え、なにそれ、え?」
「いや…何でもないよ…それで彼女っていうのはどういう意味なの?」
あー、それな。鍋が落ちたのですっかり忘れていた。
「日本で肉じゃがっていうと、彼女が彼氏に作る定番みたいな料理なんだよな。肉じゃがで胃袋掴め!みたいな。」
「…へぇー」
「ニコラの肉じゃがすっごい美味しかったし、ニコラなら今すぐ嫁に行けるレベル!」
そう言ってあははっと笑うとニコラは横でずるずるとしゃがみこんだ。
「え、ニコラどうした?」
具合でも悪いのかと慌てて顔を覗き込もうとするとすっと顔を逸らされた。一瞬見えたその顔は少し赤く染まっていたような気がした。
「…チハルの方がよっぽど天然たらしだ」
ぼそっと呟かれたそれが聞き取れなくて聞き返す。
「え?なんて言った?」
「なんでも!よしさっさと終わらそう!」
勢いよく立ち上がって、猛然と片付け始めたニコラに俺は首をかしげた。
高速で手を動かしたニコラのおかげで片付けはすぐに終わった。帰ろうかと思ったが、ニコラに「呑んでいくでしょ」と誘われて俺はまた2階に戻っていた。
「ビール?ワイン?」
それぞれを片手ずつもって軽く振ってみせるニコラ。いつもビールなのだけれどニコラが手に持つワインの銘柄が俺の好きなものだったのでワインを選んだ。
「おつまみ持ってくるね」
「ありがとう」
申し訳ないなと思いながらニコラの言葉に甘える。ニコラのおつまみはとても美味しいのだ。もうお酒を飲むときはこれがないとなにか物足りない。
「お待たせ」
少したってニコラが戻ってきた。お皿の上にはオリーブが乗っている。
「フランス風に漬けたオリーブ。ワインにあうよ」
「へぇー!初めて食べる」
1つ摘まんで口に入れる。風味がぎゅっと濃縮された味に思わず唸った。
「美味しい!これは酒にあうなー!」
「でしょ?」
言いながらニコラも1つ口に運んだ。
「うん、よく漬かってるね」
「これもニコラが作ったのか?」
「そうだよ。これは好きだから定期的に作ってるんだ」
事も無げに言うニコラ。フランス風って言ってたよな…これってフランス料理なのかな。
「これはフランス料理?」
「そう。だいぶ昔に習ったんだよね」
「習ったって誰に?フランス人?」
「そうそう。たまたま旅行で来てた人と知り合ってさ」
「それってフランス語で喋ったのか?」
「うん。フランス語を勉強してる途中だったからね。話しかけてみたら意気投合して教えてもらったんだ」
フランス語。ニコラはいろんな人から各国の料理を教えてもらったと言っていた。他の料理もこのオリーブと同じように教えてもらったとしたら…
「なあ、ニコラって何ヵ国語話せるんだ?」
ニコラに恐る恐る聞いてみる。俺の問いを受けて、少し考えてからニコラが口を開いた。
「んー最低限生きていけるレベルなら5ヵ国くらい?」
「…まじか…出来杉くんかよ」
「デキスギクン?」
ニコラって凄いんだな、と改めて実感する。どこにいてもエリートでやっていけそうだけどニコラはイタリアの裏路地でパブを営んでいる。でもここでやっていてくれてよかった。一方的な感謝をこめてじっと見つめる俺に、ニコラが不思議そうに首をかしげた。
それからもニコラとの談笑は続いた。俺にとってこんなに穏やかに過ぎていく時間は久しぶりで本当に楽しかった。
でも、ふとした瞬間に暗い影が忍び寄ってくるのだ。
ワインを一本空けてしまい、次のものを取りにニコラが階下へ下りて、俺は部屋に1人になった。影が忍び寄るのはそんな瞬間。最近は1人になるのが嫌だった。どうしても気持ちが沈んでしまうから。セルジオと出会ってから久しく感じていなかった気持ち。1人が寂しいという感情。
そうして暗い気持ちになっていると扉が開いてはっと意識が浮上する。
「次はビールにしてみた」
そう言って瓶を掲げてみせるニコラに慌てて笑みを作る。今は楽しいんだからわざわざ自分で沈むことはないだろ。自分にそう言い聞かせた。
「食べさせてもらったんだし俺も手伝う」
「そう?じゃあお願いしようかな」
そう言ってくれたのでニコラと階下に下りて、後片付けを手伝う。
皿を洗いながらニコラに聞いてみる。
「そういや、なんで肉じゃがなんだ?他に和食っていっぱいあるけど」
「知ってる中で1番上手く出来るやつだからね」
同じく洗い物をしながらニコラが答えてくれた。そうなのか…肉じゃがが1番上手いのか。それってなんか
「なんか彼女みたいだな」
俺がそう言った瞬間ニコラが手を滑らせた。洗っていた鍋がぐわーんという音を立てて落ちる。
「うわっ!大丈夫か?」
「…鍋は全然大丈夫だよ…」
「ならよかった。あーびっくりした」
そう言ってからニコラを見ると、彼は隣でなんとも言えないような表情をしてこちらを見ていた。
「え、なにそれ、え?」
「いや…何でもないよ…それで彼女っていうのはどういう意味なの?」
あー、それな。鍋が落ちたのですっかり忘れていた。
「日本で肉じゃがっていうと、彼女が彼氏に作る定番みたいな料理なんだよな。肉じゃがで胃袋掴め!みたいな。」
「…へぇー」
「ニコラの肉じゃがすっごい美味しかったし、ニコラなら今すぐ嫁に行けるレベル!」
そう言ってあははっと笑うとニコラは横でずるずるとしゃがみこんだ。
「え、ニコラどうした?」
具合でも悪いのかと慌てて顔を覗き込もうとするとすっと顔を逸らされた。一瞬見えたその顔は少し赤く染まっていたような気がした。
「…チハルの方がよっぽど天然たらしだ」
ぼそっと呟かれたそれが聞き取れなくて聞き返す。
「え?なんて言った?」
「なんでも!よしさっさと終わらそう!」
勢いよく立ち上がって、猛然と片付け始めたニコラに俺は首をかしげた。
高速で手を動かしたニコラのおかげで片付けはすぐに終わった。帰ろうかと思ったが、ニコラに「呑んでいくでしょ」と誘われて俺はまた2階に戻っていた。
「ビール?ワイン?」
それぞれを片手ずつもって軽く振ってみせるニコラ。いつもビールなのだけれどニコラが手に持つワインの銘柄が俺の好きなものだったのでワインを選んだ。
「おつまみ持ってくるね」
「ありがとう」
申し訳ないなと思いながらニコラの言葉に甘える。ニコラのおつまみはとても美味しいのだ。もうお酒を飲むときはこれがないとなにか物足りない。
「お待たせ」
少したってニコラが戻ってきた。お皿の上にはオリーブが乗っている。
「フランス風に漬けたオリーブ。ワインにあうよ」
「へぇー!初めて食べる」
1つ摘まんで口に入れる。風味がぎゅっと濃縮された味に思わず唸った。
「美味しい!これは酒にあうなー!」
「でしょ?」
言いながらニコラも1つ口に運んだ。
「うん、よく漬かってるね」
「これもニコラが作ったのか?」
「そうだよ。これは好きだから定期的に作ってるんだ」
事も無げに言うニコラ。フランス風って言ってたよな…これってフランス料理なのかな。
「これはフランス料理?」
「そう。だいぶ昔に習ったんだよね」
「習ったって誰に?フランス人?」
「そうそう。たまたま旅行で来てた人と知り合ってさ」
「それってフランス語で喋ったのか?」
「うん。フランス語を勉強してる途中だったからね。話しかけてみたら意気投合して教えてもらったんだ」
フランス語。ニコラはいろんな人から各国の料理を教えてもらったと言っていた。他の料理もこのオリーブと同じように教えてもらったとしたら…
「なあ、ニコラって何ヵ国語話せるんだ?」
ニコラに恐る恐る聞いてみる。俺の問いを受けて、少し考えてからニコラが口を開いた。
「んー最低限生きていけるレベルなら5ヵ国くらい?」
「…まじか…出来杉くんかよ」
「デキスギクン?」
ニコラって凄いんだな、と改めて実感する。どこにいてもエリートでやっていけそうだけどニコラはイタリアの裏路地でパブを営んでいる。でもここでやっていてくれてよかった。一方的な感謝をこめてじっと見つめる俺に、ニコラが不思議そうに首をかしげた。
それからもニコラとの談笑は続いた。俺にとってこんなに穏やかに過ぎていく時間は久しぶりで本当に楽しかった。
でも、ふとした瞬間に暗い影が忍び寄ってくるのだ。
ワインを一本空けてしまい、次のものを取りにニコラが階下へ下りて、俺は部屋に1人になった。影が忍び寄るのはそんな瞬間。最近は1人になるのが嫌だった。どうしても気持ちが沈んでしまうから。セルジオと出会ってから久しく感じていなかった気持ち。1人が寂しいという感情。
そうして暗い気持ちになっていると扉が開いてはっと意識が浮上する。
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