バースデーソング

せんりお

文字の大きさ
22 / 53

21

しおりを挟む
「そうだったな…」

長い思い出からはっと我に帰って1人呟いた。このモスグリーンのマフラーはニコラから誕生日にもらったものだ。あの時は楽しかったなと知らず頬が緩んだ。
マフラーをトランクに入れて、今度はTシャツを漁る。
手に触れたものを広げるとそれは

「あーこれ!」

マルコさんにもらったやつだな。あの時は確かニコラが…

「って準備しろよ俺」

さっきから全然準備が進んでいない。自分で自分に突っ込んだ。
その後は黙々と作業を続けて、それでも終わったのは数時間後だった。




作業を終えた俺は机にベッドにうつ伏せで横たわっていた。

「あーつっかれた」

思わず呟く。肉体的疲労より精神的疲労が大きい。というのも、マフラーを始めとして、Tシャツから小物まで、それぞれを漁っているとどれもこれもlumeに関する思い出があるものが1つはあってその度にその時のことを思い出して、ニコラを思い出して、必然的に昨日のニコラの告白を思い出して…とにかくしんどかった。

「…どんだけだよ俺」

この一年、lumeとニコラの存在が俺の中でどれだけ大きかったか思い知った。
ニコラの胸で泣いた日を思い出す。あの時のニコラの「俺が積もるよ」という言葉は確かで、俺の中を埋めてくれていることを改めて実感した。それは俺にむず痒い嬉しさを感じさせて、でも同時に情けなくもあった。
ニコラが俺を好きでいてくれたのはいつからなのだろう。それが長ければ長いほど、もしかしたら俺はニコラに我慢を強いてきたことになる。
俺がセルジオを好きだったとき、セルジオが他のやつの話をするのが辛かった。思いを伝えられないのが辛かった。
あんな辛い思いをするのはもう嫌だ。
でも俺はニコラに同じ思いを、辛さを味あわせてしまったかもしれないのだ。

「…俺はどうしたらいい?」

ぽつりと放った言葉は虚しく枕に吸い込まれていった。
俺の気持ちはどうなんだろう。ニコラが好きかと言われると、躊躇いもなく大好きだと答えられる。でもそれは人として、友情的なものであって恋愛的なものかと言われるとどうにもわからなかった。
俺はニコラが恋愛的に好きなのか?それともこれからなれる?
自問自答を繰り返すも答えは出るはずもなくて。

「とりあえず行かないと」

そう。とりあえずlumeに行こう。どんな結果になるにしろこのまま顔を合わさないのはまずい。それに俺はすぐにツアーに出る。長く顔を出せなくなるだろう。その前にちゃんと話をしなければ。



しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

一夜限りで終わらない

ジャム
BL
ある会社員が会社の飲み会で酔っ払った帰りに行きずりでホテルに行ってしまった相手は温厚で優しい白熊獣人 でも、その正体は・・・

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。

美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)

処理中です...