紫音の少女

柊 潤一

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母子を救う

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    女の子はどこかの店で母親が帰るのを待っていたが、あまりに帰りが遅いので我慢出来ずに探しに出たらしかった。

 ただ不思議な事に、女の子の記憶の映像はぼやけていたので、女の子の目をよく見ると眼球が黄いろく、焦点も虚ろだった。 

(この子は目がよく見えないんだわ)

 紫音はそう思いながら、女の子が持っている母親の生命の色とイメージを自分の中に取り込んで、今いる場所を中心に数多くの生命体の中から母親らしき人を探していった。

 そして広場でそれらしき人を見付けると

「お母さんいたわよ。行こう」

 と言いながら女の子の手を握って歩き出した。

 そして広場に来てベンチに座っている女性に近寄っていくと

「お母ちゃん!」

 と言いながら、女の子が女性の膝にとりすがって泣き出した。

「ユリちゃん!」

 母親は、突然現れた娘と紫音達に戸惑っている様子だった。

「あなたの帰りが遅いので、探しに出て迷ってたんですよ」

 紫音が母親に言った。

「どうして目の悪い子を残して出ていったんですか?」

 責めるような口調で言った紫音だったが、ふと母親を見て黙り込み、そばにいるシュリ婆を見た。

 シュリ婆も、うむ・・・と言うように頷いた。

 母親の顔色は黒く身体も痩せこけていて、一目で病気だと分かるほど衰弱していた。 

「さぁ、こんなところにいると身体に障るぞぇ。わし
 らと一緒に来るがええだ」

 紫音に代わってシュリ婆が母親に話しかけた。

 シュリ婆の口調は優しかったが、有無を言わせない響きがあった。

 シュリ婆と紫音は母子を連れてエリカの家に戻って来た。

「お帰りなさい」

 繕い物をしていたエリカが立ち上がって出迎えた。

「お客さんを連れてきたぞぇ。子供は眠そうじゃから
 寝かせてやってくれんか?」

 エリカは今日一日の疲れでうとうととしている女の子を母親から受け取ると、ベットに連れ行った。

 シュリ婆はテーブルを挟んで母親の向かいに座り、紫音が母親と並んで座ると口を開いた。

「さて・・・わしらはあんたの力になりたいんじゃ。見たところ病気のようじゃが具合はどうかえ?」

 母親はしばらく黙ったままうつむいていたが、やがてシュリ婆にうながされてぽつりぽつりと話し出した。

 母親は、五年前に所帯を持って一年後に女の子が生まれたが、妊娠中に風疹にかかってしまい女の子の目が生まれつき悪いこと。

 二年前に夫を病気で亡くし、それからは目の悪い女の子を女手一つで育ててきたこと。

 一年前位からお腹の辺りがおかしい時があったが、さして苦痛もなく忙しさにかまけて医者にかかりそびれたこと。

 ところが最近になって血を吐いたりして、慌てて医者にいくと、胃の中に悪性の瘤のような物が出来ていて手の施しようがないと言われたこと。

 この頃になるとお腹の痛みもひどく、床に伏せることが多くなり、生きていくのが辛くなって女の子を連れて一緒に死のうと思い、最後の贅沢にと子供と一緒に店に入ったこと。

 そして近所に農薬を買いに出たが、目は悪くても頭が良くて素直な子供を一緒に死なせてやるのも不憫に思い、さりとてこれから生きていく希望もなく、思い迷って時間が経ってしまったことを話した。

 その後で

「私はどうしてこんなに苦労しなければいけないのでしょうか?何も・・悪いことなどした覚えもないのに・・」

 と顔を覆って泣き崩れた。
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