妄想のメシア

柊 潤一

文字の大きさ
3 / 39
初めての世界

この世界の説明を聞く

しおりを挟む
「さすが、救世主さま。あっという間でしたな。もう夕暮れも近いゆえ、宿屋にご案内致します」

 宿屋って泊まることになるんか?

 俺は広場のそばの宿屋に案内され、部屋に落ち着いた。

 サエとアンナさんは帰らずに部屋にいる。

「さて、ご説明しなければなるますまい」

「村長さん、これ夢ですよね?」

 夢の中で、夢ですよねと聞くのも馬鹿げた質問やったと思ったが、思わず口から出てしもた。

「皆さん最初はそうおっしゃいます」

 皆さん?

 他にも誰かおるんかいな。

「まぁ、お聞きください。ここは始まりの村といいましてな。救世主さまも・・・おお、そうじゃ。お名前を聞いておかないと」

「僕ですか?僕はセンタです」

「ププッ・・・」

 こらこら、人の名前を聞いて笑うな。

「いや、これは失礼をしました。しかし変わった、あ、いや、個性的なお名前ですな」

 俺の名前を聞いた奴って、みんな同じことを言うんだよな。

 まったく、おかんももう少しましな名前を付けろってよ。

 前に、なんでこんな名前つけたんや?って聴いたら

「名前考えてる時にな、テレビで嵐の大野君がセンターで歌ってたんや。それで、センタって名前にしたんや。ええ名前やろ?私は気に入ってるで」

 て、言いよった。

 あ、そんなことはどうでもええわ。村長さんの話や。

「で、センタ様、ここにやってこられた救世主様は、あなたで16.5人目なのです」

「てん五人て、なんなんですか」

「登場したと思ったら、すぐに魔物にやられて消えてしまいましてな。それで、0.5人にしましたんじゃ」

 相変わらずめんどくさい爺さんや。

「他の救世主の人達はどうなったんですか」

「皆さん、不意に現れては数日で来なくなりますのじゃ。センタ様も、もうお分かりかと思いますがこの村には魔物が出ましてな」

 それから、延々と話す村長さんの話をまとめると、この村には魔物が出て、村人が苦しめられていて、その魔物はこの村から5キロほど離れた山の中にいるボスを倒すといなくなる。

 今までやって来た救世主は、誰もそこへたどり着けないでいつの間にか消えていった。

 そして、ほかの村も魔物におびやかされていて、どこかにいる魔王を倒さないとこの世界は平和にならない。

 と、こういう事らしかった。

 ホンマに、たった数分で終わる話を延々と二時間も聞かせれて途中で眠たなってもうたわ。

 横にいるサエとアンナは、またかという顔をして話が始まってすぐに寝てしもうたし。

 まぁ、村長さんも悪い人やないし、救世主を待ちわびてた気持ちもわかるけどな。

 しかし、これが夢かどうかは分からずじまいやった。

「わかりました、村長さん。僕もどこまで力になれるかは分かりませんけど、出来るだけ期待に応えるようにします」

 結局俺は、村長さんにそう言ってしもうた。

 村の人達も可哀想やし、なんと言ってもこんな可愛くて綺麗なサエとアンナさんを・・・って、この二人起きてるやん!

 毎度の事で終わる時間を分かってんのかよ。

 村長は俺の言葉を聞いて、涙を流さんばかりに俺の手を取って何度もお礼を言っていた。

 そして

「どうぞお楽しみ下され」

 と、言ってサエとアンナを置いたまま出ていこうとした。

「ちょ、ちょっと村長さん、それって」

 ・・・しまった。

「ん?それというのは、お楽しみの内容ですかな?それともお楽しみの可否を問うておられるのですかな?」

 だぁー、やっぱり・・・

「い、いや、何でもないです。よく分かりましてのでとっとと、いや・・・どうぞ安心してお帰りください」

 俺はそう言って、村長をドアから押し出した。

「ともあれ、おもてなしは初代の救世主様がお決めなされた事でしてな。それ以来各々の方にも喜んでいただいております」

 村長はそう言って最後にニンマリと笑っ去っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...