妄想のメシア

柊 潤一

文字の大きさ
2 / 39
初めての世界

始まりの村

しおりを挟む
「大変だー、魔物が出たぞ。魔物だー」

 ウトウトしていたら、騒がしい声で目が覚めた。

「うろたえるでない。救世主様が居られるから大丈夫じゃ」

「さ、救世主さま。お仕事ですぞ」

「はぁ?」

 いやいや、俺は救世主なんかやないって。

 村長は、さっき俺が持っていた棒を手に握らせた。

「さぁ、救世主さま早く」

「いや、ぼ、僕は違うんですけど・・・」

「何を言っておられる。さぁ、もぅ村の近くまで来ておる。早く」

 ふと見ると、ロリっ子サエとツンデレアンナが俺をうるうるした目で見上げている。

 そんな目で見るなよ、俺は違うって。

「ちょっ、待って、僕は救世主なんかやな・・・」

 俺は大勢の村人に有無を言わさず村の入口から外に押し出された。

 向こうからさっきと同じワニみたいな奴がやってくる。

 仕方ない。

 俺は覚悟を決めた。

 さっきもいけたから、何とかなるやろ。

 ワニは、のっしのっしとこっちへ向かってくる。

 うわー、怖そうな顔しとるなこいつ。

 目が血走ってるで。

 よく見ると、右手がピクピクしてる。

 ははぁ、右手で殴りかかるつもりやな。

 よし、左へかわしながら胴をいで振り向きざまに袈裟切りでいこう。

 俺は間合いをはかりながら、じっとワニを見つめていた。

 そして、ワニが手を振り上げ下ろした瞬間、左へすり抜けながら胴を払い、振り向きざまに肩口から袈裟に切り下げた。

 ワニは、ぐふっと呻きながら倒れ、そして消えた。

 おおー、上手くいったよ。

 剣道やっててよかった。

 そう、俺は親父の影響で小さい時から剣道をやってる。

 おかげで助かったー

 村の入口を見ると、サエとアンナが、キラキラした目で俺を見ている。

 うん、いい気分だ。

 俺は意気揚々と村の入口へ歩いていった。

「・・・ンター」

 ん?

「センタ!」

 誰か俺を呼んでるぞ。

「センタ!お昼ご飯やで。はよ、降りといでや」

 目の前に、おかんが立っていた。

 あれ?あれれ?

 村は?魔物は?サエとアンナは?

「なにをボケーっとした顔してんねや。ご飯やで、はよおいでや」

 おかんはそう言って俺の部屋を出ていった。

 やっぱり夢やったんか。

 俺は、部屋を出てリビングへ降りた。

 あれ?今日は親父も兄貴もいるな。ああ、そうか、今日は日曜日か。

「センタ、修道館には行ってるか?」

 テーブルに座ると親父が話しかけてきた。

「うん。これから行こう思うてる」

「そうか、じゃ一緒に行こう。久しぶりに稽古をつけてやる。」

「ええー?いや、ええよ。お父さん、手加減せえへんし」

 結局、俺は親父の車に乗せられ、修道館でさんざん絞られた。

 親父はもっとやりたそうだったが、途中で親父を見つけた大学の後輩達に稽古をせがまれ、俺は開放された。

 親父は大学の時に大会で優勝したこともあり、府警の偉いさんになった今でも週に何度かはここに通ってきている。

 俺は、親父が稽古をつけているのを終わるまで見ていた。

 相変わらず親父は強い。

 俺の時も、打ち込もうとした瞬間に一本取られていることが多い。

 親父が稽古をつけるのも終わり、俺たちは家に帰ってきた。

 夜になって俺は昼間のことを考えていた。

 サエちゃん可愛かったな。

 アンナさん綺麗やったな。

 しかし、なんであんな夢を見たんやろ?

 今でも、鮮明に覚えてる。

 最初、野原にいて、それから魔物を退治して村に行ってまた魔物を退治して村に戻りかけたんだよな。

 ・・・

 ・・・

 あれ?

 あれれ?

 戻ってきた。

 サエちゃんもアンナさんも村長もいる。

「わーい、救世主さまー」

 サエちゃんが走ってくる。

 可愛いな。

 うわっ、ハグしてきた。

 耳舐めといい、情熱的やなー

「救世主さま、すごーい。あっという間に倒しちゃったね」

「あんなん、ちょろいもんやで」

 ほんまはドキドキもんやったけど、そういう事にしとこ。

 サエちゃんが俺の手を掴んで広場の方へ引っ張っていく。

 アンナさんは相変わらず澄ましてるが。

 あ、腕組みしてきた。

 ニコッと笑ってる。

 笑顔も綺麗や。

 両手に花で悦に入ってると村長が近づいてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...