38 / 39
救世主
病室で
しおりを挟む
翌日センタは、凪沙の父親に連れられて東京武道館に来ていた。
凪咲も一緒だった。
第二武道場へ入ると凪沙の父親は友人を見つけて声をかけた。
「よお、武藤」
「おお、相川。彼が昨日電話で言ってた子かい?いい身体をしてるなぁ」
友人は凪沙と話しているセンタのTシャツ越しの体と見えている腕を見て言った。
「うん。何でも父親が大学の時に全日本で優勝しているらしい」
「ふーん、なんて名前だ?」
「九十九って名前だが、お前知ってるか」
「おお、その人なら知ってるぞ。そうか、あの人の息子かぁ」
センタは凪沙の父親に友人を紹介され、最低限の道具を借りて身につけた。
センタと対面し竹刀を構えた時友人は唸った。
隙がない。
それだけではなく、動こうとした瞬間に竹刀が飛んできそうで動けなかった。
暫くして固まったままの友人を促すように、センタの体が気合で膨れ上がり、友人が思わず竹刀でよけようとした瞬間に、センタの竹刀の先が友人の小手を打っていた。
二度目の試合は、構えてすぐにセンタの竹刀が消えたと思ったら面を取られていた。
三度目は流石に一方的では悪いと思ったのか、何度かは竹刀を交えたが、そのセンタの竹刀がやたらと重くすぐに小手を取られて終わった。
試合が終わり互いに挨拶を交わしたあと友人はぐったりとしていたが、センタは涼しい顔で汗もかいていなかった。
「あっさりと負けたなぁ。武藤」
「ああ、歯が立たなかったよ。バケモンだぜ、あの子は」
「そんなに強いのか」
「ああ、お前には分からんだろうな。竹刀が刀のように見えて怖いんだよ。強い人とは何人もやったがこんなことは初めでだ。すごい奴もいるもんだな」
「ふーん……」
その後センタは凪沙の父親を通じて友人の武藤に呼ばれ東京へ行き、彼の知り合いや噂を聞いた人達と試合をしたが、誰もセンタに勝てなかった。
センタは凪沙の父親の友人に呼ばれると凪沙に会えるので喜んでいた。
そして大阪だけでなく東京でもセンタの名前が広まっていった。
夏休みも終わりに近づいたある日、センタたち三人に玲弥の母親から電話がかかってきた。
それは玲弥が意識を取り戻し、会いたいと言っているので病院に来てくれないかというものだった。
三人は数日後に待ち合わせをして教えてもらった病院に行った。
そして入口で待っていた母親に連れられて玲弥の病室に入っていった。
「玲弥君、戻ってこれて良かったな!」
病室で見る玲弥は痩せてはいたが妄想の世界で話した玲弥だった。
「元気そうね。玲弥君」
「うん。ありがとう。まだ、身体に力が入らないんだけどさ」
「どうだい?戻ってきた感想は」
「やっぱり現実の方がいいね。向こうの世界も楽しかったんだけどさ。特に君たちが来てくれてからはずっと見てたけど面白かった」
「ん?玲弥君ひょっとして何もかも見てたん?」
「え?……」
凪沙の顔が赤くなった。
「そうだよ?ああ……君たちの事は二人だけになったら見ないようにしてた」
「そうかぁ、ところでさ、あの世界はまだあるみたいやけどあのまま残すん?」
「消せるのかどうかも分からないからそのままにしてるけど、どうなんだろうね。勝手に消えるんだろうか」
「出来れば残してくれた方がありがたいんやけどな」
「え?あ、そうか。君たちは遠距離だもんな。自分たちで作ればいいんじゃないの?」
「ああ、そういう手もあるか」
「それはいいけどさ、今日は来てくれてありがとう。お礼を言いたかったんだ。本当にありがとう。君たちが来てくれなかったらこうやって戻ってくることも出来なかった。君たちは僕にとって救世主だよ」
「僕達も役に立ててよかってよ。それに楽しかったし、いい経験もさせてもらった。僕達にとって忘れられない夏休みになったよ」
それから四人は妄想の世界の思い出話で盛り上がっていった。
凪咲も一緒だった。
第二武道場へ入ると凪沙の父親は友人を見つけて声をかけた。
「よお、武藤」
「おお、相川。彼が昨日電話で言ってた子かい?いい身体をしてるなぁ」
友人は凪沙と話しているセンタのTシャツ越しの体と見えている腕を見て言った。
「うん。何でも父親が大学の時に全日本で優勝しているらしい」
「ふーん、なんて名前だ?」
「九十九って名前だが、お前知ってるか」
「おお、その人なら知ってるぞ。そうか、あの人の息子かぁ」
センタは凪沙の父親に友人を紹介され、最低限の道具を借りて身につけた。
センタと対面し竹刀を構えた時友人は唸った。
隙がない。
それだけではなく、動こうとした瞬間に竹刀が飛んできそうで動けなかった。
暫くして固まったままの友人を促すように、センタの体が気合で膨れ上がり、友人が思わず竹刀でよけようとした瞬間に、センタの竹刀の先が友人の小手を打っていた。
二度目の試合は、構えてすぐにセンタの竹刀が消えたと思ったら面を取られていた。
三度目は流石に一方的では悪いと思ったのか、何度かは竹刀を交えたが、そのセンタの竹刀がやたらと重くすぐに小手を取られて終わった。
試合が終わり互いに挨拶を交わしたあと友人はぐったりとしていたが、センタは涼しい顔で汗もかいていなかった。
「あっさりと負けたなぁ。武藤」
「ああ、歯が立たなかったよ。バケモンだぜ、あの子は」
「そんなに強いのか」
「ああ、お前には分からんだろうな。竹刀が刀のように見えて怖いんだよ。強い人とは何人もやったがこんなことは初めでだ。すごい奴もいるもんだな」
「ふーん……」
その後センタは凪沙の父親を通じて友人の武藤に呼ばれ東京へ行き、彼の知り合いや噂を聞いた人達と試合をしたが、誰もセンタに勝てなかった。
センタは凪沙の父親の友人に呼ばれると凪沙に会えるので喜んでいた。
そして大阪だけでなく東京でもセンタの名前が広まっていった。
夏休みも終わりに近づいたある日、センタたち三人に玲弥の母親から電話がかかってきた。
それは玲弥が意識を取り戻し、会いたいと言っているので病院に来てくれないかというものだった。
三人は数日後に待ち合わせをして教えてもらった病院に行った。
そして入口で待っていた母親に連れられて玲弥の病室に入っていった。
「玲弥君、戻ってこれて良かったな!」
病室で見る玲弥は痩せてはいたが妄想の世界で話した玲弥だった。
「元気そうね。玲弥君」
「うん。ありがとう。まだ、身体に力が入らないんだけどさ」
「どうだい?戻ってきた感想は」
「やっぱり現実の方がいいね。向こうの世界も楽しかったんだけどさ。特に君たちが来てくれてからはずっと見てたけど面白かった」
「ん?玲弥君ひょっとして何もかも見てたん?」
「え?……」
凪沙の顔が赤くなった。
「そうだよ?ああ……君たちの事は二人だけになったら見ないようにしてた」
「そうかぁ、ところでさ、あの世界はまだあるみたいやけどあのまま残すん?」
「消せるのかどうかも分からないからそのままにしてるけど、どうなんだろうね。勝手に消えるんだろうか」
「出来れば残してくれた方がありがたいんやけどな」
「え?あ、そうか。君たちは遠距離だもんな。自分たちで作ればいいんじゃないの?」
「ああ、そういう手もあるか」
「それはいいけどさ、今日は来てくれてありがとう。お礼を言いたかったんだ。本当にありがとう。君たちが来てくれなかったらこうやって戻ってくることも出来なかった。君たちは僕にとって救世主だよ」
「僕達も役に立ててよかってよ。それに楽しかったし、いい経験もさせてもらった。僕達にとって忘れられない夏休みになったよ」
それから四人は妄想の世界の思い出話で盛り上がっていった。
0
あなたにおすすめの小説
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる