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第六章 嵐の前の静けさ
5.
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「本当、綾鷹様の周りの方って意地悪な人ばかり!」
大広間への廊下を歩きながら乙女はムッと唇を突き出す。
「そうじゃなくて、君がからかいやすいからじゃない?」
先程まで畏まっていた上ノ条の言葉使いがいきなり崩れる。
「それどういう意味ですか?」
「まんまだよ。君って見るからに天然っぽいよね?」
この男! 私に何か恨みでもあるのか? 上ノ条の方を見上げると、彼がニヤリと笑う。
「だけど……君ってある意味鋭いよね?」
益々意味が分からない、と乙女がハテナを浮かべていると上ノ条が激白する。
「僕はね綾鷹が好き。蘭子が君をライバル視するように、僕も君をライバル視しているってこと。君も何となくそう思っていたんじゃないの?」
乙女の足がピタリと止まる。
やっぱり! ドキドキと胸が高鳴り血が逆流する。
「おぉぉ! 生ゲイ!」
「失礼な人だね。僕は女性もいけるからバイだよ」
「生バイとは、美味しい……いや、バレたら追放ものでは?」
「君もだろ? 作家チェリー……」
「あぁぁぁ! しっ!」
乙女が唇に人差し指を当て早口で言う。
「どうして知って……あっ、貴方も国家親衛隊のお一人?」
「まぁ、そんなところ」
上ノ条の桜色した唇がニヤリと上がる。
美人すぎる。妖しく笑む上ノ条に目を奪われていると、彼が腹立たしげに言う。
「僕と綾鷹は幼馴染なの。僕はね、綾鷹のことが小さな頃から大好きだった。恋愛対象としてね。だから、君のことは絶対に認めない。でも、君を失い失意の底に陥る綾鷹は見たくない。だから、不本意だが僕も君を守ることにした」
「意外といい人なんですね」
思わず口を突き出た乙女の正直な言葉に、上ノ条は「本当に君は失礼な女だ」とムッとする。
「僕はね、正々堂々と闘いたいだけ。幽霊と闘いたくないだけ」
「それは……私が殺される、ということですか?」
上ノ条がフフフと顔を綻ばせる。
「その笑み、怖いんですけど」と乙女は顔を引き攣らせる。
「そうだよ。君は狙われている。綾鷹も言っていただろう?」
確かに、と乙女は頷く。
「敵は人を人とも思っていない欲に駆られた亡者だ。君みたいな者など虫けらも同じ」
虫けらって……と乙女が若干傷付いていると……。
「そんなライバルにもならない女……なのにどうしてだろう? 綾鷹は君を気に入っている。それが無性に悔しい! だから、僕は自分が納得するまで君を守りつつ観察することにした」
観察って、と乙女は呆れる。
「本当に綾鷹様を含め、彼の周りの人たちって……失礼極まりない変人ばかりですね」
「お褒め頂き恐悦至極に存じます」
上ノ条が馬鹿にしたように笑い、恭しくお辞儀をする。
「とにかくだ。君は自分の命を守るために、敵と味方の区別を咄嗟に判断し、見極めなければいけない。僕は君を嫌っているが君の敵ではない」
あれっ、と乙女は思う。
「もしかしたら、そのことが一番言いたかったことですか?」
「まさか! 僕は君にライバル宣言をしたかっただけ」
だが、そう否定しながらも彼の頬は朱に染まる。それを見ながら、もしかしたら、綾鷹同様、厭な人だと思う人が味方なのではないだろうか、と乙女は思うのだった。
大広間への廊下を歩きながら乙女はムッと唇を突き出す。
「そうじゃなくて、君がからかいやすいからじゃない?」
先程まで畏まっていた上ノ条の言葉使いがいきなり崩れる。
「それどういう意味ですか?」
「まんまだよ。君って見るからに天然っぽいよね?」
この男! 私に何か恨みでもあるのか? 上ノ条の方を見上げると、彼がニヤリと笑う。
「だけど……君ってある意味鋭いよね?」
益々意味が分からない、と乙女がハテナを浮かべていると上ノ条が激白する。
「僕はね綾鷹が好き。蘭子が君をライバル視するように、僕も君をライバル視しているってこと。君も何となくそう思っていたんじゃないの?」
乙女の足がピタリと止まる。
やっぱり! ドキドキと胸が高鳴り血が逆流する。
「おぉぉ! 生ゲイ!」
「失礼な人だね。僕は女性もいけるからバイだよ」
「生バイとは、美味しい……いや、バレたら追放ものでは?」
「君もだろ? 作家チェリー……」
「あぁぁぁ! しっ!」
乙女が唇に人差し指を当て早口で言う。
「どうして知って……あっ、貴方も国家親衛隊のお一人?」
「まぁ、そんなところ」
上ノ条の桜色した唇がニヤリと上がる。
美人すぎる。妖しく笑む上ノ条に目を奪われていると、彼が腹立たしげに言う。
「僕と綾鷹は幼馴染なの。僕はね、綾鷹のことが小さな頃から大好きだった。恋愛対象としてね。だから、君のことは絶対に認めない。でも、君を失い失意の底に陥る綾鷹は見たくない。だから、不本意だが僕も君を守ることにした」
「意外といい人なんですね」
思わず口を突き出た乙女の正直な言葉に、上ノ条は「本当に君は失礼な女だ」とムッとする。
「僕はね、正々堂々と闘いたいだけ。幽霊と闘いたくないだけ」
「それは……私が殺される、ということですか?」
上ノ条がフフフと顔を綻ばせる。
「その笑み、怖いんですけど」と乙女は顔を引き攣らせる。
「そうだよ。君は狙われている。綾鷹も言っていただろう?」
確かに、と乙女は頷く。
「敵は人を人とも思っていない欲に駆られた亡者だ。君みたいな者など虫けらも同じ」
虫けらって……と乙女が若干傷付いていると……。
「そんなライバルにもならない女……なのにどうしてだろう? 綾鷹は君を気に入っている。それが無性に悔しい! だから、僕は自分が納得するまで君を守りつつ観察することにした」
観察って、と乙女は呆れる。
「本当に綾鷹様を含め、彼の周りの人たちって……失礼極まりない変人ばかりですね」
「お褒め頂き恐悦至極に存じます」
上ノ条が馬鹿にしたように笑い、恭しくお辞儀をする。
「とにかくだ。君は自分の命を守るために、敵と味方の区別を咄嗟に判断し、見極めなければいけない。僕は君を嫌っているが君の敵ではない」
あれっ、と乙女は思う。
「もしかしたら、そのことが一番言いたかったことですか?」
「まさか! 僕は君にライバル宣言をしたかっただけ」
だが、そう否定しながらも彼の頬は朱に染まる。それを見ながら、もしかしたら、綾鷹同様、厭な人だと思う人が味方なのではないだろうか、と乙女は思うのだった。
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