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第七章 甘い誘惑
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『常磐邸は有閑マダムの会長であらせられる常磐公爵婦人の別邸です』
紅子の言葉を思い出した乙女は、車窓から屋敷を見上げ、「これが別邸?」だったら本邸はどれだけ凄いのだろうと感嘆の息を吐く。
「いらっしゃいませ」
屋敷のエントランス前に車が横付けされると、常磐邸の者であろう男性がドアを開け深々とお辞儀をする。
「乙女様、ではごゆるりとお楽しみ下さい」
車から降りる乙女に國光がバックミラー越しに微笑む。
どうやら國光も綾鷹に『乙女をよろしく』と頼まれた一人らしい。
「私は控えの間に待機しております。何かございましたら携帯電話にご連絡下さい。すぐ馳せ参じます」
過保護もいいところだな、と乙女は苦笑いを浮かべながら「ありがとうございます」と礼を述べて車を降りる。
「いらっしゃいませ」
豪華な彫刻が施された木製の玄関ドア前で、高級そうな黒の燕尾服に蝶ネクタイ姿の男性が仰々しく挨拶をする。
この家の執事だろうか? 乙女は菊衛門に似たその人を見ながら、やっぱり燕尾服を新調しなければ、と決意を新たにする。
「梅大路綾鷹様のお見合い相手、桜小路乙女様ですね。私は常磐の執事、米俵重也と申します。皆様、もうお集まりです。どうぞこちらへ」
「――もしかしたら、私、遅刻ですか?」
「いえ、そうではございません。乙女様の到着は時間通りでございます」
顔を青くする乙女を落ち着かせるように重也が穏やかに言う。
「古参のメンバー方と集合時間が違っただけです」
「ああ、そういうことですか」
長い廊下を行きながら乙女はホッとする。
「私、何も聞かされていないのですがメンバーの方は何人いらっしゃるのですか?」
「本日お集まりになっているのは七名です」
重也曰く、メンバーは全部で十六名いるそうだ。
「いずれも常磐の奥様が選ばれた名家中の名家の方々ばかりでございます」
公爵と伯爵は共に高位に位置付けされているが、二つの間には見えないバリアがあり、やはり、色々なところで差別化されている。
「七名……」
乙女は口の中で呟きながら、怖い方々じゃなかったらいいけど、と重也の後に続く。
「こちらでございます」
案内されたのは裏庭にある豪華な温室だった。
和之国は東之国・西之国・南之国・北之国の中央に位置し、他の国のような四季がない。年中、春のように穏やかな気候で過ごしやすい国だった。
だからだろう。四季を味わうために高位の邸宅には温室が設えてあることが多い。
当然、梅大路の家にも『夏の間』『秋の間』『冬の間』と呼ばれる温室があり、専門のチームが管理していた。だが、常磐邸のそれは輪を掛けて凄かった。
「皆様は温室の中央のお部屋にいらっしゃいます」
重成曰く、春・夏・秋・冬に分けられた部屋の中央にお茶室があるらしい。
今、乙女が進んでいる廊下は、左手に真っ赤な紅葉が目を引く秋の風景、右手に向日葵が咲き誇る夏の風景があった。
『乙女様、お約束絶対にお忘れなく!』
出掛けに紅子に頼まれた用件を思い出す。
『常磐邸の噂高い温室を是非写真に収めて帰って下さいまし。今後の参考に致しますゆえ』
紅子曰く、常磐邸は最高位ということからか、かなりベールに包まれているらしい。
『ずっと以前、一度だけ雑誌の温室特集に常磐邸の温室が紹介されてことがありましたが、それはもう美しいお庭でした』
だから、今回はあれこれ言わず送り出してくれたのだな、と少女のような紅子を思い、乙女は「いっぱい撮ってくるから待っていてね」と呟く。
紅子の言葉を思い出した乙女は、車窓から屋敷を見上げ、「これが別邸?」だったら本邸はどれだけ凄いのだろうと感嘆の息を吐く。
「いらっしゃいませ」
屋敷のエントランス前に車が横付けされると、常磐邸の者であろう男性がドアを開け深々とお辞儀をする。
「乙女様、ではごゆるりとお楽しみ下さい」
車から降りる乙女に國光がバックミラー越しに微笑む。
どうやら國光も綾鷹に『乙女をよろしく』と頼まれた一人らしい。
「私は控えの間に待機しております。何かございましたら携帯電話にご連絡下さい。すぐ馳せ参じます」
過保護もいいところだな、と乙女は苦笑いを浮かべながら「ありがとうございます」と礼を述べて車を降りる。
「いらっしゃいませ」
豪華な彫刻が施された木製の玄関ドア前で、高級そうな黒の燕尾服に蝶ネクタイ姿の男性が仰々しく挨拶をする。
この家の執事だろうか? 乙女は菊衛門に似たその人を見ながら、やっぱり燕尾服を新調しなければ、と決意を新たにする。
「梅大路綾鷹様のお見合い相手、桜小路乙女様ですね。私は常磐の執事、米俵重也と申します。皆様、もうお集まりです。どうぞこちらへ」
「――もしかしたら、私、遅刻ですか?」
「いえ、そうではございません。乙女様の到着は時間通りでございます」
顔を青くする乙女を落ち着かせるように重也が穏やかに言う。
「古参のメンバー方と集合時間が違っただけです」
「ああ、そういうことですか」
長い廊下を行きながら乙女はホッとする。
「私、何も聞かされていないのですがメンバーの方は何人いらっしゃるのですか?」
「本日お集まりになっているのは七名です」
重也曰く、メンバーは全部で十六名いるそうだ。
「いずれも常磐の奥様が選ばれた名家中の名家の方々ばかりでございます」
公爵と伯爵は共に高位に位置付けされているが、二つの間には見えないバリアがあり、やはり、色々なところで差別化されている。
「七名……」
乙女は口の中で呟きながら、怖い方々じゃなかったらいいけど、と重也の後に続く。
「こちらでございます」
案内されたのは裏庭にある豪華な温室だった。
和之国は東之国・西之国・南之国・北之国の中央に位置し、他の国のような四季がない。年中、春のように穏やかな気候で過ごしやすい国だった。
だからだろう。四季を味わうために高位の邸宅には温室が設えてあることが多い。
当然、梅大路の家にも『夏の間』『秋の間』『冬の間』と呼ばれる温室があり、専門のチームが管理していた。だが、常磐邸のそれは輪を掛けて凄かった。
「皆様は温室の中央のお部屋にいらっしゃいます」
重成曰く、春・夏・秋・冬に分けられた部屋の中央にお茶室があるらしい。
今、乙女が進んでいる廊下は、左手に真っ赤な紅葉が目を引く秋の風景、右手に向日葵が咲き誇る夏の風景があった。
『乙女様、お約束絶対にお忘れなく!』
出掛けに紅子に頼まれた用件を思い出す。
『常磐邸の噂高い温室を是非写真に収めて帰って下さいまし。今後の参考に致しますゆえ』
紅子曰く、常磐邸は最高位ということからか、かなりベールに包まれているらしい。
『ずっと以前、一度だけ雑誌の温室特集に常磐邸の温室が紹介されてことがありましたが、それはもう美しいお庭でした』
だから、今回はあれこれ言わず送り出してくれたのだな、と少女のような紅子を思い、乙女は「いっぱい撮ってくるから待っていてね」と呟く。
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