妄想女医・藍原香織の診察室

Piggy

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迷走編

13話【off duty】新條 浩平:「……シたの?」(藍原編)

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 うひゃーっ、また見ちゃったわ! なんだかんだいって、やっぱり楓ちゃん、大橋くんのこと好きなんだ。我慢できなくなって、あんなとこで、えっち始めちゃうくらい……。
 ううう、今思い出してもこっちがうずうずしちゃうわ、感じてる楓ちゃん、相変わらず可愛くて。あのふたり、本当はもう付き合ってるんじゃないのかしら? あたしのお膳立てなんて、きっともういらないくらいね。
 でも、ふたりが見つかってよかったわ。あのまま小山内くんとふたりきりだったらどうしようかと思った。小山内くん、いい体格してたし、とにかくナニがでかかったし、やたら体を寄せてくるから、こっちももう暴発しそうだったのよね。ああでも暴発といえば、小山内くんよりも楓ちゃんと大橋くんの濡れ場! あれに勝る起爆剤はないわねっ。もうどうしてくれんのよ、巻き込み事故としか思えないこの疼き。何とかしないと、とても寝られたもんじゃないわ……。

 カチャッ。ガチャガチャ。

 あれ、部屋の鍵が開かない。

 カチャッ。ガチャガチャ。

 あれ、反対回しでもダメだ。……むむ? 何かこれ、前にもあったような……。

 と思ったら、突然目の前のドアが開いて。

「……先生。また間違えてるよ?」
「うひゃあ!? またやっちゃった、ごめんなさい新條くん、またもやこんな夜中にッ!」
「……全然いいけど。どうしたの先生、また酔っぱらってるの?」

 ジャージ姿の新條くんが、ニコニコしながら出てきた。もう12時近いけど、まだ起きてたのね。

「いや、今日はそんな酔ってないんだけど、ついうっかりエロエロ考えてたら、じゃない、いろいろ考えてたら、自分の部屋を通り過ぎちゃったみたいっ」

 新條くんが声をあげて笑った。

「ははっ、エロいこと考えてたんだ? 俺にも教えて?」

 あたしのいい間違いをさらっと受け止めてくれて、何だかほっとする。もうヤケになってあんな告白しちゃったけど、あれから新條くん、本当にあたしのこと、受け入れてくれるみたい。

「ねえ先生、明日休み? せっかくだからさ、おいでよ」

 新條くんがドアを大きく開けてくれる。あたしは何だかほんわかして、吸い込まれるように新條くんの部屋に入った。

「でさ、何考えてたの? 飲みにでも行ってたの?」

 座卓の上に缶チューハイを2本置いて、新條くんがいう。そう、何を考えていたかというと!

「ねえ、知ってた!? 楓ちゃんと大橋くん、デキてるみたいよ!?」
「え、そうなの? でも楓さん、大橋のことただのセフレっていってたよ」
「え」

 うそ、新條くんにあっさり返された。

「ああでも照れ隠しなのかな? ほら、こないだ先生が合コンに行ったとき、楓さんと大橋が幹事だったじゃん? あのあと、あのふたり、ホテルに行ったらしいよ。大橋は楓さんのこと好きだけど、楓さんはどうなんだろうね? でも、セフレっていうわりにはすごく仲よさそうだったけど。じゃあ、大橋の片思いが実ったのかな? ……って、藍原先生、今日ふたりと会ってたの?」
「そうなの、あのふたり、相性よさそうなのに何だか煮え切らないみたいだから、ちょっとあたしが恋のキューピッドになってやろうと思って、誘ったのよ」
「誘ったって……三人で出かけたの?」
「ううん、あと――」

 そこまでいって、口をつぐむ。……やだ、あたし、新條くんの気持ち何も考えてなかった。でも、今更ごまかせないし……。
 新條くんの目があたしをじーっと見て、それから覗き込んできた。

「……先生、うそつくのヘタクソだから、隠さなくていいよ?」

 うう、新條くん、どうしてこんなときでも優しいの? 今になって、急に胸がズキズキ痛んできた。

「……あのね、合コンで会った人に、遊びに行こうって誘われて……」
「うん」
「それで、最初は断ったんだけど、大橋くんと楓ちゃん誘うから4人でっていわれて……」
「うん」
「それで、大橋くんと楓ちゃんをくっつけよう作戦を思いついて……」
「……うん」
「で、4人で出かけちゃったの」
「……そっか」

 新條くんはニコニコして聞いてる。

「あ、あの……怒らないの……?」

 あたしは新條くんの恋人じゃないのかもしれないけど、新條くんの気持ちを知ってて、あんなことやこんなことまでして、それでほかの男の人とも遊びに行くなんて……やっぱり、ダメだよね。新條くんを、傷つけたよね……?
 新條くんは、困ったように笑った。

「んーと、そりゃまあうれしくはないけど、でも、先生が大橋たちをくっつけたくてわざわざダブルデートしたっていうの、先生らしいと思ったよ。ほら、先生って、友達思いだから」
「……ごめんなさい……。でも、楓ちゃんたちはそれなりにうまく行ってるみたいだし、もう小山内くんとは会わないから」
「小山内……? 4年の、小山内さん?」
「小山内慎一くん。……知ってるの?」
「……うん、噂くらいは……」

 新條くんが、ちょっとだけうつむいた。噂って何だろう? 新條くんを不安にさせるような噂なのかな……? また胸がズキズキしだす。

「そっか……小山内さんか」

 そういうと、新條くんはあたしをまっすぐ見つめていった。

「それで、先生…………シたの?」

 突然直球で聞かれて、ビクッとする。

「……シた。シてない!」

 ああっ、またもやテンパっておかしな回答にっ!

「……どっち?」

 ううう、もうやだ、でも身から出た錆ってやつよね。正直に答えないと……。

「あっ、あのっ、いろいろ妄想はしました! でも、実際には、してませんっ! ごめんなさい……」

 新條くんが笑った。

「先生、何で謝ってるの。俺、いったじゃん? 先生がエロくて妄想ばっかしてるの、わかってて好きだっていってるんだから、先生は気にしなくていいんだよ」

 ……ダメだ、新條くん、優しすぎるよ。

「妄想なんてさ、男がAV見て抜くのと同じでしょ。気にしないよ」
「……ほんとに?」
「うん。まあ欲をいえば、その妄想の相手が俺だったらな……とかは思うけど」

 えへへ、と新條くんが笑う。……なんだ、それだったら。

「……新條くんなら、もう何度も、あたしの妄想に登場してるよ?」
「え、そうなの?」
「……うん。あたしの中では、新條くん、いっぱいえっちなこと、もうあたしにしてる」

 ……やだ、ちょっといい過ぎちゃった! やっぱりまだお酒が残ってるのかな、あたし、新條くんに心を許しすぎかも……。

「……先生」

 気がついたら新條くんの顔が目の前に迫ってて、あたしは唇を奪われながら床に押し倒された。
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