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第33話 最も大切なもの
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レネの授かった女神の祝福、それは「相手の最も大切なものが視える力」。
今までずっと、何度視ても、グレイの「最も大切なもの」はイアンだった。
頭に浮かび上がってくるイアンの笑顔を見るたび、レネは燃えるような嫉妬心と絶望に焼かれ、自分の愛が報われることなどないのだと、悲嘆に暮れた。
最後にこの力をグレイに対して使ったのは、いつだったか。確か一月以上、前のことだ。もう傷付きたくなくて、レネは二度とこの力を使うまいと、封印してきた。
(でも……今なら、もしかしたら……。グレイはイアンじゃなくて、一番に俺を……)
そう思ったものの、この期に及んでも、イアンはためらった。
もし今でも、これほど情熱的に求められている今でも、グレイの「最も大切なもの」がイアンだったら――。そう想像するだけで、声なき悲鳴があがり、心臓が冷たく凍り付く。
「どうした、レネ? ぼんやりして……もっとキャラメル舐めるか?」
グレイがそう言って、またもや口移しに柔らかい飴をレネの中に押し込んでくる。
その甘く濃厚な――幸福に満ち溢れた味わいが、レネの勇気を奮い起こしてくれた。
愛おしい想い人と唇を重ねながら、レネは視た。
グレイの、「最も大切なもの」を。
「……っ!」
(あっ……あっ……あっ‼)
レネの頭に浮かび上がってきたイメージは、他の誰でもない、自分の笑顔だった。
切実に求めてきた、ただ一つの祈り、ただ一人から向けられる愛。
それが、すぐそばにあった。
レネの願いは、遂に叶えられたのである。
「ああ、ああ……ああ、ああ、グレイ、グレイ……」
激しく泣き始めたレネを見て、グレイは慌てた。
「どうした、レネ⁈ すまん、痛かったか? やめ……」
「違う、やめないで、グレイ、やめないでください。俺を、離さないで……」
上ずり掠れた懇願の声が、震える吐息と共にグレイの耳をくすぐる。レネの歓喜に満ち溢れた表情を見たグレイは、彼の涙に込められた感情が、悪いものではないことを覚った。
「レネ、大丈夫だ。もう何も心配は要らない」
レネの頬を優しく撫で、涙を拭いながら、グレイは言葉を続けた。
「契約結婚を始めた最初の頃……俺は、金さえ貰えれば愛など要らないと思っていた。……でも、今は違う。日を追うごとにおまえを愛しいと思うようになって……この想いを自覚した俺は、おまえの体だけでなく、おまえの心も欲しいと思うようになった」
「俺も、……グレイ、……俺もグレイが欲しくて、諦めきれなかった。何度も何度も諦めようとした……でも、無理だったんだ。ずっと、好きでたまらなかった。だから……グレイの心が手に入らないなら、せめて体だけでもと……そう思って契約結婚を持ち掛けた。……でも、そのうち前よりもっと、苦しくなった。本物の愛が欲しくて……たまらなくなった」
頬をさするグレイの手に自分の手を重ねながら、レネはうっとりと目を閉じて甘い吐息をついた。そして吐き出した息にのせるように、言葉を紡ぐ。
「……これは、夢じゃないですよね? 俺たちは本物の双夫になって、この先もずっと、一緒にいられるんですよね?」
「ああ、そうだ。安心しろレネ、これは夢じゃない。明日から忙しくなるぞ。俺は友人に声をかけ、顧客に挨拶回りに行って、引継ぎを知人に頼み込み、荷物を整理して、おまえとの新生活に向けて様々な準備をしなければ。公爵領はどんな気候なんだ? 王都より暑いのか寒いのか? 俺は王都から出たことがないからな、さっぱりわからん。特産物は何だろうな? 名物料理は? 水は豊かなんだろうか? どんな木々が植わっている?」
一気にそうまくしたてたグレイの真剣な表情を見て、レネはクスクスと笑い出した。グレイはホッとして、レネの目を覗き込みながら言った。
「どうだ、この現実味、夢じゃないだろうが?」
「ああ、夢じゃない。……このキャラメルみたいに甘くて、切なくて、濃厚な……現実だ。……それにこの……」
レネは腰をにじり寄せて、抜けかけのグレイの雄を自ら濡れた秘所に招き入れた。
「ん、んんッ……ああ……」
繋がった箇所から、甘美な快感が全身に走る。レネはうっとりと囁いた。
「グレイの太いの……。今まで夢に見たのより、ずっと硬くて、大きくて、張りがあって、すごく……やらしい。……こんなの、俺の想像を越えてる」
「フッ……レネ、今まで夢の中で、俺に何をされたんだ? どんな想像をした? 言ってみろ、夢をなぞって上書きしてやる」
パッと、レネが恥ずかし気に目を伏せた。思わずぶちまけてしまった淫らな想像を思い出し、まるでうぶな少年のように恥じらう。その姿を見たグレイの劣情に、火が点いた。
「さあ、レネ、言ってみろ、どんな風に俺に抱かれた? どんな体位で? 一つずつ、再現してやろう……こうか?」
「あぐッ! ヒィッ!」
繋がったままいきなり体勢を変えられたレネは、次の瞬間、対面座位の姿勢でグレイと向き合っていた。グレイの大きな手が尻を支え、結合部分を密着させる。深く沈みこんだグレイの膨らんだ亀頭が奥に当たり、痺れるような快感がレネの全身に走った。
「んッ、ああああッ!」
「レネ……ああ……もっとおまえが欲しい。もっと、もっとだ……。何度抱いても、抱き足りない……。……くぅッ! イイぞ、最高だ……レネ!」
グレイの指がレネの双丘に埋まり、腰の突き上げと連動してレネの体を揺さぶる。それは徐々にスピードを増し、二人は再び、激しい愛の営みに身を投じた。お互いの愛を、たっぷりと愛おしい相手に注ぎながら、何度も、何度も。
カーテンの引かれた薄暗い寝室の中で、二人はただひたすら、互いを求めあった。
絶頂の嵐の只中で、体の外も内もしとどに濡れながら。
二人はまだこの時、知らなかった。
この先レネの新開発の魔道具で、二人の快楽がもっと激しく、もっと深く、もっと淫らに展開されてゆくことを。そしてその度、互いに対する愛が更に磨かれ、二人を強く深く濃く、結び付けてゆくことを。
*+。゜+。:.゚・♡ 終わり ♡・゜+。:.゚。+*
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
今までずっと、何度視ても、グレイの「最も大切なもの」はイアンだった。
頭に浮かび上がってくるイアンの笑顔を見るたび、レネは燃えるような嫉妬心と絶望に焼かれ、自分の愛が報われることなどないのだと、悲嘆に暮れた。
最後にこの力をグレイに対して使ったのは、いつだったか。確か一月以上、前のことだ。もう傷付きたくなくて、レネは二度とこの力を使うまいと、封印してきた。
(でも……今なら、もしかしたら……。グレイはイアンじゃなくて、一番に俺を……)
そう思ったものの、この期に及んでも、イアンはためらった。
もし今でも、これほど情熱的に求められている今でも、グレイの「最も大切なもの」がイアンだったら――。そう想像するだけで、声なき悲鳴があがり、心臓が冷たく凍り付く。
「どうした、レネ? ぼんやりして……もっとキャラメル舐めるか?」
グレイがそう言って、またもや口移しに柔らかい飴をレネの中に押し込んでくる。
その甘く濃厚な――幸福に満ち溢れた味わいが、レネの勇気を奮い起こしてくれた。
愛おしい想い人と唇を重ねながら、レネは視た。
グレイの、「最も大切なもの」を。
「……っ!」
(あっ……あっ……あっ‼)
レネの頭に浮かび上がってきたイメージは、他の誰でもない、自分の笑顔だった。
切実に求めてきた、ただ一つの祈り、ただ一人から向けられる愛。
それが、すぐそばにあった。
レネの願いは、遂に叶えられたのである。
「ああ、ああ……ああ、ああ、グレイ、グレイ……」
激しく泣き始めたレネを見て、グレイは慌てた。
「どうした、レネ⁈ すまん、痛かったか? やめ……」
「違う、やめないで、グレイ、やめないでください。俺を、離さないで……」
上ずり掠れた懇願の声が、震える吐息と共にグレイの耳をくすぐる。レネの歓喜に満ち溢れた表情を見たグレイは、彼の涙に込められた感情が、悪いものではないことを覚った。
「レネ、大丈夫だ。もう何も心配は要らない」
レネの頬を優しく撫で、涙を拭いながら、グレイは言葉を続けた。
「契約結婚を始めた最初の頃……俺は、金さえ貰えれば愛など要らないと思っていた。……でも、今は違う。日を追うごとにおまえを愛しいと思うようになって……この想いを自覚した俺は、おまえの体だけでなく、おまえの心も欲しいと思うようになった」
「俺も、……グレイ、……俺もグレイが欲しくて、諦めきれなかった。何度も何度も諦めようとした……でも、無理だったんだ。ずっと、好きでたまらなかった。だから……グレイの心が手に入らないなら、せめて体だけでもと……そう思って契約結婚を持ち掛けた。……でも、そのうち前よりもっと、苦しくなった。本物の愛が欲しくて……たまらなくなった」
頬をさするグレイの手に自分の手を重ねながら、レネはうっとりと目を閉じて甘い吐息をついた。そして吐き出した息にのせるように、言葉を紡ぐ。
「……これは、夢じゃないですよね? 俺たちは本物の双夫になって、この先もずっと、一緒にいられるんですよね?」
「ああ、そうだ。安心しろレネ、これは夢じゃない。明日から忙しくなるぞ。俺は友人に声をかけ、顧客に挨拶回りに行って、引継ぎを知人に頼み込み、荷物を整理して、おまえとの新生活に向けて様々な準備をしなければ。公爵領はどんな気候なんだ? 王都より暑いのか寒いのか? 俺は王都から出たことがないからな、さっぱりわからん。特産物は何だろうな? 名物料理は? 水は豊かなんだろうか? どんな木々が植わっている?」
一気にそうまくしたてたグレイの真剣な表情を見て、レネはクスクスと笑い出した。グレイはホッとして、レネの目を覗き込みながら言った。
「どうだ、この現実味、夢じゃないだろうが?」
「ああ、夢じゃない。……このキャラメルみたいに甘くて、切なくて、濃厚な……現実だ。……それにこの……」
レネは腰をにじり寄せて、抜けかけのグレイの雄を自ら濡れた秘所に招き入れた。
「ん、んんッ……ああ……」
繋がった箇所から、甘美な快感が全身に走る。レネはうっとりと囁いた。
「グレイの太いの……。今まで夢に見たのより、ずっと硬くて、大きくて、張りがあって、すごく……やらしい。……こんなの、俺の想像を越えてる」
「フッ……レネ、今まで夢の中で、俺に何をされたんだ? どんな想像をした? 言ってみろ、夢をなぞって上書きしてやる」
パッと、レネが恥ずかし気に目を伏せた。思わずぶちまけてしまった淫らな想像を思い出し、まるでうぶな少年のように恥じらう。その姿を見たグレイの劣情に、火が点いた。
「さあ、レネ、言ってみろ、どんな風に俺に抱かれた? どんな体位で? 一つずつ、再現してやろう……こうか?」
「あぐッ! ヒィッ!」
繋がったままいきなり体勢を変えられたレネは、次の瞬間、対面座位の姿勢でグレイと向き合っていた。グレイの大きな手が尻を支え、結合部分を密着させる。深く沈みこんだグレイの膨らんだ亀頭が奥に当たり、痺れるような快感がレネの全身に走った。
「んッ、ああああッ!」
「レネ……ああ……もっとおまえが欲しい。もっと、もっとだ……。何度抱いても、抱き足りない……。……くぅッ! イイぞ、最高だ……レネ!」
グレイの指がレネの双丘に埋まり、腰の突き上げと連動してレネの体を揺さぶる。それは徐々にスピードを増し、二人は再び、激しい愛の営みに身を投じた。お互いの愛を、たっぷりと愛おしい相手に注ぎながら、何度も、何度も。
カーテンの引かれた薄暗い寝室の中で、二人はただひたすら、互いを求めあった。
絶頂の嵐の只中で、体の外も内もしとどに濡れながら。
二人はまだこの時、知らなかった。
この先レネの新開発の魔道具で、二人の快楽がもっと激しく、もっと深く、もっと淫らに展開されてゆくことを。そしてその度、互いに対する愛が更に磨かれ、二人を強く深く濃く、結び付けてゆくことを。
*+。゜+。:.゚・♡ 終わり ♡・゜+。:.゚。+*
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