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Ⅲ 誓約
6. 真実の契り(2)
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「んんっ……はぁっ、あっ、ま……魔王……!」
レイの喉から掠れた甘い喘ぎ声が漏れ、魔王の猛りを一層奮い立たせる。魔王は動きを再開させると、激しくレイを穿ち始めた。
「ああっ、ああああっ!魔王っ……んぅっ!……うああああっ!」
魔王の<主根>に奥深くを突き上げられ、レイがひときわ高く鳴く。
それは悲鳴ではなく、快楽の艶を帯びていた。
「くっ……レイ……レイ……、っ……!」
「や……ぁっ!……っ! うっ、んんっ、うあああああっ!」
縋る場所を求めて、レイの両腕が魔王の体に強く絡みつく。
レイの昂ぶりは二人の体に挟まれ、あとからあとから溢れ出す先走りの蜜にまみれて、しとどに濡れていた。限界はもう、すぐそこまで来ていた。それに気付いた魔王が、動きを早める。
「レイ……まだ……達くな。待ってくれ……私と……共にっ……達ってくれ……はっ、……はぁっ、くっ! ……もうっ……よい、ぞ!」
しかしレイに合図は、必要なかった。魔王の達く瞬間が、レイには手に取るように分かっていた。
「……んっ、あっ、あああああああ!!」
待ち望んだ時が訪れ、二人は同時に絶頂を迎えた。
そしてその刹那、魂が肉体の枷から解き放たれ、名も知らない空間へと飛び立った。
二人は心でも一つに繋がったまま、どこか不思議な空間で、何かを見つめていた。その何かを言葉にすることは出来そうになかったが、もしあえて言うならば、それは「永遠」と呼ばれるものに、一番近い。
瞬きするほどの僅かな間のことだったが、そこにいた間、二人には時間の概念がなく、色も形もなく、あらゆる不快な現象から解放されていた。
何も無いところに、全てがあった。
二人は共に、ただひたすらに満たされ――ただひたすらに、静かだった。
――言葉を絶する体験のあと、気が付けば二人は、いつもの寝台の上で折り重なり、抱き合っていた。
そこは先程まで広がっていた不思議な空間ではなく、見慣れた<最果ての間>の主寝室だった。
まだ二人とも息が乱れ、汗もまったく乾いていない。魔王にいたっては、今なお精の放出を続けていた。
二人とも呆然としながら、お互いの体温だけが、現実のよすがをあらわす確かなものだと感じていた。
やがてレイがぽつりと、「重い……」と呟いた。
魔王が我にかえり、慌てて上体を起こす。
ずるりと、魔王がレイの中から<主根>を引き抜くと、レイが小さく声を上げた。
魔王の重みから解放されても、レイの下半身の痺れは残ったままで、寝返りも打てない。密着しての交合に、不自然な姿勢を強いられ、大きく開かされた両脚が、ガクガクと小刻みに震えている。
魔王はその様子を見て、レイの腰から膝をさすり、温かい掌を何度も往復させ、摩擦し続けた。徐々にレイの脚に血の気が戻り、感覚が甦ってくる。
「んっ……ふ……。……はぁっ……魔王……もう……いい。もう……楽になったから……」
「…………」
魔王は摩擦をやめると、じっとレイの目を覗き込んだ。
何かを必死で抑え込み、魔王は無言でレイに許しを請うていた。
レイはその目を見つめ返した。
(そうか……俺の血が、欲しいのか……)
――なぜ分かるのか、もうそれを疑問にも思わなかった。
レイは腕を伸ばすと、魔王の首に回し、そっと抱き寄せた。
「いいぜ……やるよ。……でも、飲みすぎんなよ……」
レイは首を傾け、魔王の眼前に晒した。
荒い息が耳にかかり、やがて、湿った唇が首筋に吸いついてくる。
魔王は魔族特有の吸血方法で、首筋の血管から皮膚ごしにレイの血をすすった。
「んっ……!」
レイが一度だけ、小さく身震いする。
血がゆっくりと吸い出される感覚に、一瞬怖気が走った。
しかしその後に訪れたのは、先程一つに繋がったときと同じ、目も眩むような陶酔感だった。
(俺……いつからこんな……変態になったんだ……?)
他人事のようにそう思いながら、レイはうっとりと、魔王の喉が鳴る音を聞いていた。
魔王は夢中でレイの血を貪っていたが、やがて意志の力を総動員させ、レイの首筋から唇をもぎ離した。
激しい呼吸のため大きく開かれた口から、血に染まった舌が覗き、赤い雫がレイの胸に一滴落ちる。
魔王は即座にその血を舐め取った。
それをぼんやり見ていたレイが、「うまいか……?」と問うと、魔王はそれには答えず、「大丈夫か?」と心配気にレイの顔を覗き込んだ。
「ああ……大丈夫だ。……フワフワしてて……すごく気持ちいい……それに……眠い……」
激しい行為のあとに、いくらか血を吸い出されたのだから眠いのは当然だが、この心地よい浮遊感は何だろうと、レイは不思議に思った。
「レイ……私の血を……飲むか?」
思いがけないことを言われ、レイは眉をひそめた。その表情を見て、魔王が弁解するように続ける。
「おまえも、私の血を飲めば分かる。絆で結ばれた相手の血が、どれほど甘美な味か。……試してみるか?」
そう言うと魔王は、手首に視線を落とし、皮膚を切り裂く呪文を唱えようとした。レイには魔王のような吸血手段は身についていないため、皮膚を破って血を流出させるつもりなのだ。それを知り、レイはとっさに魔王の手首を掴んで阻止した。
「やめろ! 痛いだろ!」
「レイ……私は構わぬ。むしろおまえと……血を交換したいのだ」
「やめろ……やめてくれ……俺は嫌だ」
魔王の手首を掴むレイの手も、声も、震えていた。
レイは、怖かった。
魔王と体を繋げ、不思議な体験をし、自ら血を与えた今、もしこの男の血を飲めば、もう二度と戻れない――正体不明の漠然とした恐怖が、レイの心をガチガチに固め、すくみあがらせていた。
二度と戻れない――いったいどこへ戻ろうというのか。どこへ行こうというのか、それすら分からない。
突然フリューイの顔が浮かび、やっと分かった。
(そうか……。兄さんに軽蔑されるのが……俺は怖いんだ……)
魔王の血を飲んでしまえば、あの仙界の清浄な大地は、二度と自分を受け入れてくれないという気がした。そして何より、兄の信頼を失くし、あの優しい眼差しを一生失うかもしれないという恐怖が、レイの心を凍りつかせた。
「レイ……レイ、泣くな……悪かった。無理強いはせぬ。泣かないでくれ……」
魔王の言葉に、レイは初めて自分が声を上げて泣いていることに気が付いた。
優しく抱き締められ、背中をさすられながら、レイはおずおずと、自分も魔王の体に腕を回した。
「レイ……!」
魔王が一層強く、レイを抱き締める。
「愛してる、レイ……愛してる……」
(俺も……愛してる……)
――もう、言ってしまおうか。
心地よい浮遊感に包まれ、甘く痺れた頭で、レイはふと、告白の衝動に駆られた。
「魔王……俺……」
その声音と態度に、常ならぬ気配を感じ、魔王は胸を高鳴らせてレイの次の言葉を待った。
しかし次の瞬間、背中に回されていたレイの腕から力が抜け、静かな寝息が聞こえ始めた。
「レイ……それはないだろう……」
魔王は悲しげに呟くと、いつものようにレイを抱え上げ、浴室へと向かった。
レイの喉から掠れた甘い喘ぎ声が漏れ、魔王の猛りを一層奮い立たせる。魔王は動きを再開させると、激しくレイを穿ち始めた。
「ああっ、ああああっ!魔王っ……んぅっ!……うああああっ!」
魔王の<主根>に奥深くを突き上げられ、レイがひときわ高く鳴く。
それは悲鳴ではなく、快楽の艶を帯びていた。
「くっ……レイ……レイ……、っ……!」
「や……ぁっ!……っ! うっ、んんっ、うあああああっ!」
縋る場所を求めて、レイの両腕が魔王の体に強く絡みつく。
レイの昂ぶりは二人の体に挟まれ、あとからあとから溢れ出す先走りの蜜にまみれて、しとどに濡れていた。限界はもう、すぐそこまで来ていた。それに気付いた魔王が、動きを早める。
「レイ……まだ……達くな。待ってくれ……私と……共にっ……達ってくれ……はっ、……はぁっ、くっ! ……もうっ……よい、ぞ!」
しかしレイに合図は、必要なかった。魔王の達く瞬間が、レイには手に取るように分かっていた。
「……んっ、あっ、あああああああ!!」
待ち望んだ時が訪れ、二人は同時に絶頂を迎えた。
そしてその刹那、魂が肉体の枷から解き放たれ、名も知らない空間へと飛び立った。
二人は心でも一つに繋がったまま、どこか不思議な空間で、何かを見つめていた。その何かを言葉にすることは出来そうになかったが、もしあえて言うならば、それは「永遠」と呼ばれるものに、一番近い。
瞬きするほどの僅かな間のことだったが、そこにいた間、二人には時間の概念がなく、色も形もなく、あらゆる不快な現象から解放されていた。
何も無いところに、全てがあった。
二人は共に、ただひたすらに満たされ――ただひたすらに、静かだった。
――言葉を絶する体験のあと、気が付けば二人は、いつもの寝台の上で折り重なり、抱き合っていた。
そこは先程まで広がっていた不思議な空間ではなく、見慣れた<最果ての間>の主寝室だった。
まだ二人とも息が乱れ、汗もまったく乾いていない。魔王にいたっては、今なお精の放出を続けていた。
二人とも呆然としながら、お互いの体温だけが、現実のよすがをあらわす確かなものだと感じていた。
やがてレイがぽつりと、「重い……」と呟いた。
魔王が我にかえり、慌てて上体を起こす。
ずるりと、魔王がレイの中から<主根>を引き抜くと、レイが小さく声を上げた。
魔王の重みから解放されても、レイの下半身の痺れは残ったままで、寝返りも打てない。密着しての交合に、不自然な姿勢を強いられ、大きく開かされた両脚が、ガクガクと小刻みに震えている。
魔王はその様子を見て、レイの腰から膝をさすり、温かい掌を何度も往復させ、摩擦し続けた。徐々にレイの脚に血の気が戻り、感覚が甦ってくる。
「んっ……ふ……。……はぁっ……魔王……もう……いい。もう……楽になったから……」
「…………」
魔王は摩擦をやめると、じっとレイの目を覗き込んだ。
何かを必死で抑え込み、魔王は無言でレイに許しを請うていた。
レイはその目を見つめ返した。
(そうか……俺の血が、欲しいのか……)
――なぜ分かるのか、もうそれを疑問にも思わなかった。
レイは腕を伸ばすと、魔王の首に回し、そっと抱き寄せた。
「いいぜ……やるよ。……でも、飲みすぎんなよ……」
レイは首を傾け、魔王の眼前に晒した。
荒い息が耳にかかり、やがて、湿った唇が首筋に吸いついてくる。
魔王は魔族特有の吸血方法で、首筋の血管から皮膚ごしにレイの血をすすった。
「んっ……!」
レイが一度だけ、小さく身震いする。
血がゆっくりと吸い出される感覚に、一瞬怖気が走った。
しかしその後に訪れたのは、先程一つに繋がったときと同じ、目も眩むような陶酔感だった。
(俺……いつからこんな……変態になったんだ……?)
他人事のようにそう思いながら、レイはうっとりと、魔王の喉が鳴る音を聞いていた。
魔王は夢中でレイの血を貪っていたが、やがて意志の力を総動員させ、レイの首筋から唇をもぎ離した。
激しい呼吸のため大きく開かれた口から、血に染まった舌が覗き、赤い雫がレイの胸に一滴落ちる。
魔王は即座にその血を舐め取った。
それをぼんやり見ていたレイが、「うまいか……?」と問うと、魔王はそれには答えず、「大丈夫か?」と心配気にレイの顔を覗き込んだ。
「ああ……大丈夫だ。……フワフワしてて……すごく気持ちいい……それに……眠い……」
激しい行為のあとに、いくらか血を吸い出されたのだから眠いのは当然だが、この心地よい浮遊感は何だろうと、レイは不思議に思った。
「レイ……私の血を……飲むか?」
思いがけないことを言われ、レイは眉をひそめた。その表情を見て、魔王が弁解するように続ける。
「おまえも、私の血を飲めば分かる。絆で結ばれた相手の血が、どれほど甘美な味か。……試してみるか?」
そう言うと魔王は、手首に視線を落とし、皮膚を切り裂く呪文を唱えようとした。レイには魔王のような吸血手段は身についていないため、皮膚を破って血を流出させるつもりなのだ。それを知り、レイはとっさに魔王の手首を掴んで阻止した。
「やめろ! 痛いだろ!」
「レイ……私は構わぬ。むしろおまえと……血を交換したいのだ」
「やめろ……やめてくれ……俺は嫌だ」
魔王の手首を掴むレイの手も、声も、震えていた。
レイは、怖かった。
魔王と体を繋げ、不思議な体験をし、自ら血を与えた今、もしこの男の血を飲めば、もう二度と戻れない――正体不明の漠然とした恐怖が、レイの心をガチガチに固め、すくみあがらせていた。
二度と戻れない――いったいどこへ戻ろうというのか。どこへ行こうというのか、それすら分からない。
突然フリューイの顔が浮かび、やっと分かった。
(そうか……。兄さんに軽蔑されるのが……俺は怖いんだ……)
魔王の血を飲んでしまえば、あの仙界の清浄な大地は、二度と自分を受け入れてくれないという気がした。そして何より、兄の信頼を失くし、あの優しい眼差しを一生失うかもしれないという恐怖が、レイの心を凍りつかせた。
「レイ……レイ、泣くな……悪かった。無理強いはせぬ。泣かないでくれ……」
魔王の言葉に、レイは初めて自分が声を上げて泣いていることに気が付いた。
優しく抱き締められ、背中をさすられながら、レイはおずおずと、自分も魔王の体に腕を回した。
「レイ……!」
魔王が一層強く、レイを抱き締める。
「愛してる、レイ……愛してる……」
(俺も……愛してる……)
――もう、言ってしまおうか。
心地よい浮遊感に包まれ、甘く痺れた頭で、レイはふと、告白の衝動に駆られた。
「魔王……俺……」
その声音と態度に、常ならぬ気配を感じ、魔王は胸を高鳴らせてレイの次の言葉を待った。
しかし次の瞬間、背中に回されていたレイの腕から力が抜け、静かな寝息が聞こえ始めた。
「レイ……それはないだろう……」
魔王は悲しげに呟くと、いつものようにレイを抱え上げ、浴室へと向かった。
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