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Act 1
30. 海の見える豪華な部屋
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一通り散策を楽しみ、日が暮れる頃二人はホテルへと戻ってきた。
真也はチェックインを済ませると、ホテルスタッフの案内を断って、皓一と一緒に予約した部屋へ向かった。預けた荷物はすでに部屋に運び込まれているらしい。
結構複雑な作りのホテル内の通路を、真也は迷いもなく進む。下調べは完璧だと、真也はドヤ顔を皓一に向けた。皓一は真也の気遣いが嬉しくなった。案内を断ったのも、ゲイカップルであることを周囲に知られたくないと思っている皓一への、気遣いだろう。
部屋に辿り着いて中に入った皓一は、想像をはるかに上回る部屋の豪華さに口をあんぐり開けた。
「え……。え……?! 何、この部屋、階段、あるぞ……?! ちょ……待て、上っ、上の階、ロフトみたいな二階がある!! えええええっ?! こんな部屋、有りか?!」
真也の取った部屋は、まさかのメゾネットタイプだった。しかもゆったりとした、かなり豪華な部屋の造りだ。南欧風のインテリアで統一された白く明るい部屋は、1階部分がリビングと水回り、2階部分がベッドルームになっている。大きな窓のある一面は二階部分まで吹き抜けになっていて、海が一望でき、広いバルコニーにはおしゃれ空間が広がっていた。
「あ……あ……あ……」
「あ」しか言えなくなった皓一は、口を開けたまま頬を上気させ、目を輝かせている。
星が瞬き始めた夜空と、静かな海。溜息が出そうなほどロマンチックな非日常的景色を、皓一は窓から眺めていた。窓を開けると、波のせせらぎが優しい音楽のように耳に届く。
真也は、突っ立ったまま目を潤ませている皓一の傍に来て、同じ景色を見ながら囁いた。
「どうだ? 気に入ったか? すごくロマンチックだろ……?」
「ああ……。な、なんか……王子と入れ替わった乞食みたいな気分だよ、俺……」
後ろから抱きしめてきた真也の腕に、皓一は手を這わせて愛撫するようにさすった。その皓一の手を取り、真也はゆっくりと皓一の前に回った。そして跪(ひざまず)くと、皓一の手の甲に口付けを落とし、言った。真剣な眼差しと、心に沁み込むようないい声で。
「俺の王子様……俺をあなたの奴隷として、生涯お傍に置いてください」
「!」
皓一は真っ赤になって照れまくり、叫んだ。
「あっ……あほか、王子はおまえだろ!」
「なら、王子が二人だな。皓一王子、さっそく荷物をほどいてお風呂にしませんか」
芝居がかった調子でそう言いながら、真也はバスルームに湯を張りに向かった。
皓一はまだドキドキしている心臓を持て余しながら、もうしばらくそこで、海を見ていた。
「皓一、湯が張れたぞ。先に入るといい」
バスルームから真也の声が響く。
荷ほどきして必要なものを取り出した皓一は、それらを手にバスルームへと向かった。
よくあるホテルのユニットバスとは違い、この豪華な部屋のトイレとバスルームはそれぞれ独立したつくりになっていた。しかもバスルームは洗い場も浴槽も広々していて、男二人が一緒に入ってもかなり余裕がある。それを見て皓一は思いついた。
「ええと、そのぉ…………」
「どうした、皓一?」
問いかけてくる真也の方を見ずに、皓一は背中ごしにゴニョゴニョと言った。
「い……一緒に、入るか? いいいいいい、嫌ならいいけど!」
思い切って言ったものの、皓一は既に後悔し始めていた。真也から返事はなく、皓一はそれを返答に困っていると解釈したのだ。
「や、やっぱり、今の無し! 一人で入るから気にすんな!」
そう言って服を脱ぎ始めたところ、いきなり後ろから抱きしめられた。音も気配もなくいつの間に近づいてきたのか、皓一はびっくりして思わず口から「ヒッ!」なんて情けない声が出る。そんな皓一を逃すまいとするかのようにがっしりと抱きしめ、真也は悩まし気な溜息を皓一の耳に吹きかけながら囁いた。
「嫌なわけ、ないだろ……」
セクシーな超低音ボイスが、皓一の耳元で炸裂する。体中の神経がこぞって反応し、まるで音によって性的な愛撫を受けたような感覚に、皓一は体を震わせた。そうして固まっている間に、真也は手際よく皓一を裸にむき、皓一がハッと我に返ったときには、二人は裸の肌を触れ合わせて熱いシャワーを浴びていた。
真也はチェックインを済ませると、ホテルスタッフの案内を断って、皓一と一緒に予約した部屋へ向かった。預けた荷物はすでに部屋に運び込まれているらしい。
結構複雑な作りのホテル内の通路を、真也は迷いもなく進む。下調べは完璧だと、真也はドヤ顔を皓一に向けた。皓一は真也の気遣いが嬉しくなった。案内を断ったのも、ゲイカップルであることを周囲に知られたくないと思っている皓一への、気遣いだろう。
部屋に辿り着いて中に入った皓一は、想像をはるかに上回る部屋の豪華さに口をあんぐり開けた。
「え……。え……?! 何、この部屋、階段、あるぞ……?! ちょ……待て、上っ、上の階、ロフトみたいな二階がある!! えええええっ?! こんな部屋、有りか?!」
真也の取った部屋は、まさかのメゾネットタイプだった。しかもゆったりとした、かなり豪華な部屋の造りだ。南欧風のインテリアで統一された白く明るい部屋は、1階部分がリビングと水回り、2階部分がベッドルームになっている。大きな窓のある一面は二階部分まで吹き抜けになっていて、海が一望でき、広いバルコニーにはおしゃれ空間が広がっていた。
「あ……あ……あ……」
「あ」しか言えなくなった皓一は、口を開けたまま頬を上気させ、目を輝かせている。
星が瞬き始めた夜空と、静かな海。溜息が出そうなほどロマンチックな非日常的景色を、皓一は窓から眺めていた。窓を開けると、波のせせらぎが優しい音楽のように耳に届く。
真也は、突っ立ったまま目を潤ませている皓一の傍に来て、同じ景色を見ながら囁いた。
「どうだ? 気に入ったか? すごくロマンチックだろ……?」
「ああ……。な、なんか……王子と入れ替わった乞食みたいな気分だよ、俺……」
後ろから抱きしめてきた真也の腕に、皓一は手を這わせて愛撫するようにさすった。その皓一の手を取り、真也はゆっくりと皓一の前に回った。そして跪(ひざまず)くと、皓一の手の甲に口付けを落とし、言った。真剣な眼差しと、心に沁み込むようないい声で。
「俺の王子様……俺をあなたの奴隷として、生涯お傍に置いてください」
「!」
皓一は真っ赤になって照れまくり、叫んだ。
「あっ……あほか、王子はおまえだろ!」
「なら、王子が二人だな。皓一王子、さっそく荷物をほどいてお風呂にしませんか」
芝居がかった調子でそう言いながら、真也はバスルームに湯を張りに向かった。
皓一はまだドキドキしている心臓を持て余しながら、もうしばらくそこで、海を見ていた。
「皓一、湯が張れたぞ。先に入るといい」
バスルームから真也の声が響く。
荷ほどきして必要なものを取り出した皓一は、それらを手にバスルームへと向かった。
よくあるホテルのユニットバスとは違い、この豪華な部屋のトイレとバスルームはそれぞれ独立したつくりになっていた。しかもバスルームは洗い場も浴槽も広々していて、男二人が一緒に入ってもかなり余裕がある。それを見て皓一は思いついた。
「ええと、そのぉ…………」
「どうした、皓一?」
問いかけてくる真也の方を見ずに、皓一は背中ごしにゴニョゴニョと言った。
「い……一緒に、入るか? いいいいいい、嫌ならいいけど!」
思い切って言ったものの、皓一は既に後悔し始めていた。真也から返事はなく、皓一はそれを返答に困っていると解釈したのだ。
「や、やっぱり、今の無し! 一人で入るから気にすんな!」
そう言って服を脱ぎ始めたところ、いきなり後ろから抱きしめられた。音も気配もなくいつの間に近づいてきたのか、皓一はびっくりして思わず口から「ヒッ!」なんて情けない声が出る。そんな皓一を逃すまいとするかのようにがっしりと抱きしめ、真也は悩まし気な溜息を皓一の耳に吹きかけながら囁いた。
「嫌なわけ、ないだろ……」
セクシーな超低音ボイスが、皓一の耳元で炸裂する。体中の神経がこぞって反応し、まるで音によって性的な愛撫を受けたような感覚に、皓一は体を震わせた。そうして固まっている間に、真也は手際よく皓一を裸にむき、皓一がハッと我に返ったときには、二人は裸の肌を触れ合わせて熱いシャワーを浴びていた。
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