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沈丁花禄郎でございます!
沈丁花禄郎でございます!
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episode4 「惑星から来た少年」
沈丁花禄郎は愛車のスーパーカブ『そよ風号』に乗って鼻歌まじりに
河川敷を走っていた。
駅前で沈丁花が出しているラーメン屋台(名前はまだなく沈丁花は屋号を何にするか悩んでいた)の食材を買いに行く途中だった。
「おや?この辺じゃ見かけない坊主だな」と沈丁花は呟いた。
河川敷に小学校三年くらいの少年がお尻をついて座っていた。
「どうした?坊主」と沈丁花は少年に話しかけた。
すると「なんだよおっさん!あっちいけよ!」と少年は言った。
沈丁花「おじさんは沈丁花禄郎という者だ。怪しいもんじゃないよ」と免許証を見せた。
少年「何のようだ?」
沈丁花「名前なんていうんだ?」
少年「うるせー!バカ!」
少年は走ってどこかへ行ってしまった。
次の日
沈丁花はまた河川敷に来ていた。
今日ここに来るのは4回目だった。
ようやく昨日の少年を見つけて「タケル。だよな?」と沈丁花は話しかけた。
少年「何でおいらの名前知ってんだ?」
沈丁花「ランドセルに書いてあったからよ。それより腹減ってねーか?」
少年「減ってねーよ!」
沈丁花「おじさん、いなり寿司作ってきたからよ。一緒に食べようぜ!な?」
タケルは沈丁花が差し出したいなり寿司を手で地面に払ってしまった。
沈丁花は「食べもんを粗末にすんじゃねえ。いいな?」と言って地面に落ちた
いなり寿司を拾って食べた。
「ほら?毒なんか入ってないだろ?」と笑った。
「バカじゃねーの!」と言ってまた走って帰ってしまった。
次の日
またタケルは河川敷にしゃがんで座っていた。
タケルにとって本当に沈丁花が嫌だったらまたここへは来なかったはずである。
沈丁花は少年を見つけると「腹減ってんだろ?」といなり寿司と自家製の
漬物を差し出した。
「ぐぅぅぅ」 少年のお腹が鳴った。
「しょうがねーなー。食ってやるよ!」
タケルはいなり寿司を頬張った。
「こりゃまずいや!おっさん料理の才能ねーな」
「ところでタケルは転校生か?」
「青森から来ただ」
「まだ友達できないのか?」
「みんなおいらのこと嘘つき少年と呼ぶだ。おっさんUFO信じる?」
「タケルが見たなら俺はUFOもタケルも信じる!」
「おいら父ちゃんいねーから、父ちゃんの星を探してよく空を見るだ」
「なるほど!そうか。いい事教えてくれた。俺も母ちゃん、父ちゃんの星を探すぞ」
沈丁花は嬉しそうに言った。
夕方になり、ふたりの見上げた空に綺麗な一番星が流れた。
毎日のように、沈丁花とタケルはふたりで空を眺めて星やUFOを探していた。
そこへタケルのクラスの男の子たちがやって来た。
クラスの男の子たち「沈ちゃん、タケルと知り合いなの?」
「おう!親友だよ コイツはこの町のクリスチャーノ・ロナウドと呼ばれてるんだ」
「スゲー!タケル!あっち行ってサッカーやろうぜ!」とクラスの男の子はグラウンド
に向かって走って行った。
タケルは二、三歩歩いた後、沈丁花のほうを振り返って立ち止まった。
なんとも言えない表情だった。
沈丁花は「早く行ってこい!」と大きく叫んだ。
クラスメイトの男の子たちもUFOのことをきっかけにタケルと仲良くなりたかっただけなのだ。
たったそれだけのことなのだ。
沈丁花はそれから毎日河川敷に通ったが、タケルの姿はなかった。
友達と楽しそうにはしゃでいる姿をいろいろな場所で見たが、沈丁花は話しかけなかった。
一ヶ月が過ぎた。
沈丁花はいつものように屋台のラーメン屋を切り盛りしていた。
そこへタケルとお母さんがやって来た。
「おお!タケル!久しぶりだな!元気にしてたか?お母さんはじめまして!」
「良かったらラーメン食べてってください。味自慢なんですよ。暖簾にも書いてまして」と嬉しそうに笑った。
親子はせまい屋台のベンチに座った。
親子はサービスでチャーシューのたくさん乗ったラーメンを食べはじめた。
タケルは「相変わらずおっさんの料理はまずいや」と言った。
お母さんはすかさず「コラ!すみません!私が甘やかしてるせいで。仕事が忙しくて
教育が行き届いていなくて」
「お母さん、タケルはまっすぐな目をしています。子供はみな心の中で親を思ってるもんです」と沈丁花は笑った。
「偉そうな事言ってじゃねー!」タケルは小さく叫んだ。
「そりゃ悪かった」三人で大きく笑った。
「私の仕事の都合で北海道に引っ越すことになったんです。沈丁花さんにはお世話になって。この子今日まで、家で毎日のように沈ちゃん、沈ちゃんて…」
タケルはなんとなく恥ずかしくてうつむいた。
「急ですが、今日の飛行機で。そろそろ電車に乗らないと。本当にありがとうございました!落ち着いたら連絡します。ではそろそろ失礼します」
ふたりは駅へと歩きはじめた。
沈丁花は二人に向かって「おふくろさん大事にするんだぞ!食べ物を粗末にするなよ!
でっかい夢を見るんたぞ!!」と叫んだ。
するとタケルが振り返って、沈丁花のもとへ歩み寄って来た。
タケルは何やらバッグからポッキーを取り出した。
「食えよ」
「いいのか?」
「ほら!」
「おっさんこういう時、空気読まないから三本貰っちゃう」とゲラゲラ笑った。
次の瞬間、タケルは沈丁花のお腹を叩いて「えーい!バカヤロー!えーい!バカヤロー!』と泣きじゃくった。
「何があっても負けるんじゃないぞ!何くそーっ!てな」と言い、沈丁花はタケルを抱きしめた。
この時、ふたりにこの世のものとは思えないほどの綺麗な流れ星が降った。
別れた後、タケルはラーメン屋台を見ていた。
そこには『味自慢 一番星』という看板が大きく掲げられていた。
その中で「へい!お待ち!」と声を張り上げて働く沈丁花の姿を見て、タケルはどんな人にも平等に星が降るのだということ、誰もがみんなこの星のひとかけらなのだということ、そしてどんなに遠く離れても空を見上げれば同じ星を見ることができるということをなんとなく学んだ気がした
つづく
沈丁花禄郎は愛車のスーパーカブ『そよ風号』に乗って鼻歌まじりに
河川敷を走っていた。
駅前で沈丁花が出しているラーメン屋台(名前はまだなく沈丁花は屋号を何にするか悩んでいた)の食材を買いに行く途中だった。
「おや?この辺じゃ見かけない坊主だな」と沈丁花は呟いた。
河川敷に小学校三年くらいの少年がお尻をついて座っていた。
「どうした?坊主」と沈丁花は少年に話しかけた。
すると「なんだよおっさん!あっちいけよ!」と少年は言った。
沈丁花「おじさんは沈丁花禄郎という者だ。怪しいもんじゃないよ」と免許証を見せた。
少年「何のようだ?」
沈丁花「名前なんていうんだ?」
少年「うるせー!バカ!」
少年は走ってどこかへ行ってしまった。
次の日
沈丁花はまた河川敷に来ていた。
今日ここに来るのは4回目だった。
ようやく昨日の少年を見つけて「タケル。だよな?」と沈丁花は話しかけた。
少年「何でおいらの名前知ってんだ?」
沈丁花「ランドセルに書いてあったからよ。それより腹減ってねーか?」
少年「減ってねーよ!」
沈丁花「おじさん、いなり寿司作ってきたからよ。一緒に食べようぜ!な?」
タケルは沈丁花が差し出したいなり寿司を手で地面に払ってしまった。
沈丁花は「食べもんを粗末にすんじゃねえ。いいな?」と言って地面に落ちた
いなり寿司を拾って食べた。
「ほら?毒なんか入ってないだろ?」と笑った。
「バカじゃねーの!」と言ってまた走って帰ってしまった。
次の日
またタケルは河川敷にしゃがんで座っていた。
タケルにとって本当に沈丁花が嫌だったらまたここへは来なかったはずである。
沈丁花は少年を見つけると「腹減ってんだろ?」といなり寿司と自家製の
漬物を差し出した。
「ぐぅぅぅ」 少年のお腹が鳴った。
「しょうがねーなー。食ってやるよ!」
タケルはいなり寿司を頬張った。
「こりゃまずいや!おっさん料理の才能ねーな」
「ところでタケルは転校生か?」
「青森から来ただ」
「まだ友達できないのか?」
「みんなおいらのこと嘘つき少年と呼ぶだ。おっさんUFO信じる?」
「タケルが見たなら俺はUFOもタケルも信じる!」
「おいら父ちゃんいねーから、父ちゃんの星を探してよく空を見るだ」
「なるほど!そうか。いい事教えてくれた。俺も母ちゃん、父ちゃんの星を探すぞ」
沈丁花は嬉しそうに言った。
夕方になり、ふたりの見上げた空に綺麗な一番星が流れた。
毎日のように、沈丁花とタケルはふたりで空を眺めて星やUFOを探していた。
そこへタケルのクラスの男の子たちがやって来た。
クラスの男の子たち「沈ちゃん、タケルと知り合いなの?」
「おう!親友だよ コイツはこの町のクリスチャーノ・ロナウドと呼ばれてるんだ」
「スゲー!タケル!あっち行ってサッカーやろうぜ!」とクラスの男の子はグラウンド
に向かって走って行った。
タケルは二、三歩歩いた後、沈丁花のほうを振り返って立ち止まった。
なんとも言えない表情だった。
沈丁花は「早く行ってこい!」と大きく叫んだ。
クラスメイトの男の子たちもUFOのことをきっかけにタケルと仲良くなりたかっただけなのだ。
たったそれだけのことなのだ。
沈丁花はそれから毎日河川敷に通ったが、タケルの姿はなかった。
友達と楽しそうにはしゃでいる姿をいろいろな場所で見たが、沈丁花は話しかけなかった。
一ヶ月が過ぎた。
沈丁花はいつものように屋台のラーメン屋を切り盛りしていた。
そこへタケルとお母さんがやって来た。
「おお!タケル!久しぶりだな!元気にしてたか?お母さんはじめまして!」
「良かったらラーメン食べてってください。味自慢なんですよ。暖簾にも書いてまして」と嬉しそうに笑った。
親子はせまい屋台のベンチに座った。
親子はサービスでチャーシューのたくさん乗ったラーメンを食べはじめた。
タケルは「相変わらずおっさんの料理はまずいや」と言った。
お母さんはすかさず「コラ!すみません!私が甘やかしてるせいで。仕事が忙しくて
教育が行き届いていなくて」
「お母さん、タケルはまっすぐな目をしています。子供はみな心の中で親を思ってるもんです」と沈丁花は笑った。
「偉そうな事言ってじゃねー!」タケルは小さく叫んだ。
「そりゃ悪かった」三人で大きく笑った。
「私の仕事の都合で北海道に引っ越すことになったんです。沈丁花さんにはお世話になって。この子今日まで、家で毎日のように沈ちゃん、沈ちゃんて…」
タケルはなんとなく恥ずかしくてうつむいた。
「急ですが、今日の飛行機で。そろそろ電車に乗らないと。本当にありがとうございました!落ち着いたら連絡します。ではそろそろ失礼します」
ふたりは駅へと歩きはじめた。
沈丁花は二人に向かって「おふくろさん大事にするんだぞ!食べ物を粗末にするなよ!
でっかい夢を見るんたぞ!!」と叫んだ。
するとタケルが振り返って、沈丁花のもとへ歩み寄って来た。
タケルは何やらバッグからポッキーを取り出した。
「食えよ」
「いいのか?」
「ほら!」
「おっさんこういう時、空気読まないから三本貰っちゃう」とゲラゲラ笑った。
次の瞬間、タケルは沈丁花のお腹を叩いて「えーい!バカヤロー!えーい!バカヤロー!』と泣きじゃくった。
「何があっても負けるんじゃないぞ!何くそーっ!てな」と言い、沈丁花はタケルを抱きしめた。
この時、ふたりにこの世のものとは思えないほどの綺麗な流れ星が降った。
別れた後、タケルはラーメン屋台を見ていた。
そこには『味自慢 一番星』という看板が大きく掲げられていた。
その中で「へい!お待ち!」と声を張り上げて働く沈丁花の姿を見て、タケルはどんな人にも平等に星が降るのだということ、誰もがみんなこの星のひとかけらなのだということ、そしてどんなに遠く離れても空を見上げれば同じ星を見ることができるということをなんとなく学んだ気がした
つづく
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