1 / 6
黄色
しおりを挟む
この世界は色の世界。
色はその個性を表現し、なおかつ存在を表現する。
その中でも、黄色は好奇心を表した。
川辺に打ち上げられたその、両腕を回しても手がつかないほど巨大な、横たわる木の幹にストンと座り、地面に着かない両足をプラプラ遊ばせる。
『あ~あ、何か面白い物はないかな~』
足が濡れるのを構わず川との境に立ち、むにゃむにゃと、流れのせいで形を変える自分の顔が映った水面を見ていた。
そこでふと、川の中ほどまで行くとどうなるかと考えた。
黄色の驚くべきは、その行動力。
飛び込むと、姿が見えなくなった。
そんな様子をなんとはなしに見ていたのは、兄貴肌の青。青色の多いこの道は、青のお気に入りの散歩コースである。
『バカか、あいつは!!』
バカだバカだとは思っていたが、まさかここまでバカだとは思わない。
色持ちである自分達はその特徴が思考の基準として、行動に現れる。
この世界の川は深い。美しいグラデーションが現れるように、この世の神が、深く、広く、この世界を創ったのだ。
『だぁー‼言わんこっちゃない!浮いてこねえし‼‼』
川に飛び込み、深く潜った。青にとって、水の中はとても心地よい。
青の源、青が生まれた場所。
そうして浸っていたが、すぐにすべき事を思い出し、大きな手で、ガッと黄色を捕まえて水面から顔を出し、思いっきり新鮮な空気を一気に吸い込んだ。
咳き込む黄色を叱りつつ、その襟首を掴み、岸へと引きずり上げた。そこで、自分達のいるこの岸にそれ以外の存在が佇んでいるのを知った。
無色透明だ。
そいつは、ただ一言、『....馬鹿じゃないの?ね、黄色』と、呟くように言った。
『本当にそうだ、馬鹿かお前は!奥まで行けば、俺達色はは溶けてなくなる‼』
そうなのだ。深淵は何もかもを溶かして混ぜ、己の糧としてしまうのだ。
そうなれば最期、自分が何だったかも分からなくなる。
『……ゲホッ、ゴホッ、え、そうなの?』
なんとも魔の抜けた返事のせいで、青はため息を付き、無色透明は目を細め、黙ったまま、睨む様に黄色を見ていた。
黄色の長所は好奇心。ただその一方で、''無知"
でもあるのだ。
さっと考えてからすぐに、白は鼻を鳴らしてそっぽを向いた。その様子から、どうやらこれらの状況に興味を無くしたようだった。
何にも支配されず、何者にも染まらない無色透明は、考えも、行動も、どうも一つの事に落ち着くのが苦手である。
さっと、その場からいなくなってしまった。
おそらく、黄色の危機に反応して側にやってきたのだろう。
『あれは、色々とほっとけない質だからなぁ』
青はぼやき、頭をポリポリかいた。
『はぁ、黄色、学習したろ?これで…』
はて、襟首を掴んでいた筈だが、いつの間にか黄色は手の中からいなくなっていた。
『はぁ、これもまぁ、いつもの事か』
青がまたぼやき、自身も趣味の散歩に戻ることにする。
皆いても、皆混ざらず、濁らず、ともに生きる、この世界の理は、今日も変らず、現在を作り続ける。
はてさて、他には誰に会いましょう?
色はその個性を表現し、なおかつ存在を表現する。
その中でも、黄色は好奇心を表した。
川辺に打ち上げられたその、両腕を回しても手がつかないほど巨大な、横たわる木の幹にストンと座り、地面に着かない両足をプラプラ遊ばせる。
『あ~あ、何か面白い物はないかな~』
足が濡れるのを構わず川との境に立ち、むにゃむにゃと、流れのせいで形を変える自分の顔が映った水面を見ていた。
そこでふと、川の中ほどまで行くとどうなるかと考えた。
黄色の驚くべきは、その行動力。
飛び込むと、姿が見えなくなった。
そんな様子をなんとはなしに見ていたのは、兄貴肌の青。青色の多いこの道は、青のお気に入りの散歩コースである。
『バカか、あいつは!!』
バカだバカだとは思っていたが、まさかここまでバカだとは思わない。
色持ちである自分達はその特徴が思考の基準として、行動に現れる。
この世界の川は深い。美しいグラデーションが現れるように、この世の神が、深く、広く、この世界を創ったのだ。
『だぁー‼言わんこっちゃない!浮いてこねえし‼‼』
川に飛び込み、深く潜った。青にとって、水の中はとても心地よい。
青の源、青が生まれた場所。
そうして浸っていたが、すぐにすべき事を思い出し、大きな手で、ガッと黄色を捕まえて水面から顔を出し、思いっきり新鮮な空気を一気に吸い込んだ。
咳き込む黄色を叱りつつ、その襟首を掴み、岸へと引きずり上げた。そこで、自分達のいるこの岸にそれ以外の存在が佇んでいるのを知った。
無色透明だ。
そいつは、ただ一言、『....馬鹿じゃないの?ね、黄色』と、呟くように言った。
『本当にそうだ、馬鹿かお前は!奥まで行けば、俺達色はは溶けてなくなる‼』
そうなのだ。深淵は何もかもを溶かして混ぜ、己の糧としてしまうのだ。
そうなれば最期、自分が何だったかも分からなくなる。
『……ゲホッ、ゴホッ、え、そうなの?』
なんとも魔の抜けた返事のせいで、青はため息を付き、無色透明は目を細め、黙ったまま、睨む様に黄色を見ていた。
黄色の長所は好奇心。ただその一方で、''無知"
でもあるのだ。
さっと考えてからすぐに、白は鼻を鳴らしてそっぽを向いた。その様子から、どうやらこれらの状況に興味を無くしたようだった。
何にも支配されず、何者にも染まらない無色透明は、考えも、行動も、どうも一つの事に落ち着くのが苦手である。
さっと、その場からいなくなってしまった。
おそらく、黄色の危機に反応して側にやってきたのだろう。
『あれは、色々とほっとけない質だからなぁ』
青はぼやき、頭をポリポリかいた。
『はぁ、黄色、学習したろ?これで…』
はて、襟首を掴んでいた筈だが、いつの間にか黄色は手の中からいなくなっていた。
『はぁ、これもまぁ、いつもの事か』
青がまたぼやき、自身も趣味の散歩に戻ることにする。
皆いても、皆混ざらず、濁らず、ともに生きる、この世界の理は、今日も変らず、現在を作り続ける。
はてさて、他には誰に会いましょう?
0
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる