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休息と仕事

【昼】戸惑いと制服

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 「……こ……これが、制服……?」

 その台詞が口に出てしまう気持ちがよく分かる。確かに、これを制服として渡されたら、多くの人間が戸惑うだろう。

「……うん。それが、制服。正直、僕も二人がどこまでの話を聞いているか分かってないから、なんて言っていいか分からなくて……」

 ウミとモエは、お互いの顔と手に取った制服を、何度も交互に見比べた。
『僕達は、本当にこれを着るのか』とでも、言いたそうな顔をして。

「取り敢えず、着替えてみて。最初は慣れないと思うけど……。店内は薄暗いし、なんていうか、僕達はみんな、その格好だし、さ」

 アヤを見つめる二人の顔は、心なしか赤くなっている様だった。

「アヤさんも、普段はこれを?」

 モエが口を開いた。

「……うん。それを着てる。今日は、配膳とか、案内係だからね。この服着てるけど」

 黒服の制服を引っ張ってみせた。

「大丈夫だよ、って言っても、難しいかな……」
「き、着替えてみます」

 おずおずと二人は服を脱ぎ始めた。
 誰も喋らないその空間に、服の擦れる音と、脱いだ服が足元に落ちる音が響いた。

 一度脱いでしまえば、変わらないと思ったのだろうか。ニーソックスと首輪を付けるまで、時間はかからなかった。

「うん、それでオッケー。スースーして、落ち着かないよね。ははは……」

 ポリポリと頭を掻いて、アヤは二人を見た。隠すものが何もなく、全て露わになっているモエとウミは、先ほどよりも顔が赤く見える。

「「……!!」」

 アヤが視線のやり場に困ったことに気付いたのか、二人は同時に慌てて両手で股間を隠した。
 恥ずかしくないわけではないし、見られて平気なわけでもない。いたって普通の反応のはずだが、その格好が違和感を感じさせていた。

「えっ、あっ、ごめん! その、そんな見てたわけじゃないんだけど、見られてる気がしちゃうよね! 後ろ向くから、後ろ!」

 恥ずかしがる二人を見ていると、アヤも恥ずかしく思えてきてしまう。宣言通り、二人にクルッと背を向けた。

"……それでも、きっと、この後に起こるだろうことを考えたら、この格好なんか比べものにならないんだろな……"

 ふぅ、と、溜息をつく。

「……店長、呼んでくるね。二人はここで、待っててくれるかな?」

「あ、はい……」
「わかりました」

 モジモジとする二人には、新鮮さがある。この新鮮さは、歓迎会には必要なものだろう。アヤは今までの経験から、そう感じていた。

「じゃあ、行ってくるから。すぐに戻るよ」

 アヤはロッカールームを出て、事務室へと店長を呼びに行った。

『もう終わったのか。思ったより早かったな』という、店長の言葉をもらいながら、共にロッカールームへと戻る。

「おう、ちゃんと着替えたな。……夜のシフトについては話した通りだ。今日はお前達の歓迎会。しっかり歓迎されろよ」

 二人はピクッと反応して、身体を強張らせた。

「アヤ、先に行って、部屋に客を通せるよう準備をしてきてくれ。他の奴らがもうやっている筈だから、やるとしても手伝い程度だろうが」
「わかりました」
「コイツらは俺が連れて行く」

 アヤは一礼すると、歓迎会が行われる部屋へと姿を消した。
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