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ハイカブリ(同居人×女主/王子×女主/複数/媚薬/歪/二穴)
始まりの始まり_1
しおりを挟む「……あぁっ……!」
何か悪い夢を見たような気がして、ノイは声を上げて飛び起きた。
窓から射す光と、吹き込む少し冷たい空気は、ノイの心を落ち着ける。手を動かすと、布の感触。目を落とした先には、生成色のシーツ。そこはベッドの上だった。
「……ここは……次……? えっ……もう……なの……?」
キョロキョロと辺りを見回す。簡素な部屋だ。ベッドにキャビネットが置いてあり、小さな机と椅子があるだけの部屋。
「……誰なのよ、次の主人公は……」
はぁ、と大きく溜息を吐き、ノイはベッドから降りる。キシキシと音を立てる床は、無垢のように艶やかさはなかった。
小さな机に近づくと、その上に手鏡があることに気付く。ノイはそれを手にとって、自分の顔へと向けた。
「……幾つ……? うーん。ハタチくらい? スベスベしてる肌。羨ましいわ」
鏡に映ったその姿は、金髪碧眼、長さが腰まであるだろう髪は、とても良く手入れされているようだった。肌も白く、細すぎないその体は、栄養状態も悪くない。着ている服こそグレーがかった質素なワンピースだったが、器量も良く、あまり気にならなかった。
──ドタドタドタ──。
「……ん?」
──ガチャ。
「起きたかフレリア!」
「え……え?」
『フレリア』と呼ばれた。恐らく、今回のこの女性の名前だろう。男性が二人、ドアを開けて入ってきた。
「フレリア、体調は大丈夫なのか?」
「急に熱を出すから心配したよ?」
「あ……えと……うん……」
迫力のある二人にたじろぐ。ノックもせずに入ってきたところを見ると、この二人は兄だろうか。──兄でもノックの一つして欲しいものだが。
「……ごめんなさい……あの、ここはどこですか?」
「……は?」
「……え?」
おずおずとノイにとって当たり前の疑問を口にすると、二人の男性は目を見開いて、お互いの顔を見合わせた。
「何言ってるんだ?」
「その……記憶がなくて……ごめんなさい」
「……熱を出して、倒れたから?」
「……そうかもしれません。一時的なものかもしれませんが……その……」
「やべぇどうしようシア兄!」
「落ち着いてください。……私達のことも、何も覚えていないのかな?」
「……ごめんなさい」
ノイは下を向いた。【シア兄】と呼ばれた男性の瞳が、暗く淀んでいたから。
「貴方の名は【フレリア】です。私達は、そうですね。貴女には便宜上兄と呼ばれています。が、兄妹ではありません。孤児だった貴女を、私達の父が引き取ったのです」
「俺はランス。こっちはシア。俺が弟で、こっちが兄貴。お前が一番下な」
「ランス……シア……私は、【お兄さん】と呼んでいたの?」
「いいや。お前はそんな風には呼ばない。俺はランスだし、シア兄はシアだった」
「……そう」
「対外的に説明する時は兄、と。それ以外は敬語も使わないし、呼び捨てでしたよ」
シアは少し髪の長い、細身の男性だ。絵に描いたような美しさ、というのは、こういう人のことを言うのかもしれない。少し憂いのある表情に、丁寧な言葉遣い。
ランスはと言うと全く逆で、ガテン系のにーちゃんといった感じだ。短髪でがっしりした身体つき、日に焼けている。
二人とも背は高く、タイプは違えどどちらもイケメンの部類だろう。
「……名前を聞いても、思い出せない?」
「ごめんなさい……」
「まぁ、謝るなよ。飯食ったり、喋ったりするのを忘れたわけじゃないんだろ?」
わしゃわしゃとランスに頭を撫でられた。大きな手が心地良い。
──ドンドン──ドンドンドン!
「……ちっ」
「あのお方でしょうね」
「俺が行ってくる」
「あぁ。頼んだよ」
外から大きくドアを叩く音がする。ランスは一気に不機嫌になり、ドタバタと入口へと向かった。
「あの方、とは……?」
「……君は、会わない方が良い。特に今はね」
シアの目が更に淀んだ気がして、私はまた目を逸らした。
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