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魔王山荘編
第48話 アンデッド系モンスター
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アマリアの盾もそうだったが、更に自分に不釣り合いな装備を手に入れてしまったクニオは少し動揺していた。先ほどの試し切りは、多分素振りよりも軽かった。音も出なかったので空気を切り裂いても抵抗がゼロに近かったのだろう。とにかく試し切りは終わったので、クニオはグレゴリーが持ってきてくれていた鞘を受け取ると、刀身をそこに納めた。
「ありがとうございます」
まずはクニオはそう言ってサダヒデに頭を下げる。
「いや、儂も久々に面白い仕事ができて楽しかったよ。その刀なら魔王とも戦えるかもしれんのう」
とサダヒデは笑いながら言った。コウとグレゴリーは違う意味での笑いを堪えている。コルビーは『確かにこの刀であれば耐物理用の絶対防御(アイソレーション)も破ってしまうかもしれないな』と思ったがその場では黙っておいた。
「そういえばさ、ユキヒラが私用に短刀を作り直してくれたんだよ。膝に仕込んでた膝反丸をさ、クニオのやつと一緒でアダマンタイトで強化してくれたんだ。これ結構面白んだぜ」
そういうとコウは腰に差していた短刀を鞘から抜いて空に放り投げた。その短い刀は空を縦横無尽に飛び回る。そうして最後、クニオが切った巻き藁の残った下半分に突き刺さって止まった。
「な、風魔法で自由に操れるんだよ。いっつも私はやり過ぎだって文句を言うけど、これぐらいの感じだったら、普通に戦えるだろう?」
そう言ってコウは笑顔を見せる。
「拙僧もこれを作って頂いた」
そう言ってグレゴリーも、自分の首にかかっていた粒が大きめな数珠を両手で持って、頭から抜いて持ち上げた。それを今度は右拳に巻きつけながらこう言った。
「拙僧はどうも僧侶らしくないと言われることが多くて…ユキヒラ殿に話しましたら、数珠を首に巻くなどすればそれらしく見えるのではないかとアドバイスを頂きました」
いや、グレゴリー、君の宗派は一体何なんだというツッコミは口にせず、クニオはグレゴリーの動きを目で追った。
グレゴリーは先ほどコウの投げた短刀が突き刺さった巻き藁の前に移動すると、数珠を巻き付けた右拳を後ろに引いて構えた。先ほどの定光とは違い『ゴウッ』という大きな空気音と共に右拳は巻き藁にヒットする。『ボキッ』という音と共に巻き藁は根元から折れて、はるか遠くへ飛んで行った。
「ふざけんなよ。危なく私の刀もズワ湖まで飛んでく所じゃないか!!」
コウがそう言ってグレゴリーを睨んでいる。折れた巻き藁がはるか彼方に飛び去る前に、コウはかろうじて小刀の回収に成功していたようだ。手には先ほど巻き藁に刺さっていた小刀が戻ってきていた。
「おお、これは失礼した」
グレゴリーはそう謝ってガハハと笑う。特に反省はしていない様だ。そうしてクニオの方を向いて
「数珠とは言っても、鋼を通常密度の10倍ぐらいにまで圧縮して、アダマンタイトで強化してもらったので、こんな使い方もできるという事です。まぁ圧縮した分少々重たいですがな」
そう言ってまたガハハと笑う。
「50Kgぐらいありますから、クニオさんは装備しない方がいいでしょうね」
ユキヒラがクニオに向かってそう言った。クニオはそんな忠告は必要ないなと思いつつ、グレゴリーのパンチの威力はその数珠が無くても、以前からそれくらいあったような気もして、比較できないなと思った。
コルビーはその様子を黙って見ながら、このパーティーは攻撃力だけを言えば、既に自分を倒した勇者パーティーの実力を超えているような気もして複雑な気分だった。
「アダマンタイトは一かけらしかなかったのに、結構使いでがあるんですね」
クニオがそう言うと、その問いにはサダヒデより先にコウが答えた。
「なんかいつまで経ってもクニオ達がここに来ないからさ、退屈であのドラゴンのおっちゃんの所と温泉に入り浸っちゃたよ。そしたらなんかアダマンタイトは二かけらで足りなきゃ好きなだけ持っていけみたいな話になって、結構沢山持ってきちゃったんだよね。クニオとコルが二かけらと言いながら三つ持って帰ったなと笑っていたけど、別に資源としては100倍ぐらい持っていって良かったのにと言ってたよ」
ああ、一個ちょろまかしていたのはバレていたのかと、クニオはその時初めて知った。
「あの洞窟にも入ったんですか?」
「奥までは一度も行ってないよ。おっちゃんがそれはダメだって言ってたから……でもあの温泉癖になるんだよな。魔素を吸収するせいなのかな?なんかピリピリしていい感じなんだよ。魔力が低いクニオには分からないだろうけど……」
「一度もって……そんなに何回もあの温泉に?」
コルビーが聞く。
「クニオのレベル上げも無くて、私とグレゴリーだけならあれぐらいの距離はすぐだからな。週一で4回ぐらい行ったかな?」
コウは上目使いで数を数えた。
「でもすぐとは言ってもそれなりには距離もあるし移動は面倒くさいんだよな……。そうそう、だからコル君に聞きたかったんだ、転移魔法のゲートであそこって繋げられないのかな?」
「え?そんな事できるの?」
クニオの口から思わず声が漏れる。
「もちろん転移魔法ぐらいは使えますよ。でも固定するとなると魔法陣を作って、術者不在で起動するとなればアダマンタイトが必要になるでしょうね。ああ、アダマンタイトは沢山あるんでしたか」
コルビーがそう言った。
じゃあとコウが言いかけたところで、先ほど橋の上で番をしていたサダヒデの弟子が駆けてきた。そうしてサダヒデに
「師匠、橋の向こう側にアンデッド系の魔物が出現しました!」と報告した。
「はて、アンデッド系とは珍しいのう。魔力で魂を縛られているアンデッドは橋を渡っては来れまいが、放置するのも良くないな。どれ、ちょっと様子を見に行くか」
そう言ってサダヒデは橋の方へと移動するので、クニオ達もその後をついていく。
橋に辿り着くと、確かにその向こうには魔物らしきものがうろついていた。体は土色で泥の塊の様にも見える。しかしところどころ見える肉体は紫色で、数々の水泡ができて腐食しており、生気を感じることは無い。
「ゾンビナイトですな。見るのは何年かぶりですぞ」
グレゴリーが言った。
ゾンビナイトとは書いて字のごとく、人間でいう所の騎士が死んでその死体がネクロマンサー(屍霊操士)を初めとする、屍霊操術(ネクロマンシー)を操るものによって魂を縛られ、現世で朽ち果てることなく再出現した存在だ。生前のスキルやレベルを引き継いだうえで不死の存在となった、魔物としては極めて特殊な存在
「ありがとうございます」
まずはクニオはそう言ってサダヒデに頭を下げる。
「いや、儂も久々に面白い仕事ができて楽しかったよ。その刀なら魔王とも戦えるかもしれんのう」
とサダヒデは笑いながら言った。コウとグレゴリーは違う意味での笑いを堪えている。コルビーは『確かにこの刀であれば耐物理用の絶対防御(アイソレーション)も破ってしまうかもしれないな』と思ったがその場では黙っておいた。
「そういえばさ、ユキヒラが私用に短刀を作り直してくれたんだよ。膝に仕込んでた膝反丸をさ、クニオのやつと一緒でアダマンタイトで強化してくれたんだ。これ結構面白んだぜ」
そういうとコウは腰に差していた短刀を鞘から抜いて空に放り投げた。その短い刀は空を縦横無尽に飛び回る。そうして最後、クニオが切った巻き藁の残った下半分に突き刺さって止まった。
「な、風魔法で自由に操れるんだよ。いっつも私はやり過ぎだって文句を言うけど、これぐらいの感じだったら、普通に戦えるだろう?」
そう言ってコウは笑顔を見せる。
「拙僧もこれを作って頂いた」
そう言ってグレゴリーも、自分の首にかかっていた粒が大きめな数珠を両手で持って、頭から抜いて持ち上げた。それを今度は右拳に巻きつけながらこう言った。
「拙僧はどうも僧侶らしくないと言われることが多くて…ユキヒラ殿に話しましたら、数珠を首に巻くなどすればそれらしく見えるのではないかとアドバイスを頂きました」
いや、グレゴリー、君の宗派は一体何なんだというツッコミは口にせず、クニオはグレゴリーの動きを目で追った。
グレゴリーは先ほどコウの投げた短刀が突き刺さった巻き藁の前に移動すると、数珠を巻き付けた右拳を後ろに引いて構えた。先ほどの定光とは違い『ゴウッ』という大きな空気音と共に右拳は巻き藁にヒットする。『ボキッ』という音と共に巻き藁は根元から折れて、はるか遠くへ飛んで行った。
「ふざけんなよ。危なく私の刀もズワ湖まで飛んでく所じゃないか!!」
コウがそう言ってグレゴリーを睨んでいる。折れた巻き藁がはるか彼方に飛び去る前に、コウはかろうじて小刀の回収に成功していたようだ。手には先ほど巻き藁に刺さっていた小刀が戻ってきていた。
「おお、これは失礼した」
グレゴリーはそう謝ってガハハと笑う。特に反省はしていない様だ。そうしてクニオの方を向いて
「数珠とは言っても、鋼を通常密度の10倍ぐらいにまで圧縮して、アダマンタイトで強化してもらったので、こんな使い方もできるという事です。まぁ圧縮した分少々重たいですがな」
そう言ってまたガハハと笑う。
「50Kgぐらいありますから、クニオさんは装備しない方がいいでしょうね」
ユキヒラがクニオに向かってそう言った。クニオはそんな忠告は必要ないなと思いつつ、グレゴリーのパンチの威力はその数珠が無くても、以前からそれくらいあったような気もして、比較できないなと思った。
コルビーはその様子を黙って見ながら、このパーティーは攻撃力だけを言えば、既に自分を倒した勇者パーティーの実力を超えているような気もして複雑な気分だった。
「アダマンタイトは一かけらしかなかったのに、結構使いでがあるんですね」
クニオがそう言うと、その問いにはサダヒデより先にコウが答えた。
「なんかいつまで経ってもクニオ達がここに来ないからさ、退屈であのドラゴンのおっちゃんの所と温泉に入り浸っちゃたよ。そしたらなんかアダマンタイトは二かけらで足りなきゃ好きなだけ持っていけみたいな話になって、結構沢山持ってきちゃったんだよね。クニオとコルが二かけらと言いながら三つ持って帰ったなと笑っていたけど、別に資源としては100倍ぐらい持っていって良かったのにと言ってたよ」
ああ、一個ちょろまかしていたのはバレていたのかと、クニオはその時初めて知った。
「あの洞窟にも入ったんですか?」
「奥までは一度も行ってないよ。おっちゃんがそれはダメだって言ってたから……でもあの温泉癖になるんだよな。魔素を吸収するせいなのかな?なんかピリピリしていい感じなんだよ。魔力が低いクニオには分からないだろうけど……」
「一度もって……そんなに何回もあの温泉に?」
コルビーが聞く。
「クニオのレベル上げも無くて、私とグレゴリーだけならあれぐらいの距離はすぐだからな。週一で4回ぐらい行ったかな?」
コウは上目使いで数を数えた。
「でもすぐとは言ってもそれなりには距離もあるし移動は面倒くさいんだよな……。そうそう、だからコル君に聞きたかったんだ、転移魔法のゲートであそこって繋げられないのかな?」
「え?そんな事できるの?」
クニオの口から思わず声が漏れる。
「もちろん転移魔法ぐらいは使えますよ。でも固定するとなると魔法陣を作って、術者不在で起動するとなればアダマンタイトが必要になるでしょうね。ああ、アダマンタイトは沢山あるんでしたか」
コルビーがそう言った。
じゃあとコウが言いかけたところで、先ほど橋の上で番をしていたサダヒデの弟子が駆けてきた。そうしてサダヒデに
「師匠、橋の向こう側にアンデッド系の魔物が出現しました!」と報告した。
「はて、アンデッド系とは珍しいのう。魔力で魂を縛られているアンデッドは橋を渡っては来れまいが、放置するのも良くないな。どれ、ちょっと様子を見に行くか」
そう言ってサダヒデは橋の方へと移動するので、クニオ達もその後をついていく。
橋に辿り着くと、確かにその向こうには魔物らしきものがうろついていた。体は土色で泥の塊の様にも見える。しかしところどころ見える肉体は紫色で、数々の水泡ができて腐食しており、生気を感じることは無い。
「ゾンビナイトですな。見るのは何年かぶりですぞ」
グレゴリーが言った。
ゾンビナイトとは書いて字のごとく、人間でいう所の騎士が死んでその死体がネクロマンサー(屍霊操士)を初めとする、屍霊操術(ネクロマンシー)を操るものによって魂を縛られ、現世で朽ち果てることなく再出現した存在だ。生前のスキルやレベルを引き継いだうえで不死の存在となった、魔物としては極めて特殊な存在
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