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ギルバート家の変人教師
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カイス・ワイアットかブラウンからの誘いか、どちらを選ぶかなんて決まっている。
「よく来てくれたな~アイリーン嬢!!」
「お招きに預かり光栄です」
迎えてくれたオスカーに一礼し、彼の後ろに隠れているブラウンへ笑顔を向ける。
「お久しぶりですブラウン様」
「べ、別に呼んでないけどな」
早速帰っていいだろうか。そんな心情はおくびにも出さず私は案内されるがまま進んでいく。
「そういえば今日はアルフレッド公の姿が見えないな」
「お父様は仕事が忙しいみたいで、来れない事をとても残念がっていました」
本当は机に張り付いて動かなかったとは流石に言えない。
ワイアット家からの茶会の招待状が来た時、運がいいのか悪いのかブラウンからも似たような誘いが来ていた。二つの用事をわざと同日にしてダブルブッキングさせ、ブラウンの方を選んだのだ。顔も知らないカイスとやらには悪いが、アルフレッドと因縁のあるワイアット家。出来ることなら極力近づきたくない、本当切実に。
「今日から数日間よろしくお願いします」
初めてのお泊まりだ。歯ブラシと何かあったとき用にルイを持ってきた。
「我が家のように寛いでくれたまえ!」
「はい!!」
我が家より寛ぐつもりだ、アイザックがいないのは非常に残念だがここには魔王やヤンデレ嫁はいない。もしかしなくとも向こうの数倍安全だろう。
「アイリーン、こっちに来てみろよ。俺自慢の剣技を見せてやる」
「走ったら転びますよ~」
これじゃ子守りだな。元気に駆け回るブラウンを子犬と重ねながら苦笑した。ブラウンが走っていく丘の先に人影が見える。
「おっ、せんせ~だ! せんせー!!」
私が誰かと尋ねるより先にブラウンは人影に向かって全力疾走していった。転んでもしらないからな。
「馬鹿っ、こっち来るなクソガキ!!」
せんせーとやらめちゃくちゃ口悪いな。ブラウンは彼の静止も聞かず突っ込んでいく.......そして盛大に転んだ。
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙お、俺の魔法陣がっ!!」
「せんせー俺の心配は?」
漫才を繰り広げる二人にようやく追いつくと、まずは服の裾でブラウンの顔についた泥を払ってやった。
「だから言ったのに」
「この程度痛くもなんともねぇよ!」
ドヤ顔で胸を張るブラウン。そんな彼の頭上にチョップが下る。
「痛っ!!」
「このバカガキ!! 人の話を聞けっていつも言ってんだろうが」
どうやら彼が新しくブラウンの家庭教師になったハワード・ランドルフらしい。ブリュネットの長髪を後ろで無造作にくくり、いかにも「堅物です」といった隙のない服装。女性にモテるようには見えないが驚くべきは彼の若さだろう。まだ十五くらいの少年じゃないか、私たちが学園に入学するのは十年後くらいなのでゲーム内の年齢は二十代半ばだったらしい。
「あっ、何見てんだてめぇ」
盗んだバイクで走り出しそうな年頃の少年は私に睨みを利かせてきた。不良か。
「せんせーこいつが前に言ってた俺の婚約者で」
「アイリーン・ベーカーです」
私が名乗った途端、ハワードの目が輝きに満ちた。先程までの死んだ魚の目は何処に捨ててきたんだ、大志を抱いた少年は私の肩をがっちりと掴み興奮気味で口を開く。
「ベーカーってあのベーカー家かよ!! アルフレッド公爵は元気か?」
「えっ、えぇ」
「せんせー近い近い」
ブラウンが引き剥がしてくれた為ようやく自由になれた。私は内心の動揺を悟られないよう振る舞う。
「お父様と面識が?」
「公爵もといベーカー家は代々魔法学会に莫大な寄付をしてくれてんだ、神といっても過言じゃねぇよ」
神というか魔王だろ。でも知らなかった、ベーカー家がそんなにも魔法学の分野に肩入れしていたとは。
「気まぐれでは?」
「だとしても万年金欠学問には御の字だっての」
魔法学は一言で済ませば人気が無い。他の学問より金を使う分出費が甚だしくそのくせ人気がないため支援金が貰えないのだ。庶民では敷居が高く十分に学べない分野でありながら、肝心の貴族にはあまり使い勝手が無いと重要視されず万年金欠だというのはよく耳にする。
「申し遅れたな。俺はハワード・ランドルフ。アルフレッド公の娘さんならお嬢だな、俺のことは気軽に先生でいいぞ」
どの辺が気軽なんだろう。
「せんせーはな、魔法学会において史上最年少の天才って言われてるんだ!!」
「言われてねぇよ。俺が言って回ってるだけだ」
それ自画自賛というやつでは。
だがハワードが天才というのは脚色無しの事実だろう。この歳で学問を背負って立とうとしている逸材だ。
「研究すんのに金が足りねぇからオスカー卿に頼み込んで雇って貰ったんだ、それがこんなガキのお守りだとは思わなかったけどな」
「ガキじゃねぇよ!?」
「うるせぇガキ。お前のせいで降霊魔術失敗したじゃねぇか、反省文書かせるからな」
「そんなぁぁああ」
少年が幼子をいじめているようにしか見えない。
「オスカー様の愛息子にそんな事して大丈夫なんですか?」
ブラウンの父親は大分子煩悩だぞ。
「俺が恩義を感じてるのはオスカー卿その人であってこいつじゃねぇからな、大丈夫だ多分」
この人、きっと魔法学以外はからっきしで適度なんだろうな。ゲーム内ではもっと勤勉で堅物なキャラだと思っていたが.......そういえば郁が彼の難易度はかなり低めで、攻略法はズバリ一つ「魔法学を勉強すること」と言っていた。つまり趣味兼仕事の魔法学を理解してくれる人物なら誰でも好きなんだろう、チョロそう。
「それで、降霊魔術とは一体何をして」
「なに、ちょっくら悪魔呼び出そうと思ってな」
「よく来てくれたな~アイリーン嬢!!」
「お招きに預かり光栄です」
迎えてくれたオスカーに一礼し、彼の後ろに隠れているブラウンへ笑顔を向ける。
「お久しぶりですブラウン様」
「べ、別に呼んでないけどな」
早速帰っていいだろうか。そんな心情はおくびにも出さず私は案内されるがまま進んでいく。
「そういえば今日はアルフレッド公の姿が見えないな」
「お父様は仕事が忙しいみたいで、来れない事をとても残念がっていました」
本当は机に張り付いて動かなかったとは流石に言えない。
ワイアット家からの茶会の招待状が来た時、運がいいのか悪いのかブラウンからも似たような誘いが来ていた。二つの用事をわざと同日にしてダブルブッキングさせ、ブラウンの方を選んだのだ。顔も知らないカイスとやらには悪いが、アルフレッドと因縁のあるワイアット家。出来ることなら極力近づきたくない、本当切実に。
「今日から数日間よろしくお願いします」
初めてのお泊まりだ。歯ブラシと何かあったとき用にルイを持ってきた。
「我が家のように寛いでくれたまえ!」
「はい!!」
我が家より寛ぐつもりだ、アイザックがいないのは非常に残念だがここには魔王やヤンデレ嫁はいない。もしかしなくとも向こうの数倍安全だろう。
「アイリーン、こっちに来てみろよ。俺自慢の剣技を見せてやる」
「走ったら転びますよ~」
これじゃ子守りだな。元気に駆け回るブラウンを子犬と重ねながら苦笑した。ブラウンが走っていく丘の先に人影が見える。
「おっ、せんせ~だ! せんせー!!」
私が誰かと尋ねるより先にブラウンは人影に向かって全力疾走していった。転んでもしらないからな。
「馬鹿っ、こっち来るなクソガキ!!」
せんせーとやらめちゃくちゃ口悪いな。ブラウンは彼の静止も聞かず突っ込んでいく.......そして盛大に転んだ。
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙お、俺の魔法陣がっ!!」
「せんせー俺の心配は?」
漫才を繰り広げる二人にようやく追いつくと、まずは服の裾でブラウンの顔についた泥を払ってやった。
「だから言ったのに」
「この程度痛くもなんともねぇよ!」
ドヤ顔で胸を張るブラウン。そんな彼の頭上にチョップが下る。
「痛っ!!」
「このバカガキ!! 人の話を聞けっていつも言ってんだろうが」
どうやら彼が新しくブラウンの家庭教師になったハワード・ランドルフらしい。ブリュネットの長髪を後ろで無造作にくくり、いかにも「堅物です」といった隙のない服装。女性にモテるようには見えないが驚くべきは彼の若さだろう。まだ十五くらいの少年じゃないか、私たちが学園に入学するのは十年後くらいなのでゲーム内の年齢は二十代半ばだったらしい。
「あっ、何見てんだてめぇ」
盗んだバイクで走り出しそうな年頃の少年は私に睨みを利かせてきた。不良か。
「せんせーこいつが前に言ってた俺の婚約者で」
「アイリーン・ベーカーです」
私が名乗った途端、ハワードの目が輝きに満ちた。先程までの死んだ魚の目は何処に捨ててきたんだ、大志を抱いた少年は私の肩をがっちりと掴み興奮気味で口を開く。
「ベーカーってあのベーカー家かよ!! アルフレッド公爵は元気か?」
「えっ、えぇ」
「せんせー近い近い」
ブラウンが引き剥がしてくれた為ようやく自由になれた。私は内心の動揺を悟られないよう振る舞う。
「お父様と面識が?」
「公爵もといベーカー家は代々魔法学会に莫大な寄付をしてくれてんだ、神といっても過言じゃねぇよ」
神というか魔王だろ。でも知らなかった、ベーカー家がそんなにも魔法学の分野に肩入れしていたとは。
「気まぐれでは?」
「だとしても万年金欠学問には御の字だっての」
魔法学は一言で済ませば人気が無い。他の学問より金を使う分出費が甚だしくそのくせ人気がないため支援金が貰えないのだ。庶民では敷居が高く十分に学べない分野でありながら、肝心の貴族にはあまり使い勝手が無いと重要視されず万年金欠だというのはよく耳にする。
「申し遅れたな。俺はハワード・ランドルフ。アルフレッド公の娘さんならお嬢だな、俺のことは気軽に先生でいいぞ」
どの辺が気軽なんだろう。
「せんせーはな、魔法学会において史上最年少の天才って言われてるんだ!!」
「言われてねぇよ。俺が言って回ってるだけだ」
それ自画自賛というやつでは。
だがハワードが天才というのは脚色無しの事実だろう。この歳で学問を背負って立とうとしている逸材だ。
「研究すんのに金が足りねぇからオスカー卿に頼み込んで雇って貰ったんだ、それがこんなガキのお守りだとは思わなかったけどな」
「ガキじゃねぇよ!?」
「うるせぇガキ。お前のせいで降霊魔術失敗したじゃねぇか、反省文書かせるからな」
「そんなぁぁああ」
少年が幼子をいじめているようにしか見えない。
「オスカー様の愛息子にそんな事して大丈夫なんですか?」
ブラウンの父親は大分子煩悩だぞ。
「俺が恩義を感じてるのはオスカー卿その人であってこいつじゃねぇからな、大丈夫だ多分」
この人、きっと魔法学以外はからっきしで適度なんだろうな。ゲーム内ではもっと勤勉で堅物なキャラだと思っていたが.......そういえば郁が彼の難易度はかなり低めで、攻略法はズバリ一つ「魔法学を勉強すること」と言っていた。つまり趣味兼仕事の魔法学を理解してくれる人物なら誰でも好きなんだろう、チョロそう。
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