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ギルバート家盗難事件⑴
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悪魔。それは古代より伝わる超自然的な存在、時に神を誹謗中傷し時に人を惑わせる妖しきモノ。このファンタジーな世界にもそれがいるのだろうか。
「悪魔って本当にいるんですか?」
「いたら面白いだろ」
あっ、これいない感じのやつだ。私があからさまに肩を落とす横でブラウンが密かに震えている。
「.......もしかしてブラウン様、怖いんですか?」
「怖くねぇよ!! だって、悪魔とか幽霊って悪いヤツのところにしか来ないんだろ? 父上が言ってた」
この世界でも悪魔や幽霊はやはり見える人には見えるんじゃないかな知らんけど的な存在らしい。おおよそ子供を怖がらせる為に話題に上げられる程度だろう、がっかりだ。
「お嬢も悪魔が見てぇのか?」
「いえ。興味があっただけです、それよりどうして悪魔召喚なんて行おうと?」
そこまでして呪いたい相手でもいたのだろうか。習得したら是非教えて欲しい。
「いいや、聞きたいことがあってな」
そう言って顔をくもらせるハワード。何かまずいことを尋ねただろうか。
「せんせー何でこんな所にいんの? いつもなら部屋から出てこないのに」
どうやらハワードは私と同じ出不精らしい。いい仲間になれそうだ。
「邸にいたら色々言われっからな」
「色々ですか?」
「.......」
ブラウンは決まりの悪そうな顔をして俯いた。彼がこんな暗い表情になるのは珍しい、何かあったのだろうが私が口を出していいのか微妙だな。
「あのなアイリーン」
「やめとけ。お嬢を巻き込んでいい事なんか何一つねぇだろうよ」
そうあからさまに仲間外れにされると少し腹立たしい。いやしかしあくまでギルバート家の問題だし.......。
「でもアイリーンは可愛げこそ無いが頭はいいんだ!!」
おい。
思わずブラウンを睨むが彼は素でこれなんだ。悪気は無いだろう。そう自分に言い聞かせて笑顔を取り繕う。
「最近変な噂もよく聞くが、悪いヤツじゃねぇのは俺が知ってる!」
「.......」
「頭がいい? 言っとくがな、俺は俺よりも頭が良い奴に出会ったことねぇんだ」
とんでもない発言をしだすハワードに呆れ返る私。だが、私の横にはもっととんでもない男が隠れているのだ。
「お嬢様は貴方より賢いですよ」
「うわっ!? ゆ、幽霊」
「出たな悪魔!」
いやうちの護衛です。
「ルイ.......登場するならもっと普通に出てきて下さい」
「すみません。聞き捨てならない言葉が聞こえてきたので」
そこは捨てて欲しかったな~。ルイはハワードの前に立ちはだかると、声を張り上げ宣言した。
「うちのお嬢様に解決できない問題などありません!!」
「おう言ってやれ幽霊!」
ノリノリで応援するブラウン。厄介な二人が手を組んでしまった、帰りたい。
「そこまで言うなら知恵を借りてやるか。お嬢期待してんぞ」
「私何も言ってないんですが」
まぁいい、話くらい聞いてやるか。
聞くところによればギルバート家では今盗難事件が相次いでいるらしい。宝石やネックレス、ジュエリーの類に留まらず金目の物が頻繁に無くなっているらしい。盗難が発生した時期とハワードがギルバート家に居候した時期が一致するらしく、ギルバート家の使用人からは「ハワードが金銭欲しさに盗んだのでは?」という疑いがかけられている。
「それで邸に居づらくなったんですね」
「あぁ、傍迷惑な話だっての」
確かにいかにもお金に困ってますといったハワードを疑うのは至極当然だろう。
「.......んだよ、お嬢も俺のこと疑ってんのか?」
「いえ。ただ時期があまりにも一致しているのが気になって」
盗難において一番安全な方法は盗んだとバレないことだろう、だとするなら今回の犯行は目立ちすぎている気がする。仮にハワードが犯人だとすれば彼は稀に見る馬鹿だとしか言いようがない。だが実際の彼は興味の大半を魔法学に乗っ取られたと言ってもいい程魔法馬鹿。魔法学の為に金目の物を盗む.......無いような有りそうな。
「オスカー様は何か言っておられるのですか?」
「いいや」
「父上は邸の者たちを疑いたくないのだ。今のところは紛失で済ませている」
なるほど、だがオスカーだってこの状況を良くは思っていないだろう。早いところ手を打たないと事件が大事になった時、間違いなくハワードが真っ先に首を切られてしまう。
「少し、考えてみますか」
別に助けてやる義理はないが、乗りかかった船だ。
あまりにも事件を読み解く材料が少ないのでとりあえずブラウンに邸を案内して貰う。盗品の多くは蔵や邸中に飾られている品かららしいが.......。
「身の潔白を示すためにいっそ部屋を探させたらいいのでは?」
物が見つからなければ流石に疑いは晴れるだろう。
「癪だろ」
「意地を張らなくても」
「後荒らされたら困る書籍が多いんだよ」
絶対そっちが本音だな。ここまで魔法馬鹿だとは、この先苦労しそうだ。
盗品された日時は細かく分からないが、ざっと確認していったところ邸の使用人なら誰でも手が出せそうだった。まぁ貴族の物品に手を出す度胸があるかどうかの問題だが。割に合わないというのが個人的な見解だ。
「それでも犯人は物を盗んだ」
物そのものに意味があったのではなく恐らく盗難という行為に何かあるのだろう、例えば濡れ衣を着せてやりたい相手がいたとか。
「オスカー様にも協力してもらいましょう」
「お、俺にも何か出来ることないのか?」
「ブラウン様はハワード先生の観察ですね。次の盗難があった際にアリバイがあれば潔白を証明できますし」
「おう分かった!!」
分かってなさそうな無垢な笑顔を向けてくる。
先が思いやられそうだ。
「悪魔って本当にいるんですか?」
「いたら面白いだろ」
あっ、これいない感じのやつだ。私があからさまに肩を落とす横でブラウンが密かに震えている。
「.......もしかしてブラウン様、怖いんですか?」
「怖くねぇよ!! だって、悪魔とか幽霊って悪いヤツのところにしか来ないんだろ? 父上が言ってた」
この世界でも悪魔や幽霊はやはり見える人には見えるんじゃないかな知らんけど的な存在らしい。おおよそ子供を怖がらせる為に話題に上げられる程度だろう、がっかりだ。
「お嬢も悪魔が見てぇのか?」
「いえ。興味があっただけです、それよりどうして悪魔召喚なんて行おうと?」
そこまでして呪いたい相手でもいたのだろうか。習得したら是非教えて欲しい。
「いいや、聞きたいことがあってな」
そう言って顔をくもらせるハワード。何かまずいことを尋ねただろうか。
「せんせー何でこんな所にいんの? いつもなら部屋から出てこないのに」
どうやらハワードは私と同じ出不精らしい。いい仲間になれそうだ。
「邸にいたら色々言われっからな」
「色々ですか?」
「.......」
ブラウンは決まりの悪そうな顔をして俯いた。彼がこんな暗い表情になるのは珍しい、何かあったのだろうが私が口を出していいのか微妙だな。
「あのなアイリーン」
「やめとけ。お嬢を巻き込んでいい事なんか何一つねぇだろうよ」
そうあからさまに仲間外れにされると少し腹立たしい。いやしかしあくまでギルバート家の問題だし.......。
「でもアイリーンは可愛げこそ無いが頭はいいんだ!!」
おい。
思わずブラウンを睨むが彼は素でこれなんだ。悪気は無いだろう。そう自分に言い聞かせて笑顔を取り繕う。
「最近変な噂もよく聞くが、悪いヤツじゃねぇのは俺が知ってる!」
「.......」
「頭がいい? 言っとくがな、俺は俺よりも頭が良い奴に出会ったことねぇんだ」
とんでもない発言をしだすハワードに呆れ返る私。だが、私の横にはもっととんでもない男が隠れているのだ。
「お嬢様は貴方より賢いですよ」
「うわっ!? ゆ、幽霊」
「出たな悪魔!」
いやうちの護衛です。
「ルイ.......登場するならもっと普通に出てきて下さい」
「すみません。聞き捨てならない言葉が聞こえてきたので」
そこは捨てて欲しかったな~。ルイはハワードの前に立ちはだかると、声を張り上げ宣言した。
「うちのお嬢様に解決できない問題などありません!!」
「おう言ってやれ幽霊!」
ノリノリで応援するブラウン。厄介な二人が手を組んでしまった、帰りたい。
「そこまで言うなら知恵を借りてやるか。お嬢期待してんぞ」
「私何も言ってないんですが」
まぁいい、話くらい聞いてやるか。
聞くところによればギルバート家では今盗難事件が相次いでいるらしい。宝石やネックレス、ジュエリーの類に留まらず金目の物が頻繁に無くなっているらしい。盗難が発生した時期とハワードがギルバート家に居候した時期が一致するらしく、ギルバート家の使用人からは「ハワードが金銭欲しさに盗んだのでは?」という疑いがかけられている。
「それで邸に居づらくなったんですね」
「あぁ、傍迷惑な話だっての」
確かにいかにもお金に困ってますといったハワードを疑うのは至極当然だろう。
「.......んだよ、お嬢も俺のこと疑ってんのか?」
「いえ。ただ時期があまりにも一致しているのが気になって」
盗難において一番安全な方法は盗んだとバレないことだろう、だとするなら今回の犯行は目立ちすぎている気がする。仮にハワードが犯人だとすれば彼は稀に見る馬鹿だとしか言いようがない。だが実際の彼は興味の大半を魔法学に乗っ取られたと言ってもいい程魔法馬鹿。魔法学の為に金目の物を盗む.......無いような有りそうな。
「オスカー様は何か言っておられるのですか?」
「いいや」
「父上は邸の者たちを疑いたくないのだ。今のところは紛失で済ませている」
なるほど、だがオスカーだってこの状況を良くは思っていないだろう。早いところ手を打たないと事件が大事になった時、間違いなくハワードが真っ先に首を切られてしまう。
「少し、考えてみますか」
別に助けてやる義理はないが、乗りかかった船だ。
あまりにも事件を読み解く材料が少ないのでとりあえずブラウンに邸を案内して貰う。盗品の多くは蔵や邸中に飾られている品かららしいが.......。
「身の潔白を示すためにいっそ部屋を探させたらいいのでは?」
物が見つからなければ流石に疑いは晴れるだろう。
「癪だろ」
「意地を張らなくても」
「後荒らされたら困る書籍が多いんだよ」
絶対そっちが本音だな。ここまで魔法馬鹿だとは、この先苦労しそうだ。
盗品された日時は細かく分からないが、ざっと確認していったところ邸の使用人なら誰でも手が出せそうだった。まぁ貴族の物品に手を出す度胸があるかどうかの問題だが。割に合わないというのが個人的な見解だ。
「それでも犯人は物を盗んだ」
物そのものに意味があったのではなく恐らく盗難という行為に何かあるのだろう、例えば濡れ衣を着せてやりたい相手がいたとか。
「オスカー様にも協力してもらいましょう」
「お、俺にも何か出来ることないのか?」
「ブラウン様はハワード先生の観察ですね。次の盗難があった際にアリバイがあれば潔白を証明できますし」
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