やさぐれ令嬢は高らかに笑う

どてら

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ギルバート家盗難事件⑶

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 アルフレッドとオスカーそして驚くべきことに因縁の相手カース・ワイアットは学園で知り合った仲間らしい。息子の名前が確かカイスだったから似たような名前を付けるあたり貴族らしい貴族なんだと勝手に予想している。
「カース様はどのような方なんですか?」
アルフレッドに似て性格悪いらしいが。
「頭の良い奴だよ、よくアルフレッド公と成績トップの座を争っていたな~」
オスカーはアルフレッドとカースより一つ上の学年だったらしい。なるほど、若い頃からの先輩だから余計に頭が上がらないのか。
「アルフレッド公とは好敵手とでも言うのか? 体育祭でも後方でいつも競っていたよ」
運動神経悪いんだな。確か息子のカイスはそこそこ運動できるキャラだったから彼は母親に似たのだろう。
「父上には好敵手いなかったんですか?」
「居なかったな。骨のあるやつは何人かいたが、剣術においては少し物足りないぐらいだった」
そりゃ未だに現役のオスカー相手にまだ学生とはいえ適う相手は見つからないだろうな。
「まぁその代わりこの世にまたといない天使と巡り会えたがな!」
「まぁ貴方ったら」
ふふっ、口元を緩ますナターシャ。二人の出会いはクルセント学園なのか。
「ギルバート家は伯爵の家柄、それに比べて私は男爵の家柄だったので当時から色々ありましたわ」
懐かしむような声を出す。ブラウンは聞き飽きているのか食事に夢中だ。
「反対はされなかったのですか?」
伯爵と男爵、爵位には少しだが差がある。
ゲームでも主人公は庶民の出でその為多くの生徒から何かと問題視されていたようだ。実際身分差があればどうなるのか知っておきたかった。
「俺に正面から何か言えるような奴はいなかったな.......だが一度アルフレッド公に『羨ましい』と言われた事がある」
羨ましい? あの男に他人を羨むような感情があったのか、欲しいものなら奪ってでも手に入れそうだが。
「不思議に思って何が? と聞き返したんだが『私はそんな風に生きられないから』とだけしか答えてくれんかったな~」
ふいにクラリスのことを思い出した。彼女は平民の女性で、どう間違っても公爵家に嫁入りなんて出来ない。
クラリスとアルフレッドがどんな出会いをしてどんな言葉を交わしたのか私には分からなかったが一つだけ確かなのは、アルフレッドはどうあがいてもベーカー家の名前を捨てられないということだ。オスカーのように他者を黙らせてまでクラリスを迎えることもなく、家が望んだからとリリアンに求婚した。何処にもアルフレッド自身の気持ちが見えなくてひどく不快になってしまった。

そうまでして何故彼はベーカー家を捨てられないでいるのだ。
ゲームで果たされたアイザックと主人公の駆け落ちエンドを知っているからこそ胸がざわついた。

「アイリーン? 何か嫌いな物でもあったのか?」
ブラウンが心配そうにこちらを見ている。
「いえ、私も羨ましくなってしまっただけです」
自分が恋愛に向いているとは思わない。誰かの為に名を捨てるという行為がそこまで重いのなら、きっと私が選ぶ結末はアルフレッドと同じなんだろう。何だか味気ないな。
「あら大丈夫よ、貴方にはブラウンがいるじゃない」
「へ? あっ、そうでしたね。うっかりしてました」
「おい!!」
いつまで続くか定かでない為失念していた。
「しっかりしてくれよ。ブラウンよりアイリーン嬢に政を任したいんだから」
「父上!?」
笑いに花が咲く談笑の中でルイがボソッと「お嬢様がギルバート家に嫁いだら自分は解雇か.......」と暗い考え事をしていたのは気にしないでおこう。名義を変えて雇い直してやるから安心しろ。そういえばルイがナターシャと楽しげに話しているのが意外だった。人の視線が苦手らしいからこういった場も得意じゃなさそうだと心配していたのに.......あぁそうか、ルイと家族団欒とは縁遠い生活を送っていたな。

「たまにはいいですねルイ」
「お嬢様は結婚したら毎日ですよ」
そうやってギルバート一家を浮き足立たせるような発言をするんじゃない、ナターシャの嬉々とした視線が痛い。
「アイリーンは何日ぐらい泊まるんだ?」
「二日を予定してます」
二泊三日のちょっとした外泊だ。それ以上家を空けるとアイザックが勝手に茶会へ連れていかれてしまう。
「そうか、ならアレには参加しないのか」
「アレ?」
「私とオスカーの結婚記念日が五日後なの、せっかくだからパーティでもしようってこの人が」
「毎年二人だけで飲むのもな、アイリーン嬢もどうだ?」
結婚記念日か。わざわざ毎年祝うなんて本当に仲がいいんだな。
「すみませんが私は」
「そうなの? 残念ね~未来の家族を入れて皆で騒ごうと思ってたのに」
貴族とはどうしてこうもパーティを開くのが好きなんだ。その度に色々な目に遭っているから私は警戒してしまう。
「今度感想を聞かせてください」
「任せろ、俺が手紙に書いてやる」
「読めるかどうか不安ですね」
「ルイ、静かに」
結婚記念日。何事もなく迎えられればいいが。









それがフラグだということを私はまだ知らない。





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