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事の発端
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クロア・ユーリアスは傍若無人で陰湿な性格、気に入らない人間がいれば嫌がらせは当たり前。そんなんだから友達もおらずいつも一人で本を読んでいる根暗な人物。おまけに魔法学校の生徒とは思えない程致命的なまでの魔法音痴、これが周囲の評価らしい。流石に落ち込む。
「お前さんひどいな」
「八割ほど誤解です」
「残りは合ってんのかよ」
私が魔法音痴なのは認めよう。友達がいないのも事実だ。しかし陽気な性格でないのはそう振る舞うことが許されなかったからであって素じゃない。「ユーリアス家は常に優雅に余裕を持って」と父に口うるさく言われ続けた結果である。
そして何より気に入らない相手に嫌がらせなんてもってのほかだ、そんな事してる暇がない。だって魔法音痴だからね、いつも常に勉強してても補習が山のように押し寄せてくるから。
「嫌われている自覚はありますが今に始まったことじゃないので平気です」
「根暗ってかネガティブが大気圏突きぬけていっそ清々しいんだよな」
それは褒めているのだろうか?
「それで一体全体何があって退学処分になっちまったんだ?」
「話せば長くなりますが」
どうせあと四日する事もないしいいだろう。
私は座学ならかなり出来る部類に入るのだが、実際に魔法を使う授業がからっきし駄目だった。
魔法薬学の担当教師はマルクスという男だ。授業中の課題である痺れ薬の調合が上手くいかず放課後残るよう言われた。ケイレブはそんな私を見て失笑し、オズワルドは興味すらなさそうだったのを覚えている。黙々と課題を練習する私のすぐ横でマルクスは覗き込むような体制を取っていた。
「.......驚いた、これ程不出来な子は見たことないな」
そりゃ悪かったな。
大体痺れ薬なんか魔法で一々調合しなくても作れるのにこの国の住人はなぜか魔法で何でも済ませようとする、そういうのどうかと思うけど。
「これでは単位をやれんな」
その言葉に小首を傾げた。単位は座学と実技の合わせ得点で評価されるのだ、先日行われた座学はほぼ満点に近かった為最悪実技が悪くても落第にはならないと踏んでいたのに。
「どうしてですか?」
つい、食いかかる物言いになってしまう。私だってふざけて取り組んでいるわけじゃない、こう見えて真面目にしているのに腑に落ちない。
「真剣? これでか? ユーリアスくん、君は他の授業でも同じ様にいつも補習させられていると聞いてるが本当かな」
「はい」
「ふん.......どうせ泣き落としや色仕掛けでもしたんだろう」
は?
「仰っている意味が」
「君みたいなのを進級させると学校側としても迷惑なんだよ、それをどうしてもというなら頼み方が他にあるだろ?」
この時の私はさっぱり何を言われているのか分からずただただ困惑してしまった。
頼み方? そういえば東の国には土下座なる最敬礼があるらしいがそれの事かな?
「今四万円くらいしかないんでそれで勘弁してくれませんか?」
「違う違う」
金で穏便に解決しようとした私にマルクスは全力否定してきた。流石に教師を金銭で買収するのはまずいのね。悩んでいるとマルクスの手が腰に伸びてくる。身の毛がよだってこの時初めてそういう事を迫られているのだと気がついた。
「えっ、気持ち悪っ!!」
咄嗟に出た言葉がこれだ。そして反射的に目の前にある作りかけの痺れ薬(粉末)を思い切り顔にぶつけてやった。
「目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
転がり回るマルクスを見て私は悟った。あっ、これ調合失敗したな。完成間近に思えたその薬は痺れ薬ではなくただの危険物だったらしい。マルクスは目元と顔の一部を軽く火傷して医務室に運ばれた時泣きじゃくりながら私の名前を呪詛と共に叫んでいたようだ。後日呼び出された私はマルクスによって事実と若干違う脚色を加えられた「クロアが単位欲しさに教師を脅し、怪我を負わせた」という新事実が伝わってしまったのだ。
「それで退学処分ってか。学校側も結構派手なことするんな~」
「感心してる場合じゃないんですよ」
このままだと私は退学になってしまう。家を追い出された挙句路頭に迷い他国へ移住.......あれそれはいい案かもしれない。
「で、お前さんの望みはそのマルクスって男への復讐かい?」
「えっ違いますよ。さっきも言った通り退学処分の取り消しです」
「ならマルクスの野郎はどうでもいいのかよ」
「怪我をさせたのは事実ですから。女性の趣味が悪いのは頂けませんけど」
でもそれは法律が下す処分であって私から何かするべき事じゃない。私は私が平和ならそれでいい。
「はぁ~ったく欲深いんだが欲がねぇんだか分からない奴だなお前さん」
「したたかって言ってください」
「どっちかって言うと馬鹿だよ」
不貞腐れる私にジャックは呆れた様子で笑っている。
「よっしゃ任しとけ。そんなものこの俺様にかかれば余裕ってもんよ!」
後日マルクスが懲戒免職になることを私はまだ知らない。
「お前さんひどいな」
「八割ほど誤解です」
「残りは合ってんのかよ」
私が魔法音痴なのは認めよう。友達がいないのも事実だ。しかし陽気な性格でないのはそう振る舞うことが許されなかったからであって素じゃない。「ユーリアス家は常に優雅に余裕を持って」と父に口うるさく言われ続けた結果である。
そして何より気に入らない相手に嫌がらせなんてもってのほかだ、そんな事してる暇がない。だって魔法音痴だからね、いつも常に勉強してても補習が山のように押し寄せてくるから。
「嫌われている自覚はありますが今に始まったことじゃないので平気です」
「根暗ってかネガティブが大気圏突きぬけていっそ清々しいんだよな」
それは褒めているのだろうか?
「それで一体全体何があって退学処分になっちまったんだ?」
「話せば長くなりますが」
どうせあと四日する事もないしいいだろう。
私は座学ならかなり出来る部類に入るのだが、実際に魔法を使う授業がからっきし駄目だった。
魔法薬学の担当教師はマルクスという男だ。授業中の課題である痺れ薬の調合が上手くいかず放課後残るよう言われた。ケイレブはそんな私を見て失笑し、オズワルドは興味すらなさそうだったのを覚えている。黙々と課題を練習する私のすぐ横でマルクスは覗き込むような体制を取っていた。
「.......驚いた、これ程不出来な子は見たことないな」
そりゃ悪かったな。
大体痺れ薬なんか魔法で一々調合しなくても作れるのにこの国の住人はなぜか魔法で何でも済ませようとする、そういうのどうかと思うけど。
「これでは単位をやれんな」
その言葉に小首を傾げた。単位は座学と実技の合わせ得点で評価されるのだ、先日行われた座学はほぼ満点に近かった為最悪実技が悪くても落第にはならないと踏んでいたのに。
「どうしてですか?」
つい、食いかかる物言いになってしまう。私だってふざけて取り組んでいるわけじゃない、こう見えて真面目にしているのに腑に落ちない。
「真剣? これでか? ユーリアスくん、君は他の授業でも同じ様にいつも補習させられていると聞いてるが本当かな」
「はい」
「ふん.......どうせ泣き落としや色仕掛けでもしたんだろう」
は?
「仰っている意味が」
「君みたいなのを進級させると学校側としても迷惑なんだよ、それをどうしてもというなら頼み方が他にあるだろ?」
この時の私はさっぱり何を言われているのか分からずただただ困惑してしまった。
頼み方? そういえば東の国には土下座なる最敬礼があるらしいがそれの事かな?
「今四万円くらいしかないんでそれで勘弁してくれませんか?」
「違う違う」
金で穏便に解決しようとした私にマルクスは全力否定してきた。流石に教師を金銭で買収するのはまずいのね。悩んでいるとマルクスの手が腰に伸びてくる。身の毛がよだってこの時初めてそういう事を迫られているのだと気がついた。
「えっ、気持ち悪っ!!」
咄嗟に出た言葉がこれだ。そして反射的に目の前にある作りかけの痺れ薬(粉末)を思い切り顔にぶつけてやった。
「目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
転がり回るマルクスを見て私は悟った。あっ、これ調合失敗したな。完成間近に思えたその薬は痺れ薬ではなくただの危険物だったらしい。マルクスは目元と顔の一部を軽く火傷して医務室に運ばれた時泣きじゃくりながら私の名前を呪詛と共に叫んでいたようだ。後日呼び出された私はマルクスによって事実と若干違う脚色を加えられた「クロアが単位欲しさに教師を脅し、怪我を負わせた」という新事実が伝わってしまったのだ。
「それで退学処分ってか。学校側も結構派手なことするんな~」
「感心してる場合じゃないんですよ」
このままだと私は退学になってしまう。家を追い出された挙句路頭に迷い他国へ移住.......あれそれはいい案かもしれない。
「で、お前さんの望みはそのマルクスって男への復讐かい?」
「えっ違いますよ。さっきも言った通り退学処分の取り消しです」
「ならマルクスの野郎はどうでもいいのかよ」
「怪我をさせたのは事実ですから。女性の趣味が悪いのは頂けませんけど」
でもそれは法律が下す処分であって私から何かするべき事じゃない。私は私が平和ならそれでいい。
「はぁ~ったく欲深いんだが欲がねぇんだか分からない奴だなお前さん」
「したたかって言ってください」
「どっちかって言うと馬鹿だよ」
不貞腐れる私にジャックは呆れた様子で笑っている。
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