悪魔の手も借りたい!

どてら

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学校へ行こう

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「起きろ、おい起きろってクロア~」
ぽんぽんと柔らかい何かが私の顔を叩いている。ぼんやり瞼を開ければ猫姿のジャックが肉球を私に押し付けていた。
「よーしよし一緒におねんねしようね」
「こら二度寝するなよ。学校行くんだろ」
何で私より楽しみに待機してるんだろうこの悪魔。ジャックは本物の猫のように手を舐め耳の裏をかく仕草をしている、この調子なら言葉さえ話さなければ普通のペットにしか見えないはずだ。
時計を確認して呆れた、まだ朝の五時じゃない。授業は九時からなのに.......歳をとると早起きになるのは本当だったらしい。ジャックが今何歳か知らないけどね。そもそも睡眠とか取るのかな?
「なぁ、なぁまだかよ」
二度寝するのにもうるさくて無理そうなのでベッドから起き上がり軽く身支度を整える。
「少しそこで待っていてください」
そう言い残してジャックを部屋に置いていく。数分後戻ってきた私の手には食堂から貰ってきた朝食が一人分あった。
「ほら分けてあげますから落ち着いて」
パンをちぎって差し出す。
「.......お前さん俺様が偉大なる悪魔だって忘れてないか?」
「あれ要りませんでした?」
ジャックは不服そうだが黙って食べ始める。うん、やっぱり猫は可愛い。



 鏡台の前に座り、アッシュブロンドの髪を整えていく。今の流行りは巻き髪といわれる金髪ヘアーを更に目立たせる髪型だが私の髪は癖が付きにくいので駄目だ。いつも通りまっすぐ整えきったあと後ろでポニーテールをつくる。うん、これが一番動きやすくていい。
「まだか~」
「どれだけ楽しみなんですか」
私はこれからのことを考えて気落ちしているというのに全く。
「そんなに鏡見ても顔は変わらねぇぞ」
「失敬すぎる」
こんな時魔法が使えればと思うが、私が使ったところで清々鶏になるぐらいだ。身支度を整えながら謹慎中に出された課題の最終チェック、本日の授業の予習を行い時間を潰す。
「そろそろ行きますか」
「よっ待ってました!」
酔っ払いみたいなテンションのジャックをこれから連れ出すことに些かの不安を抱きながら、彼を召喚したグリモアールを懐に隠して部屋を出た。








 私が一歩校内に入ればそれだけで周囲がざわつき始める。
「本当に来たな」
「退学って話じゃなかったのかよ」
「示談金積んで揉み消したらしいぞ」
残念ながらユーリアス家にそんな余裕はない。

「マルクス先生が懲戒免職になったのもあいつの仕業らしいぞ」
あっ、それは私ではなくこちらの悪魔が。なんて心の中で言い訳しながら顔には出さず堂々と歩いていく。

「随分好き勝手言わせてんだな」
人目のつかないところでジャックが声を出した。
「こら」
許可なく人の言葉を話してはいけないとあれだけ言ったのに、いざとなれば能力でどうにでも出来るからとあまり深く考えていないようだ。


「クロアも何で言い返さねぇんだよ」
「意味がありませんから」
あの中に私の言葉を受け止めてくれる人物などいないだろう。きっと何を言ったところで言い訳にしか聞こえない。

「それより早く教室に」
荷物を置きたいんだ、立ち上がった瞬間後ろから声がかけられた。
「ユーリアス」
身体が強ばるのが分かる。振り返らずとも誰に呼び止められたのか一瞬にして理解してしまう自分が嫌になった。

「.......オズワルド様」
会うなら遠目にと、思っていたのに。こう真っ向から対峙されては逃げられない。オズワルドと私の仲は最悪だ。きっと退学処分にならなかった事で文句を言われるのだろう。彼の口から「いなくなればよかったのに」なんて言われるのが怖くてたまらない。

そういえば彼は私の退学処分が決定した日に寮を尋ねてきていた。会うのが怖くて避けてしまったのを思い出し、そりゃ嫌味のひとつでも言いたくなると納得してしまう。
「あ、あのオズワルド様先日は」
謝らなければいけない。けど、なんて言えばいいんだ。ごめんなさいの一言で済む関係ならここまで頭を抱えなくていいのに。
「良かったな」
「.......はい?」
「いや、なんでもない。あまり学園を荒らすなよ」
「勝手に騒ぐ方が愚かなのですわ」
これはいつも通りの応酬だ。一瞬オズワルドが微笑んでみせたのはきっと光の錯覚とかだろうそうに違いない。
「で、では私はこれで失礼します.......ん?」
動揺を悟られないよう立ち去ろうとした私の腕をオズワルドが掴んだ。


「あのオズワルド様?」
「いやこれはだな」
何のつもりだろう。落とし前をつけるまで帰れると思うなよ? みたいなアレかな。
「久しぶりなんだ。ゆっくりしていけよ」
授業始まりますけど?
私はハッとした。今頃教室では登校してくる私の悪口で持ち切りだろう、オズワルドはもしかして心配してくれているのでは!?


いい人だ、好き.......。
じんわりと温まる胸を押さえながら私は平静を保つのに必死だった。
「何を気遣っているのか分かりかねますが、私なら大丈夫なので離してくれませんか?」
距離が近いことを指摘すれば、顔を真っ赤にして慌てて話してくれた。慣れないことをしたから恥ずかしくなったのかな。それとも私に触れて気分を害したとか?



「違っ、これは」
「私は全く気にしてないので。それではまた後ほど」


これ以上優しくされるとうっかりボロが出そうなので急いでその場から走り出した。



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