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Ep.4 キリンジが好き過ぎて語りきれませんでした
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えー、サブカル女の鬱陶しい戯言など、現実生活で聞いてくれる奇特な人が周りにおりませんもので(家族はわたしに輪をかけて鬱陶しいですし)、ちらしの裏に書き殴ります。わたしのキリンジ愛を。
キリンジ(2014年からはKIRINJI表記)は元々は堀込高樹と堀込泰行(奉行じゃないですよ)の兄弟二人バンドでしたが、2013年に弟の堀込泰行が脱退。その後、楠均、千ヶ崎学、田村玄一、弓木英梨乃、コトリンゴを加えての再出発となりました。
このキリンジ(KIRINJI)、音楽としてのクオリティが抜群に高くて、国内ではわたしは一番好きなバンドです。ミュージシャンズ・ミュージシャンと言っていいバンドかなと思います。
そもそも掘込兄弟といったらまーそれは音楽マニア。過去の名曲たちをよーく聴いていて、そのマニア振りが楽曲にも反映されているのですが、それでいながら「文脈なんて必要ない。みんな自由にやって面白いものを作ればそれでいいと思います」と言い切っちゃうところもかっこいいです。なぜって、文脈的なことめっちゃ分かってる人が言うから。
2017年をもってコトリンゴさんが脱退してしまいました。わたしは元々コトリンゴも大好きで、キリンジ加入のニュースはめちゃびっくりでしたが、脱退もちょっと寂しかったです。まぁでも、そもそもなぜ加入にびっくりしたかと言えば、コトリンゴって自分のバンドを率いて、あるいはピアノ一本でやっていけるアーティストだから。脱退の理由もバンドとソロ活動の両立が難しいからという理由だったので、致し方ないですね。
KIRINJI加入よりだいぶ前に下北沢のモナレコードのワンマンライブに行きましたが、意外と背が高くてきれいなお姉さんでした。
それでキリンジ(KIRINJI)なのですが、楽曲としてのクオリティの高さには当然歌詞のクオリティの高さも含まれております。前にこのエッセイでも歌詞のことを書きましたが、あの時書いたような基礎的なことは当然踏まえた上で歌詞としてのクオリティがすごい。
キリンジ(KIRINJI)の歌詞って、ときに小説のようであり、映画のようであり、詩のようでもあると言えます。しかもめっぽう美しくロマンティックであったかと思えば、完全に変態だろってときもあり、はたまた時にはエロかったりもします。
キリンジ(KIRINJI)の歌詞はあちこちで見られるようですが、たとえば下記のサイトなんかアルバムごとに確認できるようですので参考に。ただ、文字としてみてもそうピンとこない感じもするんですよね。歌に乗ったときに輝くのはさすがです。
https://www.uta-net.com/user/search_index/artist.html?AID=1288
例を上げてみると、たとえば7-Seven-というアルバムに収録されている「もしもの時は」という曲は、ストーカーに付きまとわれている女性のことを好きな友人(?)の視点で紡がれている歌です。
この曲には「星より密かにGPS」という歌詞が出てきます。これはどうやら橋幸夫と吉永小百合のデュエット曲の「いつでも夢を」からの引用らしいです。意味合いはぜんぜん違うのですが。
興味深いのは、この曲の歌詞の中で一番と二番で二人称が変わるのですよね。一番では「君」、つまり好きな彼女のことかなと思うのですが、二番では「お前」になっているのです。二人の関係性が変わって親密度が上がったのかなと以前は思っていたのですが、描かれているシチュエーションを考察すると、どうも一番と二番の歌詞に登場する二人称は別の人のようです。恐らくですが、二番に出てくるのが彼女のストーカーなのでしょう。
しかし彼女のことを好きで心配しているこの歌の主人公も、よくよく読んでみればなんかストーカーっぽい怖さがあるような気がしてくる。違うのかもしれませんが、なんとなくそういう風にも受け取れるんですよね。だとしたら結構ストーリー的には面白いショートショートか短編のドラマのような感じです。
キリンジ(KIRINJI)の曲ってタイトルもなかなか冴えています。「DODEKAGON 」というアルバム中に「自棄っぱちオプティミスト」というタイトルの曲があるんですが、タイトルだけでストーリーが見えてきませんか。
オプティミストっていうのは楽観主義者のことですが、楽観主義者のくせに自棄っぱちなわけですよ。つまり自棄っぱちで楽観的に見るしかもうないやっていう状況に陥っているのかなって、こんな短いセンテンスだけで表現しちゃってる。
この曲の歌詞の中では「自棄っぱちのオプティミスト」に「強気のペシミスト」と続く箇所があります。ペシミストは悲観主義者のこと。悲観主義のくせに強気。つまり「自棄っぱちオプティミスト」は悲観主義をこじらせて強気にならざるを得ない結果のオプティミストということですよね。二つ合わせるとより強調されますが、その後に「お大事に!」と来るところがまた諧謔性があって面白いなと思うのですが。
こうした表現の技法は、対義結合とか撞着語法(オキシモロン)などと言われますね。複雑な状況を簡潔に言い表すのに効果的な表現方法なので、詩的な表現としてはよく用いられると思いますし、タイトルとしてもキャッチーで効果的な気がしますね。
言語学者のヘレナ・ノーバーグ=ホッジという人が書いた「懐かしい未来」という本のタイトルなんてその典型で見事にキャッチーなタイトルだなと思います。
同じアルバム中に「Love is on line」という曲があります。これはタイトル通り、ウェブ上にロマンスを求めるとある男性の視点で書かれています。
一見独身をこじらせてSNSの向こう側の正体も分からない人に恋をするちょっと危うげな人という偏見の目で見てしまいそうです。でもこの冒頭「キリンは立って寝る 鳥は枝で寝る ヒトだけが眠れない夜は長く」と始まるのですが、あたかも人間だけが眠れぬ夜を過ごすので夜な夜な愛を探し求めてネットを彷徨うのだとでも言いたげで、妙な説得力を持ってロマンティックに響きます。
この曲、流麗で美しいストリングスラインとも相まって本当に美しいんですよね。中でも好きなのが「二人は蜘蛛の糸を渡る夜露さ」っていうフレーズ。もうこれ、めっちゃロマンティックで詩的な表現じゃないですか。
ウェブって元々の意味は蜘蛛の巣のことですよね。蜘蛛の糸のように張り巡らされたネットワークを表すのに言い得て妙な単語。そのウェブ上で夜に育まれるロマンスを指して「二人は蜘蛛の糸を渡る夜露さ」だなんて、美しすぎて鼻血が出そうです。もう、結婚してください!ってなります。
あれ、うわぁ。キリンジについてほとんど語れていないのに文字数が予定を大幅に超えたわ。尻切れトンボはいつものことですが、今日はこれくらいにしておきます。
キリンジ(2014年からはKIRINJI表記)は元々は堀込高樹と堀込泰行(奉行じゃないですよ)の兄弟二人バンドでしたが、2013年に弟の堀込泰行が脱退。その後、楠均、千ヶ崎学、田村玄一、弓木英梨乃、コトリンゴを加えての再出発となりました。
このキリンジ(KIRINJI)、音楽としてのクオリティが抜群に高くて、国内ではわたしは一番好きなバンドです。ミュージシャンズ・ミュージシャンと言っていいバンドかなと思います。
そもそも掘込兄弟といったらまーそれは音楽マニア。過去の名曲たちをよーく聴いていて、そのマニア振りが楽曲にも反映されているのですが、それでいながら「文脈なんて必要ない。みんな自由にやって面白いものを作ればそれでいいと思います」と言い切っちゃうところもかっこいいです。なぜって、文脈的なことめっちゃ分かってる人が言うから。
2017年をもってコトリンゴさんが脱退してしまいました。わたしは元々コトリンゴも大好きで、キリンジ加入のニュースはめちゃびっくりでしたが、脱退もちょっと寂しかったです。まぁでも、そもそもなぜ加入にびっくりしたかと言えば、コトリンゴって自分のバンドを率いて、あるいはピアノ一本でやっていけるアーティストだから。脱退の理由もバンドとソロ活動の両立が難しいからという理由だったので、致し方ないですね。
KIRINJI加入よりだいぶ前に下北沢のモナレコードのワンマンライブに行きましたが、意外と背が高くてきれいなお姉さんでした。
それでキリンジ(KIRINJI)なのですが、楽曲としてのクオリティの高さには当然歌詞のクオリティの高さも含まれております。前にこのエッセイでも歌詞のことを書きましたが、あの時書いたような基礎的なことは当然踏まえた上で歌詞としてのクオリティがすごい。
キリンジ(KIRINJI)の歌詞って、ときに小説のようであり、映画のようであり、詩のようでもあると言えます。しかもめっぽう美しくロマンティックであったかと思えば、完全に変態だろってときもあり、はたまた時にはエロかったりもします。
キリンジ(KIRINJI)の歌詞はあちこちで見られるようですが、たとえば下記のサイトなんかアルバムごとに確認できるようですので参考に。ただ、文字としてみてもそうピンとこない感じもするんですよね。歌に乗ったときに輝くのはさすがです。
https://www.uta-net.com/user/search_index/artist.html?AID=1288
例を上げてみると、たとえば7-Seven-というアルバムに収録されている「もしもの時は」という曲は、ストーカーに付きまとわれている女性のことを好きな友人(?)の視点で紡がれている歌です。
この曲には「星より密かにGPS」という歌詞が出てきます。これはどうやら橋幸夫と吉永小百合のデュエット曲の「いつでも夢を」からの引用らしいです。意味合いはぜんぜん違うのですが。
興味深いのは、この曲の歌詞の中で一番と二番で二人称が変わるのですよね。一番では「君」、つまり好きな彼女のことかなと思うのですが、二番では「お前」になっているのです。二人の関係性が変わって親密度が上がったのかなと以前は思っていたのですが、描かれているシチュエーションを考察すると、どうも一番と二番の歌詞に登場する二人称は別の人のようです。恐らくですが、二番に出てくるのが彼女のストーカーなのでしょう。
しかし彼女のことを好きで心配しているこの歌の主人公も、よくよく読んでみればなんかストーカーっぽい怖さがあるような気がしてくる。違うのかもしれませんが、なんとなくそういう風にも受け取れるんですよね。だとしたら結構ストーリー的には面白いショートショートか短編のドラマのような感じです。
キリンジ(KIRINJI)の曲ってタイトルもなかなか冴えています。「DODEKAGON 」というアルバム中に「自棄っぱちオプティミスト」というタイトルの曲があるんですが、タイトルだけでストーリーが見えてきませんか。
オプティミストっていうのは楽観主義者のことですが、楽観主義者のくせに自棄っぱちなわけですよ。つまり自棄っぱちで楽観的に見るしかもうないやっていう状況に陥っているのかなって、こんな短いセンテンスだけで表現しちゃってる。
この曲の歌詞の中では「自棄っぱちのオプティミスト」に「強気のペシミスト」と続く箇所があります。ペシミストは悲観主義者のこと。悲観主義のくせに強気。つまり「自棄っぱちオプティミスト」は悲観主義をこじらせて強気にならざるを得ない結果のオプティミストということですよね。二つ合わせるとより強調されますが、その後に「お大事に!」と来るところがまた諧謔性があって面白いなと思うのですが。
こうした表現の技法は、対義結合とか撞着語法(オキシモロン)などと言われますね。複雑な状況を簡潔に言い表すのに効果的な表現方法なので、詩的な表現としてはよく用いられると思いますし、タイトルとしてもキャッチーで効果的な気がしますね。
言語学者のヘレナ・ノーバーグ=ホッジという人が書いた「懐かしい未来」という本のタイトルなんてその典型で見事にキャッチーなタイトルだなと思います。
同じアルバム中に「Love is on line」という曲があります。これはタイトル通り、ウェブ上にロマンスを求めるとある男性の視点で書かれています。
一見独身をこじらせてSNSの向こう側の正体も分からない人に恋をするちょっと危うげな人という偏見の目で見てしまいそうです。でもこの冒頭「キリンは立って寝る 鳥は枝で寝る ヒトだけが眠れない夜は長く」と始まるのですが、あたかも人間だけが眠れぬ夜を過ごすので夜な夜な愛を探し求めてネットを彷徨うのだとでも言いたげで、妙な説得力を持ってロマンティックに響きます。
この曲、流麗で美しいストリングスラインとも相まって本当に美しいんですよね。中でも好きなのが「二人は蜘蛛の糸を渡る夜露さ」っていうフレーズ。もうこれ、めっちゃロマンティックで詩的な表現じゃないですか。
ウェブって元々の意味は蜘蛛の巣のことですよね。蜘蛛の糸のように張り巡らされたネットワークを表すのに言い得て妙な単語。そのウェブ上で夜に育まれるロマンスを指して「二人は蜘蛛の糸を渡る夜露さ」だなんて、美しすぎて鼻血が出そうです。もう、結婚してください!ってなります。
あれ、うわぁ。キリンジについてほとんど語れていないのに文字数が予定を大幅に超えたわ。尻切れトンボはいつものことですが、今日はこれくらいにしておきます。
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