【6/5完結】バンドマンと学園クイーンはいつまでもジレジレしてないでさっさとくっつけばいいと思うよ

星加のん

文字の大きさ
15 / 83

15 ジェットコースターみたいに忙しい

しおりを挟む
 帰宅後も羽深さんのことばかりが頭の中でぐるぐるして集中できず、宿題をするのにもいつもの何倍もの時間を要した。

 肩に触れた羽深さんの柔らかい感触が、体温が……。
 頬をくすぐる髪の毛の感触や匂いが……。
 コロコロと変わる表情や鈴を転がしたような声や狸寝入りの呼吸さえもが繰り返し脳裏に蘇って僕の鼓動が激しく打ち叩かれる。

 うわぁーーーーーーっ。
 好きだ好きだ好きだーーーーっ!

 時々発作的に大声で叫びたい衝動に駆られるが同居する家族にも近隣にお住いの皆さんにも絶対聞かせられる類いのものではないので、心の雄叫びが漏れ出さないように悶絶しながら必死で抑え続けているのだが、それもまた結構なストレスになるものだ。

 そんな状態でなかなか進まない宿題もやっとこさ終えて、ゆっくりできる時間を迎えてベッドの上にどかっと仰向けに倒れこんだ。
 ネットで音楽情報サイトなんかを眺めていると、Threadの着信を告げる短いメロディが鳴った。

 スマホの通知は曜ちゃんからであることを告げている。
 それを見てなぜだか僕はちょっとだけ後ろめたい気持ちになる。この気持ちはなんだろうか……。

 トークを開いてみれば、今日学校であったちょっとした出来事など、他愛もない日常会話みたいな内容で僕もそれなりに返信するが、そうして思い返してみると僕の学校生活はひっそりと身を潜めているだけで何も書くことがない。
 精々休み時間にどんな音楽を聴いたかとかその程度のものだ。

 ドラマティックな出来事なんて何にも……いや、あるにはあるか……。
 羽深さんとの放課後の夢みたいな出来事が。

 しかし曜ちゃんに向けて書くことでもないよな。
 なんかそれをやっちゃダメだということは分かる。

 今日の昼までは楽しかったはずのやりとりが、なぜだか今は少し気が重く感じてしまう。
 ジェットコースターみたいに上がったり下がったり忙しい。

 ぼんやりそんなことを思っているとまたThreadに着信通知が来た。
 開いてみれば今度のそれは曜ちゃんじゃなくて羽深さんからだ。

『明日6:50駅集合。忘れないこと♡』

 なにこれ。
 一応取ってつけたみたいに最後にハートマーク付いてるけど、どう見たって業務連絡みたいじゃんね。
 くくく。思わず笑いが溢れる。
 散々僕の気持ちを翻弄した挙句にこれとはね。
 まったくもう。敵わねーや。

 と、続けてまた着信を告げるメロディが鳴る。

『今日は拓実君とぴったりくっついてたから思い出してドキドキ中♡』

 ぬぉーーーーーーっ。
 油断させておいてからの奇襲攻撃!?

『なんちゃって。拓実君も思い出してドキドキしちゃった?笑笑』

 んなっ!?
 んもぉーーーーーーっ。
 弄ぶなよぉーーー。

 やりきれない気持ちで僕はベッドに突っ伏してジタバタした。

『おーい、返事は?』

 追い討ちをかけるように羽深さんからのトークが着信する

 はぁ、もぉ。

『心臓に悪いからそういうのマジでやめてほしいです』

 とお願いしたら、その後の返信はなかった。
 それはそれで不安が煽られる。
 もしかして傷つけちゃっただろうかとか、感じ悪かっただろうかとか、あれこれと考えだすと心配になって落ち込んできた。

 何かフォローを入れた方がいいのか言い訳がましくなって却ってよくないのかしばらく葛藤しているとまた着信音が鳴った。

『タクミくん、今日はなんだか疲れてるっぽいけど大丈夫 ?』
『ゆっくり休むのだョ。☆~*.(UωU*)おやすみぃ...*~☆』

 曜ちゃんだった。
 スマホのやりとりだけでそんなことまで分かっちゃうんだ……。自分としてはいつもと特に違うやりとりになってた気はしなかったんだけど……。

 それにしても誰かさんと違って曜ちゃんのメッセージはほのぼの優しいなぁ。

『ありがとう。おやすみ』

 曜ちゃんに返信してそろそろ寝ることにした。
 心配してもらった通り、今日は疲れてる。あれだけのことがあったからなぁ。

 明かりを消して布団に入るとあっという間に深く眠りに落ちていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

秘密のキス

廣瀬純七
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

処理中です...