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71 手前味噌で何だけど【挿話 ミカの学校にて】
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放課後の教室に各学年、各クラスを代表して文化祭実行委員が集まっている。
文化祭と言えば、ららの学校の文化祭が来週だと聞いている。
幸い私たちの学校の文化祭と被っていないので、向こうの文化祭には遊びに行ける。
何て言ったって、あのららがバンド組んでステージに立つと言う。しかも、あの美少女ららがそのバンドメンバーのひとりに何と片想いしてると言うんだから、これは観に行かずしてどうするのよ。
着席してひとりそんなことを考えていたら、続々と教室に実行委員の各面々が集まってきて座席が埋まっていく。
私の隣の席に座った子はなかなかの美少女だ。どこのクラスかはっきり分かんないけど、同学年で確かバンドをやってると聞いたことがある。
この子も文化祭のステージに立ったりするんだろうか。ららみたいに。
ららで免疫はある方だけど、この子もどうしてなかなか。眼福眼福。なんて私の中のおっさんモードがついつい起動してしまうくらいにかわいいじゃん。
「お疲れ~。ここの席空いてるの?」
「空いてるよ。お疲れ、ゴンちゃん」
ゴンちゃんと呼ばれた優しそうなイケメン生徒は隣の美少女に声をかけると、そのまた向こう隣の席に着いた。
うわぁ、これはまた眼福。お似合いの二人なんじゃないの。
「ジンピカも実行委員なんだ?」
「うん。ゴンちゃんもなんだね」
とかなんかごく自然に会話をやりとりしてるんだけど、ちょっと待った……。
今ジンピカって言ったよね? ジンピカ、ジンピカ……。どっかで覚えがある……ってあっ、ウソ!?
それって、ららの恋敵っ!! なかなかどうして、こりゃ確かに強敵だわ。
ははぁ、それでららもバンドやろうなんて言い出したわけかぁ。
「今度のライブも、拓実君たち受けてくれるといいねぇ」
「え? あ、うん」
出た出た、拓実君ってららの絶賛片想い中の例の彼のことよね、きっと。
ライブって文化祭のことかなぁ? いや、文化祭のステージに他校の生徒は立たないか。
ふーん、どれどれ。折角だからお近づきになっておきましょうかね、っと。
「あの、わたし一組の東堂ミカだけど、よろしくね」
「あ、わたし四組の神曜。みんなからジンピカって呼ばれてる。東堂さん、よろしくね」
「あ、俺三組の権藤。よろしくね」
ジンピカちゃん、透明感があって声までかわいいっ。
「あ、こちらこそよろしくぅ。よかったら私のことはミカって呼んで。四組はクラスの出し物何やるの?」
「うちはありがちだけどお化け屋敷だって。そっちは?」
「うちは駄菓子屋さんやるんだ。単価安いから集客頑張んないと。三組は?」
一応イケメンの権藤君にも話を振っておく。
「あー、うちは執事喫茶」
「マジで? メイドじゃなくて執事喫茶なんだ!?」
珍しいなぁ、とか思ったけど、権藤君の執事姿を想像するとありだなと思えた。よし、絶対行ってみよっと。
「ゴンちゃん執事するの? 結構似合いそうだね」
「あ、絶対嫌だったんだけどね。強硬に決められてしまった……」
「「でしょーねー」」
権藤君のクラスの女子が爆上げテンションで執事カフェを推してる様子を容易にに想像できてしまって、ジンピカちゃんとわたしは期せずしてユニゾンしていた。
「わたしは珍動物園推しだったんだけどなぁ。反対されることすらなく完全スルーされて実現しなかったんだぁ」
ふと、ジンピカちゃんが遥か遠くの何かを見ているかのような視線で呟いた。
「動物園かぁ。流石にそれは難しくないかなぁ」
「うーん、確かにね。でもやりたかったなぁ……。因みに珍動物園ね。ただの動物園じゃなくて珍動物園」
“珍”をことさらに強調してきた。何それ美味しいの? 意味分かんないんだけど。
「あ、ねぇねぇ、ミカちゃん知ってる? ハイエナのうんこって白いんだよ」
「は……?」
「あとねぇ、あとねぇ。うさぎって自分のうんこを肛門から直で食べちゃうんだってぇ。わたしそれ知った時、究極の永久機関のヒントがそこにあるんじゃないかと思って興奮しちゃったよぉ!」
ん? あれ……? 何だろこの既視感……。知ってるぞ。知ってるぞわたしこの感じ……。
奥の権藤君を見やれば、やれやれ始まったかみたいな顔をして、残念そうにわたしと目を合わせた。
わたしは確信した。
間違いない。ジンピカちゃん、あなたららと同類なのね……。
これ始まったら突っ走っちゃうやつだわ。こういう時は早い段階で話変えないと。
「ねぇねぇ、さっきライブの話してたけど、二人は一緒のバンドやってるの?」
「うん、ザ・タイムっていうバンドでゴンちゃんはキーボードなの」
「へぇー、そうなんだぁー。男子のキーボードってなんかカッコいいね。ジンピカちゃんは何のパートなの?」
「へへ、恥ずかしいけど歌ってるの」
ちょっとはにかみながらそう言うジンピカちゃんもまたかわいらしい。どこを切り取ってもかわいいとは、かなりのかわいい度だわこれ。ま、さっき残念美女なところ見ちゃったんだけど。
「そうなんだぁ~、へぇ~、聴いてみたいなぁ。ひょっとして文化祭出たりするのかな?」
「文化祭は出ないんだけど、今度サルタチオっていうライブハウスでやるんだ。よかったらミカちゃんも来てくれたら嬉しい。ね、ゴンちゃん」
「あぁ、是非是非。手前味噌で何だけど、うちのバンド割と人気なもんだから、生徒会から文化祭のライブ出演は遠慮するように釘刺されちゃったんだ」
「え、凄いんだ……でも何で人気あったら文化祭ダメなの? むしろいいような気がするけど」
「いや、うちのバンド目当ての一般客が大勢押しかけてくるとキャパとか風紀とか色々問題あるみたいで」
ゴンちゃんこと権藤君が説明してくれた。
「へぇー、何か本当に凄いんだねぇ」
「えへへ、でもそんな訳でサルタチオで鬱憤を晴らしちゃおうってことになったんだ」
ジンピカちゃんがかわいらしくそう言う。
「わー、行きたい行きたいっ」
「ふふふ、観客一名ゲットやったー。じゃ、チケット準備するからThread交換してもらってもいいかな?」
「オッケー」
こんな感じでジンピカちゃんと渡りをつけたところで文化祭実行委員長が入ってきてミーティングが始まった。
ジンピカちゃん、普通にいい子だった。ま、心情としてはわたしはららのサポーターだけど、ジンピカちゃんもいい子だから憎めないなぁ。
てか、噂のジンピカちゃんが、まさかうちの学校の生徒だったとはびっくりだわ。しかもららと同類の残念美少女だったとは。
らら、がんばれーっ!
文化祭と言えば、ららの学校の文化祭が来週だと聞いている。
幸い私たちの学校の文化祭と被っていないので、向こうの文化祭には遊びに行ける。
何て言ったって、あのららがバンド組んでステージに立つと言う。しかも、あの美少女ららがそのバンドメンバーのひとりに何と片想いしてると言うんだから、これは観に行かずしてどうするのよ。
着席してひとりそんなことを考えていたら、続々と教室に実行委員の各面々が集まってきて座席が埋まっていく。
私の隣の席に座った子はなかなかの美少女だ。どこのクラスかはっきり分かんないけど、同学年で確かバンドをやってると聞いたことがある。
この子も文化祭のステージに立ったりするんだろうか。ららみたいに。
ららで免疫はある方だけど、この子もどうしてなかなか。眼福眼福。なんて私の中のおっさんモードがついつい起動してしまうくらいにかわいいじゃん。
「お疲れ~。ここの席空いてるの?」
「空いてるよ。お疲れ、ゴンちゃん」
ゴンちゃんと呼ばれた優しそうなイケメン生徒は隣の美少女に声をかけると、そのまた向こう隣の席に着いた。
うわぁ、これはまた眼福。お似合いの二人なんじゃないの。
「ジンピカも実行委員なんだ?」
「うん。ゴンちゃんもなんだね」
とかなんかごく自然に会話をやりとりしてるんだけど、ちょっと待った……。
今ジンピカって言ったよね? ジンピカ、ジンピカ……。どっかで覚えがある……ってあっ、ウソ!?
それって、ららの恋敵っ!! なかなかどうして、こりゃ確かに強敵だわ。
ははぁ、それでららもバンドやろうなんて言い出したわけかぁ。
「今度のライブも、拓実君たち受けてくれるといいねぇ」
「え? あ、うん」
出た出た、拓実君ってららの絶賛片想い中の例の彼のことよね、きっと。
ライブって文化祭のことかなぁ? いや、文化祭のステージに他校の生徒は立たないか。
ふーん、どれどれ。折角だからお近づきになっておきましょうかね、っと。
「あの、わたし一組の東堂ミカだけど、よろしくね」
「あ、わたし四組の神曜。みんなからジンピカって呼ばれてる。東堂さん、よろしくね」
「あ、俺三組の権藤。よろしくね」
ジンピカちゃん、透明感があって声までかわいいっ。
「あ、こちらこそよろしくぅ。よかったら私のことはミカって呼んで。四組はクラスの出し物何やるの?」
「うちはありがちだけどお化け屋敷だって。そっちは?」
「うちは駄菓子屋さんやるんだ。単価安いから集客頑張んないと。三組は?」
一応イケメンの権藤君にも話を振っておく。
「あー、うちは執事喫茶」
「マジで? メイドじゃなくて執事喫茶なんだ!?」
珍しいなぁ、とか思ったけど、権藤君の執事姿を想像するとありだなと思えた。よし、絶対行ってみよっと。
「ゴンちゃん執事するの? 結構似合いそうだね」
「あ、絶対嫌だったんだけどね。強硬に決められてしまった……」
「「でしょーねー」」
権藤君のクラスの女子が爆上げテンションで執事カフェを推してる様子を容易にに想像できてしまって、ジンピカちゃんとわたしは期せずしてユニゾンしていた。
「わたしは珍動物園推しだったんだけどなぁ。反対されることすらなく完全スルーされて実現しなかったんだぁ」
ふと、ジンピカちゃんが遥か遠くの何かを見ているかのような視線で呟いた。
「動物園かぁ。流石にそれは難しくないかなぁ」
「うーん、確かにね。でもやりたかったなぁ……。因みに珍動物園ね。ただの動物園じゃなくて珍動物園」
“珍”をことさらに強調してきた。何それ美味しいの? 意味分かんないんだけど。
「あ、ねぇねぇ、ミカちゃん知ってる? ハイエナのうんこって白いんだよ」
「は……?」
「あとねぇ、あとねぇ。うさぎって自分のうんこを肛門から直で食べちゃうんだってぇ。わたしそれ知った時、究極の永久機関のヒントがそこにあるんじゃないかと思って興奮しちゃったよぉ!」
ん? あれ……? 何だろこの既視感……。知ってるぞ。知ってるぞわたしこの感じ……。
奥の権藤君を見やれば、やれやれ始まったかみたいな顔をして、残念そうにわたしと目を合わせた。
わたしは確信した。
間違いない。ジンピカちゃん、あなたららと同類なのね……。
これ始まったら突っ走っちゃうやつだわ。こういう時は早い段階で話変えないと。
「ねぇねぇ、さっきライブの話してたけど、二人は一緒のバンドやってるの?」
「うん、ザ・タイムっていうバンドでゴンちゃんはキーボードなの」
「へぇー、そうなんだぁー。男子のキーボードってなんかカッコいいね。ジンピカちゃんは何のパートなの?」
「へへ、恥ずかしいけど歌ってるの」
ちょっとはにかみながらそう言うジンピカちゃんもまたかわいらしい。どこを切り取ってもかわいいとは、かなりのかわいい度だわこれ。ま、さっき残念美女なところ見ちゃったんだけど。
「そうなんだぁ~、へぇ~、聴いてみたいなぁ。ひょっとして文化祭出たりするのかな?」
「文化祭は出ないんだけど、今度サルタチオっていうライブハウスでやるんだ。よかったらミカちゃんも来てくれたら嬉しい。ね、ゴンちゃん」
「あぁ、是非是非。手前味噌で何だけど、うちのバンド割と人気なもんだから、生徒会から文化祭のライブ出演は遠慮するように釘刺されちゃったんだ」
「え、凄いんだ……でも何で人気あったら文化祭ダメなの? むしろいいような気がするけど」
「いや、うちのバンド目当ての一般客が大勢押しかけてくるとキャパとか風紀とか色々問題あるみたいで」
ゴンちゃんこと権藤君が説明してくれた。
「へぇー、何か本当に凄いんだねぇ」
「えへへ、でもそんな訳でサルタチオで鬱憤を晴らしちゃおうってことになったんだ」
ジンピカちゃんがかわいらしくそう言う。
「わー、行きたい行きたいっ」
「ふふふ、観客一名ゲットやったー。じゃ、チケット準備するからThread交換してもらってもいいかな?」
「オッケー」
こんな感じでジンピカちゃんと渡りをつけたところで文化祭実行委員長が入ってきてミーティングが始まった。
ジンピカちゃん、普通にいい子だった。ま、心情としてはわたしはららのサポーターだけど、ジンピカちゃんもいい子だから憎めないなぁ。
てか、噂のジンピカちゃんが、まさかうちの学校の生徒だったとはびっくりだわ。しかもららと同類の残念美少女だったとは。
らら、がんばれーっ!
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