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Ⅱ.不穏な作戦
クラスのボッチが恋愛する話。7
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「おい啓、昨日のアレ、見たかよ?」
「ああ直哉、あの女子共の顔……ホント、傑作だったよ!」
「だよな、ぎゃははは!」
朝の会が始まる前の六年二組の教室に、下品な笑いが飛び散る。
たったそれだけの会話で、彼等が女子に何か良からぬ事をしたというのは察せられる。そしてそれを、すぐ近くに居る凛子が見逃すわけがない。
そう思った志貴は、覚悟だけは決めておく。この後にあるであろう、怒号の嵐に。
しかし──
「貴方達、もうちょっと静かにしなさい。周りに迷惑でしょう」
今日の凛子は妙に落ち着いていた。
普段ならば「ちょっとあんた達、ふざけないでよ!」くらい言ってもいい気がするが、今回は軽く注意するだけに留まっている。
「──?」
瞬間、視線を感じた。ねっとりとこちらを伺うような、気色の悪い視線を。
とはいえそれも一瞬で消えたので、気にする事でもないだろうと考えた志貴は、改めて凛子達の方に視線を向ける。
そこでは、先の一言に反応した直哉と啓が、凛子と言い争っている姿がある。しかしその光景には、いつもと違う点が一つだけ存在していた。
「てめぇ、マジ何様のつもりだよ?」
「ちょっと家が金持ちだからって、調子乗ってんじゃねぇの?」
「ふん、僻むのも大概にしなさい。貴方達こそ、その下品な口を改めたらどうかしら」
──あ、これいつもの櫻井だ。
三人の口喧嘩を見た志貴は、そんな事を考えていた。一見すれば落ち着いているようにも見えるが、その実ではいつも通り怒っている。何故、彼女が冷静を装っているかは不明だが、それでも内心には変わりはなさそうだ。
「ちょっと、凛子ちゃん……」
ふと、凛子の背後に現れた真美が、彼女に耳打ちをした。何を喋ったのかは分からないが、それを聴いた凛子は思い出したような表情をすると、
「まあ、今日はこのくらいで許してあげるわ。せいぜい足を掬われない事ね」
ぐぬぬぬ……。という男子達の悔しそうな声と、キャーッという女子達の歓声が混じり合った混沌とした空気が教室内に出来上がっていた。
そんな中、空気に呑まれる事なく冷静に場を見ていた志貴は、驚愕を禁じ得なかった。
──あの櫻井 凛子が男子を見逃した。その事実に、彼は心底驚いていた。今までの凛子ならば、あのまま朝の会すらも始めさせないで口喧嘩をしていてもおかしくはなかった。それが、ああして自分から退いたのだ。ハッキリ言って、異様とも取れる光景だった。
そしてそれをさせたのは、間違いなく真美だ。彼女が凛子に何かを囁いたかと思えば、直後に凛子は退がっていったのだから。しかし、いくら親友とはいえあの頑固な彼女を動かさせるとは、いったいどんな事を囁いたというのか。少し気になった志貴だったが、すぐに関係ない事だと思い直す。
「──うふふ。これでやっと、貴方は私のものになる……」
小さく呟かれた彼女のその言葉が、誰かの耳の入る事は無かった。
「ああ直哉、あの女子共の顔……ホント、傑作だったよ!」
「だよな、ぎゃははは!」
朝の会が始まる前の六年二組の教室に、下品な笑いが飛び散る。
たったそれだけの会話で、彼等が女子に何か良からぬ事をしたというのは察せられる。そしてそれを、すぐ近くに居る凛子が見逃すわけがない。
そう思った志貴は、覚悟だけは決めておく。この後にあるであろう、怒号の嵐に。
しかし──
「貴方達、もうちょっと静かにしなさい。周りに迷惑でしょう」
今日の凛子は妙に落ち着いていた。
普段ならば「ちょっとあんた達、ふざけないでよ!」くらい言ってもいい気がするが、今回は軽く注意するだけに留まっている。
「──?」
瞬間、視線を感じた。ねっとりとこちらを伺うような、気色の悪い視線を。
とはいえそれも一瞬で消えたので、気にする事でもないだろうと考えた志貴は、改めて凛子達の方に視線を向ける。
そこでは、先の一言に反応した直哉と啓が、凛子と言い争っている姿がある。しかしその光景には、いつもと違う点が一つだけ存在していた。
「てめぇ、マジ何様のつもりだよ?」
「ちょっと家が金持ちだからって、調子乗ってんじゃねぇの?」
「ふん、僻むのも大概にしなさい。貴方達こそ、その下品な口を改めたらどうかしら」
──あ、これいつもの櫻井だ。
三人の口喧嘩を見た志貴は、そんな事を考えていた。一見すれば落ち着いているようにも見えるが、その実ではいつも通り怒っている。何故、彼女が冷静を装っているかは不明だが、それでも内心には変わりはなさそうだ。
「ちょっと、凛子ちゃん……」
ふと、凛子の背後に現れた真美が、彼女に耳打ちをした。何を喋ったのかは分からないが、それを聴いた凛子は思い出したような表情をすると、
「まあ、今日はこのくらいで許してあげるわ。せいぜい足を掬われない事ね」
ぐぬぬぬ……。という男子達の悔しそうな声と、キャーッという女子達の歓声が混じり合った混沌とした空気が教室内に出来上がっていた。
そんな中、空気に呑まれる事なく冷静に場を見ていた志貴は、驚愕を禁じ得なかった。
──あの櫻井 凛子が男子を見逃した。その事実に、彼は心底驚いていた。今までの凛子ならば、あのまま朝の会すらも始めさせないで口喧嘩をしていてもおかしくはなかった。それが、ああして自分から退いたのだ。ハッキリ言って、異様とも取れる光景だった。
そしてそれをさせたのは、間違いなく真美だ。彼女が凛子に何かを囁いたかと思えば、直後に凛子は退がっていったのだから。しかし、いくら親友とはいえあの頑固な彼女を動かさせるとは、いったいどんな事を囁いたというのか。少し気になった志貴だったが、すぐに関係ない事だと思い直す。
「──うふふ。これでやっと、貴方は私のものになる……」
小さく呟かれた彼女のその言葉が、誰かの耳の入る事は無かった。
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