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Ⅱ.不穏な作戦
クラスのボッチが恋愛する話。8
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「えへへお兄ちゃん、じゃじゃーんっ」
凛子の不可解な行動の続いたその日の放課後。
美咲を伴って下校しようとした志貴の目に、ある物が映り込む。
彼女が見せびらかすようにして持っているそれは、手紙のように見える。ハート形のシールで封のなされたそれは、ぱっと見では例のアレに見えて──。
「ち、ちょっと待ってくれ美咲。それ、どこで貰ったんだ?」
「えっとね、登校した時に下駄箱に入ってたんだー」
「なん……だと……」
それではまるで、ラブレターではないか……っ!
そんな驚愕をしつつも、彼は質問をしていく。
「……中には、なんて書いてあったんだ?」
「えっとねー、『放課後、校舎裏で待っています』って書いてあったよ」
「……美咲、それがどんな手紙か分かってるのか?」
「うん。ラブレターでしょ? 正直、なんで私なのとは思うけどね」
「そ、それで、美咲はなんて答えるんだ……?」
「? そんなの決まってるよ。お断り、だよ」
「そ、そうか……」
「だって私には、お兄ちゃんがいるからね。お兄ちゃんとの約束がある限り、私が誰かに靡くなんて、ありえないよ」
「……っ~~。あーもう、美咲は可愛いなぁ」
「うひゃぁ⁉︎ お、お兄ちゃん、撫でてくれるのは嬉しいけど、いきなり撫でられるとビックリしちゃうよ」
「それもこれも全部、美咲が可愛いのがいけないんだぞー」
普段の無表情ぶりからは考えられないほどに緩みきった表情をする志貴は、そのままわしゃわしゃと美咲の頭を撫でていく。
「よし。そんじゃ美咲、その無謀な男に現実を教えてやれ」
満足したらしい志貴は、美咲を解放すると、そう言った。
「えへへ、待っててね」
そう言って校舎裏へと向かっていった美咲を見送った志貴は、ふぅ……。と一つ溜息を吐く。
「ラブレター、か。そっか、そういう事もあり得るんだよな……」
突如として不安感に襲われた志貴は、そんな事を呟く。
今後も、ああして美咲に告白してくる男はいるかもしれない。兄妹云々での贔屓目を抜きにしても、美咲は相当可愛い方だ。今でこそ、ああして保健室登校をしているために美咲の美貌が知れ渡るような事はないが、今後彼女が健康になっていけば、必然人の目に触れる事になる。そうなれば、今回のように告白する者は後を絶たないだろう。
それが志貴としては、複雑な思いだった。兄として、妹が認められるのは嬉しい。けれど反面、男として彼女を独占したい気持ちもある。
それに万が一、億が一、美咲がOKをしてしまったら──そう考えるだけで、彼は途轍もない嘔吐感に襲われる。美咲が、他の男と二人っきり? それだけで、身を裂かれそうになるというのに。
彼は小学生なのだ。独占欲くらい、普通に持ち合わせている。多少行き過ぎな気もするが、それも愛故なのだろう。
「うふふ。伊零 志貴さんですよね?」
ふと、背後から声がした。
何かと思って振り返ると、そこには一人の少女が立っていた。
緩くウェーブのかかった茶髪を三つ編みにした、柔らかな空気を纏った少女だ。普段ならば癒しオーラなのだろうが、何故だか今の志貴にはそれが、汚水のように穢らわしいものに感じてならなかった。
「私、同じクラスの園町 真美です。少し、付き合ってもらえませんか?」
女子連盟の実質的なNo.2の彼女がいったい、自分に何の用があるというのか。全く目的の分からない彼は、なんとか探ろうとするが、
「そんなに警戒しないでください。中立を保つ貴方と、少しお話しがしてみたいなと思っただけですから」
「ちなみに、拒否権は?」
「あると思いますか?」
「……まあ、そんな事だろうとは思ったけどさ」
ここで志貴が断れば、明日から女子達は全力で志貴を潰しにかかるだろう。例えば、教師に『覗かれたー』という告げ口を何回も行ったとしたら……。それだけで、彼の今後が暗闇に閉ざされるのは間違いないだろう。
「はぁ……分かったよ。だが、俺も早く帰りたいし、あんまり長話はしないからな」
「ええ。お時間はそう取らせませんよ。──では、付いてきて下さい」
そう言って生徒玄関から移動していく真美の後ろを、彼は追いかけていく。ほんの少しの、不安と共に。
凛子の不可解な行動の続いたその日の放課後。
美咲を伴って下校しようとした志貴の目に、ある物が映り込む。
彼女が見せびらかすようにして持っているそれは、手紙のように見える。ハート形のシールで封のなされたそれは、ぱっと見では例のアレに見えて──。
「ち、ちょっと待ってくれ美咲。それ、どこで貰ったんだ?」
「えっとね、登校した時に下駄箱に入ってたんだー」
「なん……だと……」
それではまるで、ラブレターではないか……っ!
そんな驚愕をしつつも、彼は質問をしていく。
「……中には、なんて書いてあったんだ?」
「えっとねー、『放課後、校舎裏で待っています』って書いてあったよ」
「……美咲、それがどんな手紙か分かってるのか?」
「うん。ラブレターでしょ? 正直、なんで私なのとは思うけどね」
「そ、それで、美咲はなんて答えるんだ……?」
「? そんなの決まってるよ。お断り、だよ」
「そ、そうか……」
「だって私には、お兄ちゃんがいるからね。お兄ちゃんとの約束がある限り、私が誰かに靡くなんて、ありえないよ」
「……っ~~。あーもう、美咲は可愛いなぁ」
「うひゃぁ⁉︎ お、お兄ちゃん、撫でてくれるのは嬉しいけど、いきなり撫でられるとビックリしちゃうよ」
「それもこれも全部、美咲が可愛いのがいけないんだぞー」
普段の無表情ぶりからは考えられないほどに緩みきった表情をする志貴は、そのままわしゃわしゃと美咲の頭を撫でていく。
「よし。そんじゃ美咲、その無謀な男に現実を教えてやれ」
満足したらしい志貴は、美咲を解放すると、そう言った。
「えへへ、待っててね」
そう言って校舎裏へと向かっていった美咲を見送った志貴は、ふぅ……。と一つ溜息を吐く。
「ラブレター、か。そっか、そういう事もあり得るんだよな……」
突如として不安感に襲われた志貴は、そんな事を呟く。
今後も、ああして美咲に告白してくる男はいるかもしれない。兄妹云々での贔屓目を抜きにしても、美咲は相当可愛い方だ。今でこそ、ああして保健室登校をしているために美咲の美貌が知れ渡るような事はないが、今後彼女が健康になっていけば、必然人の目に触れる事になる。そうなれば、今回のように告白する者は後を絶たないだろう。
それが志貴としては、複雑な思いだった。兄として、妹が認められるのは嬉しい。けれど反面、男として彼女を独占したい気持ちもある。
それに万が一、億が一、美咲がOKをしてしまったら──そう考えるだけで、彼は途轍もない嘔吐感に襲われる。美咲が、他の男と二人っきり? それだけで、身を裂かれそうになるというのに。
彼は小学生なのだ。独占欲くらい、普通に持ち合わせている。多少行き過ぎな気もするが、それも愛故なのだろう。
「うふふ。伊零 志貴さんですよね?」
ふと、背後から声がした。
何かと思って振り返ると、そこには一人の少女が立っていた。
緩くウェーブのかかった茶髪を三つ編みにした、柔らかな空気を纏った少女だ。普段ならば癒しオーラなのだろうが、何故だか今の志貴にはそれが、汚水のように穢らわしいものに感じてならなかった。
「私、同じクラスの園町 真美です。少し、付き合ってもらえませんか?」
女子連盟の実質的なNo.2の彼女がいったい、自分に何の用があるというのか。全く目的の分からない彼は、なんとか探ろうとするが、
「そんなに警戒しないでください。中立を保つ貴方と、少しお話しがしてみたいなと思っただけですから」
「ちなみに、拒否権は?」
「あると思いますか?」
「……まあ、そんな事だろうとは思ったけどさ」
ここで志貴が断れば、明日から女子達は全力で志貴を潰しにかかるだろう。例えば、教師に『覗かれたー』という告げ口を何回も行ったとしたら……。それだけで、彼の今後が暗闇に閉ざされるのは間違いないだろう。
「はぁ……分かったよ。だが、俺も早く帰りたいし、あんまり長話はしないからな」
「ええ。お時間はそう取らせませんよ。──では、付いてきて下さい」
そう言って生徒玄関から移動していく真美の後ろを、彼は追いかけていく。ほんの少しの、不安と共に。
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