クラスのボッチが恋愛をする話。

Mono

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Ⅱ.不穏な作戦

クラスのボッチが恋愛する話。11

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「はぁー……疲れた……」

 あれから、意識を失った美咲をおんぶしながら帰路に着いた志貴は、彼女をベッドに寝かしつけると、リビングのソファにボフッと倒れ込んでしまった。

「今日は色々ありすぎたな……」

 彼としては、真美の作戦の波状攻撃が辛すぎた。三回も攻撃されると、正直キツい。というか、一番酷かったのが真美の誤解を解く事だった。

 どんなに志貴が「いや、脈なんて無いから」と言っても、真美は聞く耳を持たなかったのだ。あれを引き剥がすのが、一番めんどくさかった気がする。

 なんとか離してもらってこうして家へと帰ってきたわけだが、明日からが憂鬱になる。それに何より、

「俺が女子連盟のスパイ、か──」

 結局、真美の作戦にまんまと引っかかって承諾してしまったのだが、いったい何をされるのか分かったものではない。やはり、警戒するに越した事はないだろう。──と、志貴はそこまで思考すると

「──まあ、その前に美咲の様子を見にいくか。起きてたら、一応話も聞いておかくちゃしけないしな」

 ソファから立ち上がった志貴は、そのまま二階にある自分の部屋──の正面にある美咲の部屋の前へと辿り着く。ガチャリと音を立てて彼が部屋に入ると

「……ぁ……お兄ちゃん……」

 明らかに憔悴した様子の美咲がいた。

 そんな美咲を心配した志貴は、彼女の寝ているベッドまで近づいて座った。

「……ここって、私の部屋、だよね……?」

 上半身だけ起こした美咲は、掠れるような声で訊いてきた。

 かつてここまで弱りきった美咲を見たのは、二年前に彼女の両親が死去した時以来だ。

「ああ。……美咲、あの時何があったか、覚えてるか?」

 そう、志貴が問い掛けると美咲は弱々しく喋り始めた。

「……あの時、私校舎裏にまで行って……でも誰もいなくて、どうしたんだろう? って思ってたら、急に大きな男の人が現れて、それで……」

 ──大きな男の人、というのは例の男子高校生の事を言っているのだろう。確かに、小学四年生の女子からしてみれば大きな人でも間違いはないかもしれない。

「…………それで、いきなり、私の服を引っ張って……抵抗したけど、そうしたら殴られて、私、私……っ!」

「──もういい! もういいよ。ごめんな、無理に聞こうとしちゃって。大丈夫、大丈夫だ。美咲には、俺が付いているから」

 全身をガクガクと震わせる美咲を見た志貴は、心底で後悔する。何故、わざわざ彼女のトラウマを抉りにいくような事をしてしまったのか、と。

 そして、どこか焦点の合っていない目を伴って、蒼白になった彼女の顔面を見た志貴は、それ以上聞きたくないと言わんばかりの怒声を発し、謝罪と共に妹を全力で抱きしめた。

「…………うん。大丈夫だよ、私にはお兄ちゃんがいるから。男の人は怖いけど、お兄ちゃんの事は大好きだもん。だから、私にはお兄ちゃんだけがいればそれでいいの」

 狂気的にすら思えてくるその言葉を受けて、なおも志貴は彼女の後頭部に手を回してゆっくりと動かしながら喉を震わせる。

「ああ。俺も、美咲の事が大好きだ。これから暫く忙しくなるかもしれないけど、それでも絶対に美咲の事を見放したりしないから。俺は、例え何があろうとも美咲を守ってみせる」

「うん……ありがとう、お兄ちゃん……っ」

 彼の胸の中で泣きじゃくる美咲を、志貴はただひたすらに撫で続ける。右手で背中を、左手で頭を。この先、一生の誓いを込めて──。
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